【方針展開の演習】
方針管理では方針の展開と方針の管理が行われますが,ここでは方針の展開についての手順を示してあります.方針をどのように展開するかについて,いろいろと提案されていますが,品質展開の展開と方針展開の展開は同じ意味であり,目標と方策を分けて考える展開の方法を説明しています.
【内 容】
1.
上位方針の確認2.
目標の展開3.
方策の展開4.
目標・方策マトリックスの作成5.
上位方針との整合確認
上位方針の確認は,次のステップで行います.
1―1
事前準備(20分)1―2
上位方針の確認(30分)以下にステップを説明します.
Step1.会合メンバーの選出
1)会合のメンバーを年度方針立案に関連する5〜6名で編成します.
2)会合にはできることならばTQM推進部や品質保証部の人を同席させるとよいと思います.
3)人数が多いと議論のみでまとまらない可能性がありますから,上位方針提示者一人と自分の方針を提示する4〜5名の構成とするとよいと思います.
Step2.会合の位置づけの確認
1)方針展開の会合の組織的な位置づけを確認します.
2)中長期計画からのトップの方針展開検討会合なのか,上位の年度方針が提示されて方針展開の会合なのか,会合の位置づけを検討します.
3)他の会合との位置づけについても,必要があれば確認します.
Step3.資料の準備
1)中長期計画や前年度の振り返り検討結果などの資料を準備します.
2)過去の日常管理の結果の中で,問題になりそうな管理項目とその状況を示す資料などを準備します.
このステップは方針展開をどのようなグループで実施するのかによって異なりますが,ここでは製品別事業部制組織における社長の年度方針が提示され,事業部長と部長4〜5名の構成による方針の展開を想定して説明します.他の場合でも考え方は同じです.
Step1.社長年度方針の確認
1)社長から提示された年度方針書を用意します.
2)提示された年度方針について,年度方針説明を全員で検討し,目標と目標を達成するための指針を確認し合います.
3)当該企業が置かれている現状,時代の背景,世の中の動向など話し合い,目標に対する必要性や目標達成の方策などの妥当性なども再検討します.
Step2.事業部長方針の確認
1)社長方針を受けて提示された事業部長方針について,事業部長自身が説明します.
2)提示された事業部長方針について,目標と方策が明確になっているか検討します.
3)全社の方針に関連した事業部長方針以外に,事業部としての事業部長方針があるのかについても確認します.
4)目標については,社長方針における目標値から,事業部に割り当てられた目標値に対して,その妥当性も検討します.
【ポイント】
1)通常,展開する方針は年度の方針であり,年間の活動について方針を展開します.
2)提示する方針には,目標とその方策が必要であり,方策と目標の2つの項目で方針が示されている必要があります.
3)方針は個人が提示するものですから,社長方針,部長方針,課長方針という表現が正しく,部方針とか課方針では責任が明確になりませんので正しい表現ではありません.
4)方針の展開には目標の展開と方策の展開がありますが,目標に対しては目標値を展開して割り当て目標を明確にすることが必要です.
5)事業部長方針や部長方針,課長方針などでは,全社の方針である社長方針以外に,事業部特有の問題や部特有の問題,課特有の問題などについても,必要があれば方針に盛り込む必要があります.
6)方針の展開にはキャッチ・ボールが大切で,上位者との方針のすりあわせを何度も実施する必要があります.
目標の展開は,次のステップで行います.
2―1
目標の確定(30分)2―2
目標展開表の作成(20分)2―3
目標の割り当て(30分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.各部長目標の策定
1)事業部長の目標を達成するための,各部長の目標を策定します.
2)部長の目標は事業部長の目標より具体的な目標にします.
例:事業部長目標 部長目標
蒸留酒売上高 A部長:ブランデー売上高
B部長:ウィスキー売上高
C部長:ウォッカ売上高
3)目標に対する数値目標も,ある程度考えながら目標を展開します.
Step2.各部特有の目標の抽出
1)上位方針から展開された目標以外に,各部として年度内に達成すべき目標があれば,目標として取り上げる.
2)この目標を達成することが事業部として必要かどうかについて,事業部長に確認をとります.
3)目標達成のための手段も,ある程度考えながら目標を抽出します.
4)部として特に達成しなければならない目標がない場合には,次の段階に進みます.
Step1.目標のラベル化
1)抽出された目標名をラベルに記述します.
2)目標ラベルを一覧できるように模造紙に方向を揃えて貼り付けます.
3)重複している目標ラベルを取り除きます.
Step2.目標展開表作成の準備
1)事業部長の目標に対する部長の目標と考えられる目標を群化します.
