【信頼性展開の演習】
信頼性展開は,要求品質と品質特性に対して信頼性企画を設定し,この企画を実現するための方法を考察する進め方と,過去の不具合に対するFT表の作成から始めて,重要不具合に対してFMEAを実施する進め方との2種類があります.ここでは,後者のFT表からの展開について解説しています.
【内 容】
1.
FT表の作成2.
FT*要求品質展開表の作成3.
FT*部品展開表の作成4.
重要部品の抽出5.
FMEA表の作成
FT表の作成は,次のステップで行います.
1―1
事前準備(20分)1―2
FT図の作成(30分)1―3
FT表の作成(20分)以下にステップを説明します.
Step1.グループの編成
1)会合のメンバーを5〜6名で編成します.
2)メンバーにはできることならばTQM推進部や品質保証部の人も混在させるとよいと思います.
3)メンバーが決まったら,リーダを1名選出します.
Step2.対象製品の選定
1)会合で取り上げる対象製品を選定します.
2)過去に要求品質展開表や部品展開表などが作成されているか検討します.
3)要求品質展開表や部品展開表が整備されていない場合には,これらの諸表を作成してから次のステップに移ります.
4)信頼性展開から始めたい場合には,他の展開を参考にしながら進めます.
Step3.資料の準備
1)要求品質展開表,部品展開表などの過去の展開表を準備します.
2)過去の日常管理の結果から,クレーム情報,営業報告書などの不具合の状況を示す資料などを準備します.
Step1.重要不具合の抽出
1)過去のクレーム情報,営業報告書などから不具合を抽出します.
2)抽出した不具合をポストイットなどのラベルに記入します.
3)不具合を記入したラベルを一覧できるように模造紙などに貼り並べます.
Step2.不具合トップ事象の選定
1)不具合ラベルについて程度を,その発生状況によってグルーピングします.
2)各グループの中から,特に重要と考えられる不具合を抽出します.
3)抽出した各グループの不具合の中でも特に重要と考えられる不具合を抽出し,この不具合をトップ事象とします.
Step3.FT図の作成
1)抽出された不具合をトップ事象としてFT図を作成します.
2)FT図は不具合の発生を基本事象やOR事象,AND事象などの論理記号を用いて記述します.
3)2つ以上の事象が同時に生起した時に上位の不具合事象が発生するときにはAND記号を用いて表示します.
4)2つ以上の事象について,1つの事象が生起したときに上位の不具合事象が発生するときにはOR記号を用いて表示します.
Step1.FT表への転記
1)展開表シート(横型)を用意し,作成したFT図をFT表に転記します.
2)FT図は不具合事象を論理記号を用いて記述したものですが,これを展開表の形に転記します.
3)OR事象とAND事象を直線と点線で識別できるように記述してもかまいません.
Step2.FT表のチェック
1)FT図は上位から展開していますので,下位項目から上位項目へチェックします.
2)チェックして,抜けている事象がある場合には追記します.
3)最下位レベルの不具合が基本事象かどうかチェックします.
【ポイント】
1)要求品質展開表がプラスの品質の展開であるのに対し,信頼性展開ではマイナスの品質を検討します.
2)既存改良型の製品の場合は過去の製品の不具合事象を未然に防止するために実施され,新規開発型製品の場合には,設計品質が定められ,製品機能がほぼ固められた時期に,不具合を予想して実施されます.
3)不具合事象は否定形で表現します.
4)FT図をFT表に書き換えたとき,OR事象とAND事象を直線と点線で識別できるような工夫がされています.
5)FT図を作成するとOR記号が多くなりますが,実際の不具合発生ではAND記号も多く使われるはずですので注意します.
FT*要求品質展開表の作成は,次のステップで行います.
2―1
マトリックスの作成(30分)2―2
対応関係の記入(30分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1. FT*要求品質展開表の作成
1)FT表と要求品質展開表を用意します.
2)FT表と要求品質展開表を二元表に組み合わせてFT*要求品質展開表を作成します.
3)FT表は展開次数が一定になりませんから,FT表の展開次数と要求品質展開表の次数を特に合わせる必要はありません.
Step2.二元表の確認
1)FT表と要求品質展開表の二元表を作成する目的を明確にします.
2)要求品質はプラス面の品質であり,FT表に展開されているものはマイナス面の品質であり,この二元表を作成する目的を討論します.
3)要求品質が確保されないことによるマイナス面の品質を考察して,マイナス面の品質が網羅されているか確認します.
