【設計段階からの工程保証のためのQFD演習】
この章では,工程で生産される産出物の品質を保証するのではなく,産出物を生産する工程そのものを保証するためのQFDの適用方法を説明しています.工程が産み出す産出物を保証するということでは工程で産出される提供財が不良である場合もあるということであり,不良を産出しないような工程を設計段階で確保するという考え方です.
【内 容】
1.
演習準備2.
品質特性の展開3.
工程分析表の作成4.
工程要因の抽出5.
工程要因*品質特性展開表の作成6.
設計品質の確認7.
重要工程の抽出8.
QC工程表の作成
演習準備は,次のステップで行います.
1―1
事前準備(10分)1―2
対象品の選定(20分)以下にステップを説明します.
Step1.グループの編成
1)演習では1グループを5〜6名で編成します.
2)グループ・メンバーにはできることならば,品質管理部や生産技術部の人と工程設計を担当している人を選定するとよいと思います.
Step2.自己紹介
1)特定(例えば,自分が一番若いと思える人)のメンバーから時計回りに自己紹介(名前,所属,専門など)をします.
Step3.グループ・リーダの選出
1)リーダの役割は,グループ討議の進行係と意見の調整,まとめをします.
Step1.テーマ候補の抽出
1)演習で取り上げる対象品の候補を各自で発案します.
2)提案された対象品について、共通認識が得られるかを検討し,候補を3つ位に絞り込みます.
Step2.対象品の決定
1)絞り込まれたテーマ候補について,投票などで対象品を決定します.
2)決定されたテーマの製造工程を想像できるかなどを検討します.
【ポイント】
1)演習で取り上げるテーマ(対象品)には,その製品の製造工程を想定できるものであることが望まれます.
2)共通認識が得られる製品を選定します.
品質特性の展開は,次のステップで行います.
2―1
製品品質特性の抽出(20分)2―2
製品品質特性のグルーピング(20分)2―3
製品品質特性展開表の作成(10分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.仕様書・図面からの抽出
1)対象品についての図面や仕様書を準備します.
2)仕様書・図面などから対象品の品質特性を抽出します.
Step2.基本機能からの抽出
1)機能系統図を準備し,基本機能の達成レベルを考えて品質特性を抽出します.
2)要求される基本機能の達成レベルを実現しているかをどのように測定するのかを考えて特性を抽出します.
Step1.製品品質特性のラベル化
1)抽出された製品品質特性について,その計測単位などをチェックします.
2)製品品質特性をラベルに転記します.
3)製品品質特性ラベルを一覧できるように模造紙に方向を揃えて貼り付けます.
4)重複している製品品質特性ラベルを取り除きます.
Step2.ラベルのグルーピング
1)ラベルに記述された品質特性の測定目的を考えて,似ていると思われる品質特性を4〜5枚ずつに群化します.
2)全てのラベルについて群化が終わったら,各群を代表する品質特性名を考えて新たなラベルに記述します.
3)始めに作成したラベルを新たに作成したラベルの下に重ね,新たに作成したラベルだけが見えるようにします.
4)新たに作成したラベルについて,同様にグルーピングします.
Step1.展開表の作成
1)展開表を用意し,始めに作成した品質特性ラベルの内容を三次項目の欄に転記します.
2)三次項目の一群を代表する品質特性名を二次項目の欄に転記します.
3)他の三次項目,二次項目も転記します.
4)二次項目の一群を示す品質特性名を一次項目の欄に転記します.
5)他の群についても同様に展開表に転記します.
Step2.展開表のチェック
1)上位の品質特性が下位の品質特性群で表せられるかチェックします.
2)上位の品質特性を示すために必要な下位の品質特性があれば必要な品質特性を追加します.
工程分析表の作成は,次のステップで行います.
3―1
加工工程の把握(40分)3―2
停滞・運搬・検査工程の把握(30分)3―3
工程分析表の作成(20分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.加工順の整理
1)対象品の加工に関する単位作業を抽出し,ラベルに記入します.
2)作業の一番小さな単位は動作で,一連の動作の一括りを要素作業といいます.この要素作業の一括りを単位作業といいますが,単位作業レベルで作業を抽出します.
3)加工順序に従ってラベルを並べ,加工順を整理します.
Step2.工程区分の整理
1)単位作業をまとめて工程を編成します.
2)単位作業がいくつか集まって工程が形成されます.単位作業の流れのどこを区切って工程とすると作業効率がよいか,そして品質上のトラブルが少ないかを検討して工程区分を決定します.