2)事業部長の目標達成に強く関連する目標ラベルを,事業部長の目標のそばに配置します.
3)事業部長の目標から系統図的に部長の目標を配置します.
Step3.展開表への転記
1)各部長ごとに展開表シートを用意し,事業部長の目標を一次項目の欄に転記します.
2)各部長の目標を二次項目の欄に転記します.
Step1.割り当て目標の策定
1)事業部長の目標に対する目標値を,各部長に割り当てる.
例:事業部長目標,目標値, 部長目標, 目標値
蒸留酒売上高,50億円, A部長:ブランデー売上高 17億円
B部長:ウィスキー売上高 24億円
C部長:ウォッカ売上高 12億円
2)割り当て目標値が妥当かどうか,事業部長を含めて討議します.
3)キャッチ・ボールを繰り返して,割り当て目標を決定します.
4)各部長の目標値の合計が,事業部長の目標値を上回るように設定します.
Step2.目標展開表への記入
1)決定した各部長の割り当て目標値を展開表に記入します.
2)各部長の割り当て目標値の合計が,事業部長の目標値を上回った値になっているか再度チェックします.
【ポイント】
1)目標が明確になれば,手段である方策が明確になりますので,目標と方策では,目標から展開します.
2)目標に対しては,具体的な目標にしていくことが展開ですから,同じ目標名を用いずに具体的な目標名を用いるようにします.
3)上位方針の目標に対する目標値を下位者の目標に配分する時は,下位者の目標値の合計が上位者の目標を上回るように設定します.
方策の展開は,次のステップで行います.
3―1
方策の策定(30分)3―2
方策展開表の作成(20分)3―3
管理項目と目標値の策定(40分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.事業部長方針からの策定
1)事業部長方針に示された方策から,各部長の目標を達成するための方策を策定します.
2)抽象的な方策と具体的な方策が考えられるはずですが,思いついた方策は全て抽出します.
3)系統図を用いて方策を展開してもかまいませんが,手順にならないように注意することが必要です.
4)方策の表現については,対象と作用が明らかになるように表現します.
例:新規顧客の開拓,不良率の低減,新製品の開発,新技術の開発,統計手法の活用など
Step2.目標からの策定
1)各部長が設定した目標を達成するための方策を策定します.
2)目標を達成するための手段や方法を考えて,方策表現で策定します.
3)方策と目標の因果関係を把握することが重要ですが,因果関係が明確でない方策についても,思いついた方策は抽出しておきます.
Step3.各部目標からの策定
1)各部特有の目標が設定されている場合には,その目標に対する方策も策定します.
Step1.方策のラベル化
1)策定された方策について,その表現などをチェックします.
2)方策をラベルに転記します.
3)方策ラベルを一覧できるように模造紙に方向を揃えて貼り付けます.
4)重複している方策ラベルを取り除きます.
Step2.方策ラベルの系統図化
1)ラベルに記述された方策と事業部長の方策を考えて,事業部長の方策と関連が強いと思われる方策を4〜5枚抽出します.
2)事業部長の方策を先頭にして,部長の方策を系統図的に配置します.
Step3.方策展開表の作成
1)各部長ごとに展開表を用意し,事業部長の方策を一次項目の欄に転記します.
2)部長の方策を,各部長の二次項目の欄に記入します.
3)上位の方策から下位の方策を見て必要な方策が思いついたら,その方策も記入します.
4)全ての部長の方策が実施され,目標を達成すると事業部長の方策に対する目標が達成するかをチェックします.
Step1.管理項目の抽出と目標の策定
1)方策展開表に記入された各方策が実施されているかどうかを評価する尺度を抽出します.
2)抽出した評価尺度が管理項目となるが,数値で把握できる尺度を抽出します.
3)評価尺度がどの程度であれば,結果である目標を達成できるかを考えて,管理項目の目標を策定します.
4)目標の目標値と,方策の管理項目の目標値を混同しないように目標を設定します.
Step2.方策展開表への記入
1)抽出した管理項目と目標値を展開表に記入します.
2)管理項目の目標値は,目標の目標値を達成するために十分であるかチェックします.
【ポイント】
1)方策を具体的にしていくと手順となりますが,手順の手前まで展開します.
2)具体的な下位のレベルから上位方向へグルーピングした展開表の場合は,上位から下位項目へチェックします.
3)方針を目標と方策に分けた場合,目標に対する目標値と,方策を実施しているかを測る尺度としての管理項目に対する目標値とがありますので混乱しないように注意します.
目標・方策マトリックスの作成は,次のステップで行います.