Step1.対応関係の記入
1)各部長のFT*要求品質展開表について,プラス面の品質である要求品質とマイナス面の品質である不具合との対応関係を記入します.
2)対応関係は,その対応の強さを考慮して,◎○△の3段階で記入します.
Step2.対応関係のチェック
1)重要な要求品質が確保されなかった時の不具合がFT展開表に不具合として存在しているかチェックします.
2)不具合発生の予測に重点を置いて,対応関係をチェックします.
【ポイント】
1)ポジティブな要求品質とネガティブな故障との関連の把握を目的とします.
2)FT*要求品質展開表を用いて故障モード重要度を算出することができます.
FT*部品展開表の作成は,次のステップで行います.
3―1
マトリックスの作成(30分)3―2
対応関係の記入(30分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.FT*部品展開表の作成
1)FT展開表と過去に作成されている部品展開表もしくはユニット・部品展開表を用意します.
2)FT展開表と部品展開表を二元表に組み合わせてFT*部品展開表を作成します.
3)FT展開表,部品展開表共に展開次数が一定にはなりませんので,次数を合わせて二元表を作成する必要はありません.
Step2.二元表の確認
1)FT表からの部品展開表への対応で検討可能であるか確認します.
2)FT表からの展開ではレベルが合わない場合には,部品から故痺a[ドを抽出して故障モード展開表(FM表)を作成し,FM表との二元表で検討します.
Step1.対応関係の記入
1)FT*部品展開表について,部品と故障モードとの対応関係を記入します.
2)対応関係は,その対応の強さを考慮して,◎○△の3段階で記入します.
Step2.対応関係のチェック
1)故障モードに関連する部品が存在するかチェックします.
【ポイント】
1)FMEAを意識して,部品と故障モードの関連を把握します.
2)部品の故障モードを展開した部品FM表と部品展開表との二元表を作成することも考えられています.
重要部品の抽出は,次のステップで行います.
4―1
故障モード重要度の算出(30分)4―2
重要度の変換(20分)4―3
重要保安部品の選定(10分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.重要度算出方法の検討
1)要求品質展開表とFT表との二元表から,要求品質重要度を故障モード重要度に変換する方法があります.
2)現存の類似製品についての故障率データから故障モード重要度を求める方法があります.
3)信頼性の分野で用いられている致命度評点法により故障モード重要度を求める方法があります.
4)どの方法によって故障モード重要度を算出するか検討します.
Step2.故障モード重要度の算出
1)演習では要求品質*FT展開表を用いて故障モード重要度を算出します.
2)要求品質*FT展開表を用意し,対応関係の記号◎○△をそれぞれ◎:5,○:3,△:1と重み付けして,要求品質重要度と掛け合わせます.
3)これを縦に合計して故障モード重要度とします.
Step1.故障モード重要度の比較
1)故障モード重要度の算出ステップで3つの方法を示しましたが,この3つの方法で重要度を求めた場合には,その重要度を比較します.
2)要求品質*FT展開表を用いて故障モード重要度を求めた場合には,故障モードの発生が要求品質と強い関連を持つことになります.
3)現存の類似製品の故障率データから求めると,現在問題となっている故障モードへの未然対策を検討することになります.
4)致命度評点法では比較的に客観的な故障モード重要度が求められます.
5)何を問題としているかで,故障モード重要度の妥当性を検討します.
Step2.重要度の変換
1)演習では要求品質*FT展開表を用いて求めた故障モード重要度を採用し,この重要度を部品重要度に変換します.
2)FT*部品展開表を用意し,対応関係の記号◎○△をそれぞれ◎:5,○:3,△:1と重み付けして,故障モード重要度と掛け合わせます.
3)これを横に合計して部品重要度を求めます.
4)故障モード重要度が3つの方法で求められている場合には,それぞれ変換を行って部品重要度を3つ求め,これらを比較してもよいと思います.
Step1.重要部品の抽出
1.FT*部品展開表から部品重要度を用いて重要部品を抽出します.
2)部品重要度が大きな値を示している部品を重要部品とします.
Step2.重要保安部品の選定
1)故障モード重要度から変換した部品重要度を用いて抽出された重要部品について,部品品質特性を抽出します.
2)重要部品の品質特性の中で,保安特性と考えられるものを抽出します.
3)保安特性とは,その特性が公差を満たさないときに人命に影響を与える特性です.
