服のげんりょうから「布」を作る

資料提供.新潟県十日町博物館(カラムシ関係)/大分県農業技術センター(天蚕関係)

カラムシから糸を作る  編衣(アンギン)を作る  天蚕から糸を作る カラムシ編みを作ってみよう

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カラムシ

 

カラムシ(Ramieラミー)(玉川学園奈良池にて)

カラムシは,どこにでもはえている強い雑草ですが,昔の人は「カラムシ」の茎(くき)を蒸して皮をはぎ,これからとれる「せんい」で糸を作り.布をおっていました.カラムシの言葉の意味は「皮を蒸す」からきています.いまでも新潟県小千谷(にいがたけんおじや)の「小千谷ちぢみ」,滋賀県(しがけん)の近江上布(おうみじょうふ)は,このカラムシが原料になっています.ふつうの麻(Linenリネン)と違ってごわごわしないのが特長です.上質の麻の夏服もこのカラムシから作られています.縄文人は今なら高級紳士/婦人服を着ていたことになりますね・・・

カラムシから布を作る(新潟県十日町地方に残る技術)

カラムシは多年草で,一度植えると毎年芽を出します.そのカラムシのクキからはぎ取った皮を「青苧」(あおそ)といい,青苧から糸を作り布をおります.カラムシを植えた最初の年はよい青苧がとれません.2年目からのものを使います.戻る

原料の青苧ができるまで.

1.5月の中ごろに一番芽がでます.15〜18センチにのびたころに畑一面にカヤをしきます.

2.風のない日をえらんで(朝か夕方),カヤに火をつけ一番芽をやきはらいます.こうすることによって二番芽からの発芽の数をふやし成長を同じようにします.また焼け残った「灰」には成長に必要なアルカリ分が含まれていて肥料(ひりょう)の役目もはたします.これは縄文時代からつづく「焼き畑」の技術です.

3.二番芽が成長するように肥料を入れます.(縄文時代に行われていたかはわかりません)

4.畑の回りにカヤで風よけの「さく」を作ります.こうすると風でクキがこすれて皮が固くなったり,たおれることをふせぎます.

5.7月の末頃に朝早く刈り取りを行います.クキは根元の10〜20センチほどを残し,長さ140センチていどに切りそろえて先の方を切り落とします.

6.皮をはぎやすくするために束ねたクキをきれいな水に2〜3時間つけます.

7.水からあげたクキを2つにおり,指で皮をはぎ取ります.はいだ皮は束ねてから水で洗い「青汁」をとります.

8.道具を使って皮からセンイのない部分をこそぎおとすと,すきとおった光沢のあるセンイがでてきます.これが青苧で一人一日500グラムしか作ることができません.

9.青苧は束ねて風通しの良いところで2〜3日「かげぼし」します.こうすると少し青い美しい青苧ができるのです.戻る

できあがった青苧

カラムシの糸ができるまで.

新潟県の十日町地方では「縮」(ちじみ)という独特の織り物が作られていますが,この技術は江戸時代にできたものです.それ以前は普通の平布や編衣(あんぎん=織ったのではなく編んだ布)でした.

1.青苧を一本づつ爪先で細くさいて糸にします.それを次々につないでいきます.縦糸(たていと)と横糸はつなぎ方が違うそうです.

2.糸に「より」をかけます.江戸時代には機械を使っていましたが,縄文時代には手やごく簡単な道具で「より」をかけていたと考えられています.円盤型(えんばんがた)の土製品や石はこれに使われたのではないかと考えられています.

3.一度「よった」糸を今度は逆にまきかえします.こうすると「ねじれ」のない糸になります.

4.出来た糸は1周約3メートルくらいの輪にします.この輪に木の棒を通して横に広げて天井からつるします.水分を与えて今度は輪の下におもりになる棒をとおします.こうするとピンとはって良い糸が出来ます.

5.出来た糸を袋に入れてアク(灰)をいれた水で8時間ほど煮込みます.一晩おいて翌日にきれいな水で洗います.こうすると糸の中にあった余分なカスがとれます.また糸もしなやかになります.

6.糸を白くするために,「雪晒し」(ゆきざらし)といって20日以上も昼間に雪の上に広げます.雪の中に含まれるオゾンが蒸発する時に色が抜けるのだそうです.

8.晒して真っ白になった糸は生がわきのうちに一方を棒にかけ,片方に両手を入れて糸の筋やからみをなおします.それから乾かすのです.

9.出来た糸は使いやすいように,木で作った四角や六角形のワクにまきとります.戻る

糸から布を作る

1.編衣(アンギン)

編衣(アンギン)はカラムシやイラクサ,アカソなどの植物のセンイを使ってスダレをあむようにして作られた編み物で,これまで縄文時代の遺跡からその断片が発見されています.戻る

 

編衣を編んでいるところ

   

編衣(アンギン)で作られた製品(江戸時代頃)同じようなものが縄文時代にも作られていたと思われます.

 

2.織物(おりもの)

弥生時代の遺跡からは原始的な機織り具(はたおりぐ)が見つかっていますが,縄文時代の遺跡からはまだ見つかっていません.ただし縄文時代も後半には布があったと考えられています.戻る

 

天蚕

天蚕(てんさん=野生の蚕)のマユ

天蚕は天蚕蛾(てんさんガ)科に属する大型のガで,クヌギやナラの葉を食べてマユを作ります.写真のとおりうすい緑色で天蚕のマユから作られる糸や布も上品な緑色をしています.縄文時代の人もこの天蚕を利用して釣り糸の「テグス」や布を作っていたと思われています.戻る

 

天蚕の幼虫(左)と成虫(右)

天蚕から糸を作る

1.集めたマユはくさったり,ガになるのをふせぐために「熱風」をあてて中にいる「さなぎ」を殺します.こうするとマユは軽くなります.こうして汚れているマユを取りのぞきます.

2.マユを熱湯に入れてゆでます.これはマユを固めているセリシンというノリのような物質を取りのぞいて,糸がほぐれやすくするためです.

3.マユの回りから糸口(いとぐち=糸のはし)を見つけて糸をとりだします.

4.目的とする糸の太さによって,一度に糸をとるマユの数を決めます.普通は10個くらいです.

5.マユからとれる糸を木のワクにまきとります.

まきとられた天蚕の絹糸(きぬいと)

6.糸のはじめと終りを結んでからむのをふせぐ,これを「口止め」といいます.そして束を作ります.これが生糸(きいと)です.

7.生糸は熱湯をかけて残ったセリシンを取りのぞき,最後によりをかけて光沢のある美しい絹糸になります.戻る

 

カラムシ編みを作ってみよう

ここからは,みんなで作り上げていくコーナーです

1.カラムシをとってきます.

2.次に葉をとり,クキだけにします.

3.クキを2〜3時間水につけます.

4.さあ,皮をはぎましょう.

5.次に表の青いところを包丁の背中でこそぎおとします.そして水洗い.これをくりかえします.

6.「せんい」がとれたら,乾かして.

7.これを「よって」糸にします.

8.ドングリのからや木の皮といっしょに煮てみましょう.色がつきます.

9.たて横をあんで,たて長の厚紙にはって.

10.はい「しおり」のできあがり.

11.服を作るにはたくさんのカラムシを使って,布をおらなくてはなりません.みんなの力をあわせればできます.

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