【技術展開の演習】

企業が保有している技術を展開し,技術展開表を作成する手順を示してあります.この技術展開表は技術に名前を付けて展開したものですが,品質展開と狭義の品質機能展開との有機的な結合に用いたり,現有技術の評価や今後開発しなければならない技術の探索などに利用されます.

 

【内 容】

1.対象企業の選定

2.対象の展開

3.作用の展開

4.技術展開表の作成

5.他の展開表を用いた確認

 

1.対象企業の選定(所要時間30分)

 

対象企業の選定は,次のステップで行います.

1―1 事前準備(10分)

1―2 対象企業の選定(20分)

以下にステップを説明します.

 

1―1 事前準備

Step1.グループの編成

1)演習では1グループを5〜6名で編成します.

2)グループメンバーにはできることならば,品質管理部や品質保証部の人と各部署の務を把握している人を選定するとよいと思います.

Step2.自己紹介

1)特定(例えば,自分が一番若いと思える人)のメンバーから時計回りに自己紹介(名前,所属,専門など)をします.

Step3.グループ・リーダの選出

1)リーダの役割は,グループ討議の進行係と意見の調整,まとめをします.

 

1―2 対象企業の選定

Step1.対象企業候補の抽出

1)演習で取り上げる対象企業の候補を各自で発案します.

2)提案された対象企業について,共通認識が得られるか検討し,候補を3つ位に絞り込みます.

Step2.対象企業の決定

1)絞り込まれたテーマ候補について,投票などで対象企業を決定します.

2)決定された企業について必要な技術が想定できるかなどを検討します.

3)自社の技術を展開する場合には,全社の技術を展開するのか,生産技術を展開するのか,開発技術を展開するのかなど具体化します.

 

【ポイント】

1)演習で取り上げる対象企業は,その企業に必要な技術が想定できる企業が望まれます.

2)共通認識が得られる技術を保有していると考えられる企業を選定します.

 

2.対象の展開(所要時間60分)

 

対象の展開は,次のステップで行います.

2―1 技術対象の抽出(30分)

2―2 技術対象のグルーピング(20分)

2―3 対象展開表の作成(10分)

以下,各ステップの作業手順を説明します.

 

2―1 技術対象の抽出

Step1.保有技術の抽出

1)技術対象を抽出するために,企業に必要な技術を抽出します.

2)対象企業が保有していると考えられる技術について,名詞+動詞+技術の表現で思いついたものを記録します.

例:金属切削技術,プラスティック溶融技術,セラミック圧着技術,新素材開発技術,鋼板成形技術,金属表面改質技術など.

3)抽出された技術表現の中に名詞と動詞が表現されているか確認します.

Step2.必要技術の抽出

1)抽出された保有技術から,対象企業に必要な技術が何かを考えて,必要技術を抽出します.

2)抽出された技術に名詞と動詞が明確に表現されているかを確認します.

3)抽出された技術表現を一覧表にします.

Step3.技術対象の抽出

1)抽出された技術の名詞の部分に着目し,対象企業に必要な技術の対象が漏れなく表現されているか確認します.

2)技術対象は技術の対象を表現するものであり,名詞で表現されます.

例:金属切削技術 金属+切削+技術

対象技術 対象 作用

3)対象企業に必要な技術対象がある場合には,その対象を追加します.

 

2―2 技術対象のグルーピング

Step1.技術対象のラベル化

1)抽出された技術対象をラベルに記述します.

2)抽出された技術対象をラベルに記述する時点で思いついた技術対象があれば,その技術対象もラベルに記述します.

3)技術対象ラベルを一覧できるように模造紙に方向を揃えて貼り付けます.

4)重複している技術対象ラベルを取り除きます.

Step2.技術対象の群化

1)技術対象が記述されたラベルを群化します.

2)技術の対象が似通っていると考えられる技術対象ラベルを4〜5枚集め,技術対象群にラベルを分けます.

3)各対象群の技術対象で,追加が必要な具体的な技術対象があるか確認します.

4)追加が必要な技術対象があれば,その群に技術対象を記述したラベルも群化します.

Step3.上位ラベルの作成

1)各群化されたラベルについて,各群を代表すると考えられるラベルを1枚抽出するか,群を代表すると考えられる新たな技術対象ラベルを作成して,各群に表札をつけます.

2)始めに抽出された技術対象ラベルの枚数が多い場合には,上位ラベルについても群化し,更なる上位ラベルを作成します.