4)保安特性を持つ部品を重要保安部品とし,この部品の故障モードについてFMEAを実施します.
【ポイント】
1)故障モード重要度の算出には,故障の影響の大きさ,システムに与える影響の範囲,故障の発生頻度,故障防止の可能性,新規設計か否かのファクターを考慮して致命度を求める致命度評点法を用いることもあり,客観的な故障モード重要度が求められます.
2)FT表と部品展開表の二元表から重要保安部品を選定する以外に,FT表と機能展開表の二元表から重要機能を確認し,重要部品の抽出につなげる方法もあります.
3)部品の品質特性を考えた時,その特性が公差を満たさない時に人命に影響をおよぼすような特性を保安特性と呼び,この特性を有する部品が重要保安部品です.
4)部品品質特性としては,機能特性を考えることも必要であり,機能特性とは,その特性が公差を満たさない時に製品の機能が発揮できなくなる特性です.
5)機能特性や保安特性は,図面上に示され,QA表によって設計の意図を製造に伝達する際の重要な特性です.
FMEA表の作成は,次のステップで行います.
5―1
故障モード発生原因の推定(20分)5―2
故障モードの影響解析(30分)5―3
対策案の立案(20分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.重要部品機能の確認
1)重要部品もしくは重要保安部品の機能を明確にします.
2)機能は機能表現を用いて明確に記述します.
3)対象部品の機能を停止させる可能性のある故障モードが故障モード展開表に存在するか確認します
4.FMEA表シートを用意し,対象部品の名称,機能を記入します.
Step2.使用環境の確認
1)部品が製品にどのように組み込まれるかを確認します.
2)部品が組み込まれた状況,組み込まれた製品が使用される状況を類推し,使用環境を確認します.
3)対象部品が組み込まれた製品の使用条件なども確認します.
Step3.故障モード発生原因の推定
1)FMEA表シートに故障モードを記入し,想定される使用条件での故障モードの発生原因を推定します.
2)推定した発生原因を全てFMEA表シートに記入します.
Step1.上位システムへの影響解析
1)故障モードが発生した時の上位システムへの影響をFMEA表シートに記述します.
2)上位システムへの影響は,FT*要求品質展開表を活用することによって,容易に抽出されます.
Step2.故障モード検知法の抽出
1)故障モードをどのように検知するか,その方法をFMEA表シートに記述します.
2)故障モード発生後の検知,他の現象からの類推検知など,あらゆる角度から検知方法を考えます.
Step3.故障等級の設定
1)過去のクレーム情報,営業報告書などから故障モードの発生頻度を調査します.
2)故障モードの上位システムへの影響,検知の難易度,発生頻度から故障の等級を設定し,ABCなどの3段階程度で表示します.
3)致命度評点法を用いて故障モード重要度を求めている場合には,この評点を故障等級としてもかまいません.
Step1.重点項目の設定
1)部品の故障モードの上位システムへの影響,検知の難易度,発生頻度から重点項目を設定します.
2)上位システムへの影響が大きく,検知が難しく,発生頻度が比較的多いと考えられる項目を重点項目とします.
3)致命度評点法を用いて故障モード重要度を求めている場合には,この評点が高い項目を重要項目とします.
Step2.対策案の決定
1)重要項目について対策案を立案し, FMEA表シートに記述します.
2)対策案について,対策実施の難易度,対策実施後の効果,対策実施の際の費用などを勘案して実施対策を決定します.
【ポイント】
1)部品の機能が抽出された時,その機能に関する情報はユニット・部品展開表に蓄積するという姿勢が大切です.
2)部品の故障モードを抽出する際にも,シーン展開の考え方を用いるとよいと思います.
3)故障モードの上位システムへの影響は,FT*要求品質展開表などの二元表によって容易に抽出されます.
4j重要項目を設定する際には,発生頻度,影響度,致命度などを数値化し,故障等級によるランク付けを行って重点指向します.
5)FMEAはトラブルの未然防止に重点があり,事前に故障を予測するために実施するものです.
6)信頼性展開は,設計品質が設定され,図面ができあがって対象品の概要がほぼ固まった段階で実施すると効果があります.
【注】
この演習を行う際に使用します各種の演習用シートは,日本規格協会から出版されている「QFDガイドブック」に添付されています.さらに,この「QFDガイドブック」にはQFDの支援ソフトがCD−ROM版でついており,図表入りで詳細な説明がしてあります.