Step1.工程間停滞の検討
1)編成された加工工程において停滞が発生する箇所を検討します.
2)工程の始めと終わりは停滞になりますが,工程間の停滞箇所も品質上重要なことがありますから,停滞がどの箇所で発生するかを検討します.
Step2.工程間運搬の検討
1)加工工程で加工された仕掛品を次の工程に運搬する方法を検討します.
2)仕掛品を次工程に一個単位で運ぶ場合と,ある程度まとめてロット単位で運搬する場合がありますが,工程間移動をどのようにするのかを検討します.
3)工程間が一個単位ですぐに次工程に引き渡される場合はそれほど問題ではありませんが,工程間の移動中に品質上の問題を発生させることがありますから,運搬工程の発生箇所を検討します.
Step3.工程間検査の検討
1)加工後,停滞後,運搬後に必要な検査を検討し,検査工程箇所を設定します.
2)加工後の検査としては,加工後に検査をしないと完成時点では調べられない重要な特性がないかを検討します.
3)停滞後の検査としては,停滞が発生したことによる品質上の劣化を未然に発見するための検査が必要であるかについて検討します.
4)運搬後の検査としては,運搬したことによる品質上の問題を未然に発見する検査が必要であるかについて検討します.
Step1.概略工程分析表の作成
1)加工工程を○,停滞を▽,検査工程を□,運搬を○の工程記号を用いて整理します.
2)一般的には,加工工程と検査工程を中心に作成する工程分析表を概略工程分析表と呼んでいますが,ここでは停滞と運搬も含め,全体の流れを工程記号で示したものを概略工程分析表とします.
3)製造工程の流れを工程順に工程記号で示し,工程記号を直線でつなげます.
4)加工工程と検査工程の工程記号の右横に工程名称を記入し,工程記号の中に工程順を示す番号も記入します.
5)運搬の工程記号の中には,運搬手段を記入します.
例えば,コンベヤーによる運搬であれば,「コ」を○の中に記入し,フォークリフトによる運搬であれば,「フ」を,手運搬であれば,「手」を○の中に記入します.
Step2.詳細工程分析表の作成
1)概略工程分析表の工程記号の左横に,各工程記号に関連する工程の状態を記入します.
2)加工の工程記号の左横には1個当たりの生産標準時間もしくは1ロット当たりの生産標準時間を記入します.
3)運搬の工程記号の左横には運搬距離を記入します.
4)停滞の工程記号の左横には停滞時間や停滞時の荷姿を記述します.
【ポイント】
1)作業は動作,要素作業,単位作業,工程の順に抽象化されています.
2)工程分析表は概略工程分析ではなく詳細工程分析を実施して作成することが必要です.
3)加工後の検査だけではなく,工程間停滞や工程間運搬による品質上の劣化問題も検討する必要があります.
工程要因の抽出は,次のステップで行います.
4―1
製造工程設備の確認(20分)4―2
製造工程制御要因の抽出(30分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.製造工程設備の抽出
1)製造工程において必要な設備を,加工工程毎に特定します.
2)簡単な設備であっても提供財の品質に影響があると考えられるものは全て抽出します.
Step2.製造設備計器の確認
1)製造設備に付帯する計器類とその名称を列挙します.
2)付帯されている計器類が何を測定しているのかを考え,計測特性を列挙します.
Step3.製造設備制御スイッチの確認
1)製造設備の操作盤などに設置されているスイッチ類とその名称を列挙します.
2)スイッチ類が何を制御するためのスイッチであるのか,製造条件の何を入力するスイッチであるのかを考え,制御要因を列挙します.
Step1.工程制御要因の抽出
1)製造工程において設定すべき製造条件を考え,工程制御要因を抽出します.
2)制御要因は製造工程において直接制御可能な要因のことです.
Step2.工程要因一覧表の作成
1)抽出した工程制御要因と製造設備制御スイッチから抽出された制御要因を合わせて工程要因一覧表を作成します.
2)時間があれば,要因間の関係の有無を検討します.
【ポイント】
1)製造工程において直接制御可能な要因を抽出することが大切です.例えば,焼成炉を考えた時,炉内温度を制御したいのですが,結果系ですから直接制御できません.制御できるのは設定温度です.この違いを認識することが重要です.
2)ある工程における制御要因が他工程にまで影響することがありますから注意が必要です.
工程要因*品質特性展開表の作成は,次のステップで行います.