 

2―3 対象展開表の作成

Step1.展開表への転記

1)展開表シートを用意し,始めに作成したラベルの内容を三次項目の欄に転記します.

2)三次項目の一群を示す技術対象名を二次項目の欄に転記します.

3)他の三次項目,二次項目も転記します.

4)二次項目の一群を示す技術対象名を一次項目の欄に転記します.

5)他の群についても同様に展開表に転記します.

Step2.対象展開表のチェック

1)展開表について上位項目から下位項目へ技術対象をチェックします.

2)上位の技術対象のカテゴリーに含まれるべき必要な技術対象を考え,必要があれば追加します.

3)この展開表が技術対象について構成要素を展開した形になっているかチェックします.

 

【ポイント】

1)技術は名詞と動詞で表現されている必要があり,加工技術という言葉は動詞のみの表現であり,金属技術という言葉は名詞のみの表現です.

2)技術を正しく表現するためには,金属加工技術というように,名詞と動詞を用いて表現します.

3)技術表現が名詞と動詞を用いて表現されていれば,名詞の階層化と動詞の階層化によって,具体的なレベルの技術表現ができます.

 

3.作用の展開(所要時間50分)

 

作用の展開は,次のステップで行います.

3―1 技術作用の抽出(20分)

3―2 技術作用のグルーピング(20分)

3―3 作用展開表の作成(10分)

以下,各ステップの作業手順を説明します.

 

3―1 技術作用の抽出

Step1.技術表現からの抽出

1)対象の展開フェーズで抽出した技術表現の一覧表を準備します.

2)技術表現の動詞の部分に着目して技術の作用部分を抽出します.

3)技術作用は対象に対する作用を表す部分であり,動詞で表現されます.

Step2.技術作用の確認

1)抽出された技術作用が作用を表す動詞で表現されてい驍ゥ確認します.

2)動詞を名詞形で表現されているものについては動詞の表現に直します.

例:「切削」→「切削する」,「圧着」→「圧着する」

動名詞 → 動詞 動名詞 → 動詞

3)抽出された技術作用について,必要な技術作用が全てあるかを確認します.

4)必要な技術作用が不足している場合には追加します.

 

3―2 技術作用のグルーピング

Step1.技術作用のラベル化

1)抽出された技術作用について,その表現などをチェックします.

2)技術作用をラベルに転記します.

3)技術作用ラベルを一覧できるように模造紙に方向を揃えて貼り付けます.

4)重複している技術作用ラベルを取り除きます.

Step2.ラベルのグルーピング

1)ラベルに記述された技術作用の作用目的を考えて,似ていると思われる技術作用を4〜5枚ずつに群化します.

2)全てのラベルについて群化が終わったら,各群を代表する技術作用名を考えて新たなラベルに記述するか,群内のラベルから代表ラベルを抜き出します.

3)始めに作成した作用ラベルが多い場合には,始めに作成したラベルを新たに作成したラベルの下に重ね,新たに作成したラベルだけが見えるようにします.

4)新たに作成したラベルについて,同様にグルーピングします.

5)始めに作成した作用ラベルが少ない場合には,二次項目の展開までとします.

 

3―3 作用展開表の作成

Step1.展開表の作成

1)展開表を用意し,始めに作成したラベルの内容を二次項目の欄に転記します.

2)二次項目の一群を示す技術作用名を一次項目の欄に転記します.

3)始めに作成したラベルが多い場合には,三次項目の欄から記入し,二次項目も転記します.

4)さらに,二次項目の一群を示す技術作用名を一次項目の欄に転記します.

5)始めに作成したラベルが少ない場合には,二次項目までの展開表にします.

Step2.展開表のチェック

1)上位の技術作用を表す動詞から考えて,必要な作用を表す動詞に漏れがないかチェックします.

2)上位の作用を示す動詞を実現するために必要な下位の作用を示す動詞があれば必要な動詞を追加します.

 

【ポイント】

1)技術は名詞と動詞で表現されており,動詞の部分が技術の作用を表しています.

2)具体的な下位のレベルから上位方向へグルーピングした展開表の場合は,上位から下位項目へチェックします.

 

4.技術展開表の作成(所要時間60)

 

技術展開表の作成は,次のステップで行います.

4―1 技術の生成(30分)

4―2 技術展開表の作成(30分)

以下,各ステップの作業手順を説明します.

