玉川大学出版部の本(全集・シリーズ)


高山岩男著作集 全6巻

 
高山岩男著
A5判上製函入、口絵一丁、平均740ページ

発行年 2007年〜
ジャンル 哲学・思想
顧問 辻村公一(京都大学名誉教授) 斎藤義一(大阪大学名誉教授)
源了圓(東北大学名誉教授) 小原芳明(玉川大学学長)
編集委員 大橋良介(龍谷大学教授) 花澤秀文(東岡山工業高等学校教諭)
福井一光(鎌倉女子大学学長) 藤田正勝(京都大学教授)
森哲郎(京都産業大学教授)

推薦のことば

本著作集の特色
・ 高山岩男の主要著作、重要論文を網羅。
・ 原文に忠実な最新の版をもとに新字・新仮名づかいを採用、必要に応じてルビを付した。
・ 各巻の著作の核心に迫る気鋭の研究者による解題付き。
・ 詳細な年譜、著作目録を収載。

西田幾多郎・田辺元門下の最大の体系的哲学者として精力的な活動を展開した高山岩男。文化・歴史・社会・政治・教育・宗教・世界観など多分野にわたる著作を残し、近代からの転換、グローバル化と文明の衝突の予見など、独創的にして雄大な世界観を構築した鬼才高山岩男の思索のエッセンスを集成。各巻に収録著作の解題付き。


第一巻 西田哲学
16,800円 ISBN978-4-472-01485-7 C3310[2007]
西田哲学/続西田哲学/西田先生と哲学的概念/他


第二巻 哲学的人間学 ヘーゲル
17,850円 ISBN978-4-472-01486-4 C3310[2007]
哲学的人間学/ヘーゲル/弁証法入門/弁証法の歴史/他


第三巻 文化類型学
17,325円 ISBN978-4-472-01487-1 C3310[2008]
文化類型学/文化類型学研究/世界観の問題/他


第四巻 世界史の哲学
17,850円 ISBN978-4-472-01488-8 C3310[2008]
世界史の哲学/世界史の動学/文化国家の理念/他


第五巻 理性・精神・実存
続刊 ISBN978-4-472-01489-5 C3310


第六巻 場所的論理と呼応の原理 教育哲学
    年譜 著作目録
続刊 ISBN978-4-472-01490-1 C3310


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“推薦のことば”

世界的普遍性と日本的個性
  中曽根 康弘 元内閣総理大臣
一九六〇年のいわゆる安保騒動が終結した後、私は次の日本の政治体系を構築するため、当時、新進の政治学者に教えを請うた。かなりの学者の中で、私の思索の中心軸になったのは、矢部貞治先生の後、高山岩男先生であり、政治の実践に当たって助言をいただいたのは佐藤誠三郎先生であった。西田哲学を経て、世界史の中における日本、固有の歴史観と人間学や文化類型学に豊かに基礎づけられた先生の政治哲学とその実践論は、世界的普遍性と日本的個性を軸として、現実政治家にも魅力的であった。現在の日本の思想界を見ると、混沌として、政治家が政治の背骨として活用すべき思想家はあまり見当たらない。高山先生の歴史観と政治哲学と宗教性は、現代政治家に与えるものが多い。現代の錯乱の世に、思想や哲学の再建なくして日本の復興はありえない。高山世界観や哲学と政治学は、政治家必読の書であると思う。


広い視野と壮大な構想
  市倉宏祐 専修大学名誉教授/元日本倫理学会会長
私が初めて高山岩男先生の書物に接したのは、もう七十年近くも前に京都の高等学校の学生であったときのことであります。十分に理解しえたとは思いませんが、さまざまに感動しながら何冊か読んだことを憶えております。
当時の京都には、優れた若い哲学者や歴史家たちがおおく輩出して、いつしか京都学派と呼ばれるようになってゆきましたが、おおむね先生がたはヨーロッパ近代の思想、あるいは西欧中心の世界史観になにがしか批判的な立場を取っているような気がいたしました。
もともと、思想の意味は戦争の勝敗などとは別の次元のことですが、我が国では敗戦とともに戦前の思想をすべて無視するような風潮が長く続きました。漸くこうした短絡的な傾向が克服されてきたのでしょうか、こんどこの学派の中でも中核的な存在であった高山先生の著作集が刊行されることになったことは何ともうれしい気がいたします。
若いころの気持ちにかえって、もういちど広い視野と壮大な構想を持った先生の『文化類型学』や『世界史の哲学』といった著作をゆっくり読んでみたい気がしております。


眼を開かせられた宗教哲学論
  峰島旭雄 早稲田大学名誉教授/元比較思想学会会長
敗戦直後、いわゆる評論家の言辞は西田哲学に対してきびしかった。そのためとりわけ高山岩男・高坂正顕・西谷啓治の三氏への評価ももっぱら戦争協力という線でなされ、この方々の哲学そのものの評価はそっちのけであった。この事態は甚だ残念なことであった。いま、切に思うのは、遅ればせながらこの三先生の真価を顕彰してもらいたいということである。私はカント、そしてヘーゲルにぶつかっていったが、カントはある視点を得たと思っていたが、ヘーゲルには読むたびに突きはなされた。その苦悶の中で当時弘文堂から出ていた高山先生の『ヘーゲル』に出会って、漸くヘーゲル理解の第一歩をかち得た。また『場所的論理と呼応の原理』は専攻の宗教哲学の論に眼を開かせていただいた。故中村元博士の創設した比較思想学会での真摯な発表は、ここのところ「トポスの論理」が主題となっている。私は、とりわけこの学会の若い世代に対して、高山先生のこのような業績をぜひ伝えたい。その意味でも、このたびの『高山岩男著作集』の刊行を時宜を得たものとして喜びたい。

超近代の姿勢
  渡邊二郎 東京大学名誉教授/元日本哲学会会長
このたび高山岩男著作集全六巻が玉川大学出版部より刊行されることになった。戦後に高山岩男は玉川大学で講筵を敷いた。そうした縁もあってであろうか、玉川大学学長小原芳明氏が中心となって、今回の著作集が企画されたようである。西田幾多郎や田辺元の高弟として戦前戦後を通じ、米寿で亡くなるまで活躍されたこの哲学者の著作集にふさわしく、顧問や編集委員には京都学派の熟知の何人かの信頼するに足る識者が参画されている。暫く前に別の書肆から出版された高山岩男の二巻の著作集には、斎藤義一氏や花澤秀文氏が名解説を執筆されていた。今度はどんな解説が付されるのであろうか。それよりも何よりも、超近代の姿勢に徹して、世界の諸文化の独自性に通じ、哲学的人間学の立場から、とりわけ、場所的論理と呼応の原理を提唱した高山岩男の諸作品が集成されるのは有意義である。後期ハイデッガーの説いたエルアイグニスを私は「呼び求める促し」と訳すが、そこには高山岩男の呼応の原理に通うものがあるような気がして、私は大きな関心を寄せている。

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