5―1
工程要因*品質特性展開表の作成(20分)5―2
対応関係の記入(30分)5―3
品質特性と工程要因のチェック(20分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.二元表の大きさの検討
1)工程要因一覧表と品質特性展開表を用意します.
2)品質特性展開表の次数から,一次項目で工程要因一覧表との二元表を作成するのか,二次項目で工程要因一覧表との二元表を作成するのか,三次項目で二元表を作成するのかを決定します.
3)演習では一次項目か二次項目で二元表を作成することにします.
Step2.品質特性展開表の転記
1)品質表シートを用意します.
2)品質表シートの横軸(品質表シート上方)の欄に,決められた次数の品質特性展開表を転記します.
Step3.工程要因一覧表の転記
1)品質表シートの縦軸(品質表シート左側)の欄に,工程要因一覧表を転記します.
Step1.記入方法の確認
1)対応関係の付け方について,リーダーを中心に検討します.
2)対応関係の強さを3段階で付けるのか,5段階で付けるのかなどを話し合います.
3)演習では◎:対応が強い,○:対応がある,△:対応を考慮する必要があるの3段階とします.
4)対応関係付けの方向としては,品質特性の狙い値である設計品質を制御するための工程要因があるか,工程要因によってどの品質特性が影響を受けるかという二方向で考えます.
Step2.対応関係の記入
1)定規を用意します.
2)品質特性から考えて,制御可能と考えられる工程要因を探し出します.
3)品質特性にどの程度影響するのかを考慮して,◎○△の記号を升の中に記入します.
Step1.対応関係の集中度によるチェック
1)対応関係の◎○△の記号が集中している工程要因を探し出します.
2)その工程要因の表現について抽象のレベルが高すぎないかを,他の工程要因表現と比較し,必要があれば訂正します.
3)対応関係の◎○△の記号が同じ所に付いている工程要因がないかをチェックします.
4)同様に,品質特性についても対応関係の集中度,抽象のレベル,他の品質特性との関係をチェックします.
Step2.重要工程要因と重要品質特性のチェック
1)二元表の全体を見渡して,重要と考えられる工程要因をチェックします.
2)重要工程要因に対する品質特性が存在するかをチェックします.
3)同様に品質特性からも工程要因をチェックします.
4)工程要因や品質特性が不足している場合は,それぞれ追加します.
設計品質の確認は,次のステップで行います.
6―1
設計品質設定表の整備(50分)6―2
設計品質の確認(20分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.重要品質特性の確認
1)品質特性の中で特に重要な品質特性が明確であるのかを確認します.
2)特に重要な品質特性が特定できない場合には,要求品質展開表から重要度を変換して重要品質特性を特定します.
Step2.自社・他社状況の把握
1)特定した重要品質特性について,自社の特性値と他社の特性値を調査します.
2)実際には他社製品を購入・分解して特性値を測定しますが,演習の場合には推定値で代用することにします.
3)特性値は計測可能ですが,その公差までは測定できない場合が多いのです.しかし,公差が問題になる場合には公差を推定する必要があります.
Step1.設計品質の設定
1)重要品質特性について自社・他社の状況から設計品質を設定します.
2)設計品質とは狙いの品質であり,他社と自社の比較からの設定が必要です.
Step2.設計品質の確認
1)設定した設計品質で要求品質を満たすことができるかを確認します.
2)設計品質確保の必要性についてもコスト面,生産性面から検討します.
3)重要品質特性を制御するために必要な工程要因が抽出されているかチェックします.
【ポイント】
1)設計品質設定表の自社・他社比較については,他社の製品を購入して分解し,特性値を計測することが必要です.
2)設計品質を設定する際に,製造工程での工程能力などの情報も入手して考慮します.
重要工程の抽出は,次のステップで行います.
7―1
重要工程の確認(20分)7―2
重要工程要因の確認(20分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.二元表からの重要工程の抽出
1)工程要因*品質特性展開表を用意します.
2)工程要因*品質特性展開表の作成時にチェックした重要工程を一覧表にします.
3)書き出された重要工程の中でも特に重要と考えられる工程を確認します.
Step2.重要品質特性からの重要工程の抽出
1)抽出した重要品質特性と対応関係がある工程を抽出します.
2)重要品質特性が抽出された工程で作り込まれるかを確認します.
3)設計品質を確保する上で重要な工程を抽出します.
4)重要品質特性を作り込むために重要と考えられる工程は他にないのか再度確認します.