 

4―1 技術の生成

Step1.展開表の組み合わせによる生成

1)対象展開表と作用展開表を準備します.

2)技術対象の一次項目と技術作用の一次項目を組み合わせて,必要な技術を抽出します.

3)生成した技術を一次項目としてラベルに転記します.

Step2.二次項目の生成

1)一次項目の対象に着目し,作用を固定して対象展開表の二次項目から必要な対象を膠着させて二次項目を生成します.

2)生成した技術を二次項目としてラベルに転記します.

 

4―2 技術展開表の作成

Step1.展開表の作成

1)展開表を用意し,一次項目のラベルの内容を一次項目の欄に転記します.

2)一次項目に関連する二次項目のラベルの内容を二次項目の欄に転記します.

3)二次項目の作用から作用展開表を用いて,三次項目を生成し三次項目の欄に記入します.

4)他の二次項目についても同様に展開表に転記し,三次項目も同様に生成・記入します.

Step2.展開表のチェック

1)一次項目,二次項目,三次項目のどのレベルも技術表現されているかチェックします.

2)必要な技術だけが展開されているかチェックします.

 

【ポイント】

1)技術対象の階層化に技術作用を膠着させて展開表を作成します.

2)技術作用の展開を先にせず,技術対象を先に展開する方が技術を展開しやすいようです.

3)技術対象と技術作用を組み合わせることによって,新たな技術が生成される可能性があります.

 

5.他の展開表との確認(所要時間60分)

 

他の展開表との確認は,次のステップで行います.

5―1 要求品質展開表との確認(20分)

5―2 品質特性展開表との確認(20分)

5―3 機能展開表との確認(20分)

以下,各ステップの作業手順を説明します.

 

5―1 要求品質展開表との確認

Step1.要求品質*技術展開表の作成

1)要求品質展開表と技術展開表を用意します.

2)要求品質展開表と技術展開表を二元表に組み合わせて要求品質*技術展開表を作成します.

Step2.技術展開表の確認

1)要求品質*技術展開表から,要求品質を実現するための技術が存在するか確認します.

2)要求品質を実現するための技術が技術展開表に存在しない場合には,技術展開表にその技術を追加し,NEとして登録します.

3)技術レベルについても検討し,自社の技術レベルが低いと思われる場合には,同様にNEとして登録します.

 

5―2 品質特性展開表との確認

Step1.品質特性*技術展開表の作成

1)品質特性展開表と技術展開表を準備します.

2)品質特性展開表と技術展開表を二元表に組み合わせます.

Step2.技術展開表の確認

1)品質特性展開表の設計品質設定表の設計品質を確保する技術が存在するか確認します.

2)設計品質を確保する技術が存在しない場合には,その技術を技術展開表に追加し,NEとして登録します.

3)設計品質のねらい値については,位置の値とばらつきの値があり,どちらが問題かを考えて検討します.

 

5―3 機能展開表との確認

Step1.機能*技術展開表の作成

1)機能展開表と技術展開表を用意します.

2)機能展開表と技術展開表を二元表に組み合わせて機能*技術展開表を作成します.

Step2.技術展開表の確認

1)機能*技術展開表から,製品機能を確保する技術が存在するか確認します.

2)製品機能を実現する技術が存在しない場合には,その技術を技術展開表に追加し,NEとして登録します.

 

【ポイント】

1)市場の要求を実現するにも,設計品質を確保するにも,機能を具現化するのも技術ですから,必要な技術が当該企業に存在するかを確認します.

2)コストの低減に関しても,最終的には技術が問題になり,コスト低減を阻害する技術を抽出するには,コスト*技術展開表を作成して検討します.

3)NEは「コスト低減技術」というように表現し,何をどのようにする技術であるかを明確に表現します.

4)技術展開表を作成する場合には,NE登録システムを構築して,NEを全社で解決する仕組みを整備することが必要です.

5)必要に応じて他の展開表と二元表を作成し,当該企業にとって必要な技術,不足している技術を模索することが大切です.

6)技術展開表に技術レベルを評価した評価表を付け,技術レベルを管理することにも役立てられます.

7)当該企業のレベルが高い技術から,新製品開発の糸口を見いだすこともできます.

 

【注】

この演習を行う際に使用します各種の演習用シートは,日本規格協会から出版されている「QFDガイドブック」に添付されています.さらに,この「QFDガイドブック」にはQFDの支援ソフトがCD−ROM版でついており,図表入りで詳細な説明がしてあります.