4―1
マトリックスの作成(30分)4―2
対応関係の記入(30分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.目標*方策展開表の作成
1)各部長の目標展開表と方策展開表を用意します.
2)目標展開表と方策展開表を二元表に組み合わせて方策*目標展開表を作成します.
Step2.目標値の記入
1)目標展開表の一次項目の欄に事業部長の目標を転記し,二次項目の欄に各部長の目標値を転記します.
2)方策展開表の一次項目の欄に事業部長の方策についての管理項目の目標値を転記し,二次項目の欄に各部長の管理項目の目標値を転記します.
Step1.対応関係の記入
1)各部長の目標*方策展開表について,目標を達成するための方策として妥当なものを抽出して対応関係を記入します.
2)対応関係は,その対応の強さを考慮して,◎○△の3段階で記入します.
Step2.対応関係のチェック
1)目標に対する方策のうち,少なくとも一つの◎の対応関係が存在するかチェックします.
【ポイント】
1)目標と方策の関連を明確にして,方針を展開するために二元表にします.
2)一つの目標に対して一つの方策しか関係していないような目標*方策展開表では意味がありませんから注意が必要です.
上位方針との整合確認は,次のステップで行います.
5―1
目標の展開の確認(20分)5―2
方策の展開の確認(20分)5―3
目標と方策の対応関係の確認(20分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.社長方針からの展開の確認
1)社長方針の目標から,事業部長の目標,各部長への目標と,目標の連鎖が整合しているか確認します.
2)整合がとれていない場合は,目標や目標値を訂正します.
Step2.部長間の目標の確認
1)各部長の目標間に負荷の開きがないか確認します.
2)各部長の目標値の合計が事業部長の目標値を十二分に達成する目標かを確認します.
3)各部で各部特有の目標が抽出されている場合には,自部でも必要ではないか確認します.
Step1.社長方針からの展開の確認
1)社長方針の方策から,事業部長の方策,各部長への方策と,方策の連鎖が整合しているかを確認します.
2)整合がとれていない場合は,方策や方策に関する管理項目の目標値を訂正します.
Step2.部長間の方策の確認
1)他部長の方策の中に自部の方策として有効なものが存在しないか確認します.
2)部門間協力による方策が存在する場合には,協力の体制を検討します.
3)各部で各部特有の目標が抽出されている場合には,その目標達成に必要な方策が自部の目標達成に必要な方策となっていないか確認します.
Step1.目標*方策マトリックスの確認
1)事業部長が各部長の目標*方策マトリックスをチェックします.
2)事業部長として,各部長の目標*方策マトリックスに追加する必要があると思われる目標や方策がある場合には,目標や方策を追加します.
Step2.事業部長と各部長の目標*方策マトリックスの確認
1)事業部長の目標*方策マトリックスと,各部長の目標*方策マトリックスとの整合を確認します.
2)事業部長の目標が各部長の目標とリンクしているか,事業部長の方策と各部長の方策がリンクしているか確認します.
3)事業部長の目標に対する目標値と,各部長の目標に対する目標値がリンクしているか確認します.
4)事業部長の方策に対する管理項目の目標値と,各部長の方策に対する管理項目の目標値がリンクしているか確認します.
5)目標値,方皀梁个垢覺浜X猝椶量槁乎佑」螢鵐C靴討い覆ぞ豺腓砲蓮い修譴召貉エ班ツ垢量槁犬砲△錣擦督_気靴泙后%
【ポイント】
1)目標は目標の連鎖で考え,方策は方策の連鎖で考えます.
2)目標を明確にした後,目標を達成するために必要な方策を考えます.
3)目標と方策の展開が終わってから,目標と方策のマトリックスによって,目標と方策の因果関係をチェックします.
4)方針の目標と方策のそれぞれに管理指標が存在しますが,目標に対する目標値と,方策が実施されているかを管理する管理項目の目標値を分けて考えます.
5)方針を管理する場合には,まず方針の目標が達成しているかを管理し,目標が達成しないようであれば,方策が実施されているかを管理項目によって管理します.
6)目標と方策のリンクがないことが,期の途中で判明した場合には,方策を見直して目標を達成するように管理します.
7)目標に対する目標値も,方策に対する目標値も,どちらも管理項目ですが,方策側の管理項目を点検項目と呼ぶことがあります.
【注】
この演習を行う際に使用します各種の演習用シートは,日本規格協会から出版されている「QFDガイドブック」に添付されています.さらに,この「QFDガイドブック」にはQFDの支援ソフトがCD−ROM版でついており,図表入りで詳細な説明がしてあります.