Step1.重要工程の確認
1)工程要因*品質特性展開表から抽出された重要工程と重要品質特性から抽出された重要工程が一致しているか,違いがあれば何故かの理由を検討します.
2)二元表全体を眺めて重要工程に対する工程要因が抽出されているか確認します.
Step2.重要工程要因の確認
1)重要工程における工程要因が制御可能要因であるか確認します.
2)対象品の設計品質に関連する重要品質特性を管理する工程における品質特性と管理項目を整理します.
【ポイント】
1)工程要因の確認は製造現場で実施します.
2)品質特性と工程要因との対応関係付けも,できれば現場で工程をみながら確認します.
3)工程要因の管理方法についても現場の作業者に実態を聞いて調査します.
QC工程表の作成は,次のステップで行います.
8―1
製造工程の確認(20分)8―2
製造工程制御要因の確認(20分)8―3
QC工程表の作成(50分)以下,各ステップの作業手順を説明します.
Step1.基軸の確認
1)どの素材もしくは部品を基軸に製造されるかを確認します.
2)基軸となる素材もしくは部品に対してどのような順序で製造されるかを確認します.
Step2.治工具・設備・計測器の確認
1)製造作業に必要な治工具や設備,計測器を確認します.
2)生産に用いられる設備や治工具,検査に用いられる計測器をチェックし,製造工程で重要品質特性を確保する手段が存在するか確認します.
Step3.詳細工程分析表の確認
1)作成した詳細工程分析表通りに生産されているか確認します.
2)詳細工程分析表の生産時の設備や組立手順,検査時の測定機器や測定方法などを具体的にチェックし,運搬に使用する機器や停滞時の荷姿も確認します.
Step1.管理特性の確認
1)製造工程中で管理すべき結果系の品質特性を確認します.
2)この品質特性は品質特性展開表に記述されている特性と製造工程を確認した時に新たに追加された特性です.
3)抽出された品質特性が結果系の特性かをチェックします.
4)最終工程まで生産が進んでしまうと最終的に計測できない特性があるかチェックします.
Step2.製造工程制御要因の確認
1)製造工程の作業者が生産時に制御可能な要因系の管理項目(工程要因)を確認します.
2)抽出されている工程要因は確実に制御可能要因であるのか確認します.
3)この管理項目は製造工程において品質特性を確保するために制御可能な項目です.
4)品質特性を制御するために必要な要因が不足している場合には追加します.
Step1.詳細工程分析表の転記
1)QC工程表シートを用意します.
2)QC工程表シートの工程欄に詳細工程分析表の初めの工程記号と工程番号を転記します.
3)第2工程以降の工程記号と工程番号は,品質特性と管理項目についての転記が終了してから順次転記します.
Step2.品質特性の転記
1)転記した工程において管理すべき品質特性を記入します.
2)記入した品質特性を誰が何時,どのように管理するのかを考えて,管理方法欄に管理する方法を記入します.
3)関連する標準類や特記事項があれば,それぞれ必要な欄に記入します.
Step3.管理項目の転記
1)品質特性を転記した同一工程において管理すべき管理項目を転記します.
2)記入した管理項目を誰が何時,どのように管理するのかを考えて,管理方法欄に管理する方法を記入します.
3)管理項目を制御することによって,品質特性がコントロールできるかをチェックします.
Step4.QC工程表のチェック
1)すべての工程について,工程記号の転記,品質特性の転記,管理項目の転記を行います.
2)作成したQC工程表について,各工程における管理項目と品質特性の因果関係が明らかであるかチェックします.
【ポイント】
1)QC工程表は詳細工程分析表が基本であり,詳細工程分析表に品質管理上で必要な項目を追加したものです.
2)QC工程表には,各工程における結果としての品質特性と,その品質特性を制御するための原因としての管理項目を対にして記述します.
3)QC工程表は,設計段階において設計者が作成することが必要です.
4)どのように製造するかを思い浮かべてQC工程表を作成します.
5)製造工程内でしか測定できない品質特性に注意します.
6)品質特性は抽出されやすいのですが,原因系の管理項目が抽出しにくいのです.ドライバーの締め付けトルク値などは原因系の管理項目となります.
【注】
この演習を行う際に使用します各種の演習用シートは,日本規格協会から出版されている「QFDガイドブック」に添付されています.さらに,この「QFDガイドブック」にはQFDの支援ソフトがCD−ROM版でついており,図表入りで詳細な説明がしてあります.