

私の研究室では、脳で行われる記憶のメカニズムを解明しています。記憶を感知するのは脳内にある「海馬」という部位で、興奮性ニューロン(神経細胞)と抑制性ニューロンが情報処理に関与しています。物を見た時、目から入った光は脳内ですぐ電気に変わり神経回路を刺激することによって記憶として残るのです(人間の脳には常に100mVの電気が流れています)。神経回路は「経験」を通じて構造を変えていきますが、それが脳の学習能力の基礎となるメカニズム。こういったことを、様々な理論や実験を通して解き明かしていきます。

自分の手がけた研究がさまざまな分野、さまざまな形で実用化されるのが、工学を専攻する者の喜びといえるでしょう。「人間の脳の学習・記憶システム」の研究も、“学習する”エアコンやIHジャー、知能ゲームなどに生かされています。将来はさらに研究を進展させて教育や福祉の分野にも役立てたいですね。

コンピュータに比べてはるかに学習能力が高い人間の脳の優れたメカニズムを解明したかったからです。例えばリンゴの場合、「赤い」「丸い」「甘い」という情報がそれぞれ別の神経細胞にインプットされますが、細胞が結合することによって「リンゴは赤くて丸くて甘い」という記憶が作られるのです。大学で学んだ「生体情報工学」で人間を科学する面白さを知り、この分野に進んだのですが、研究を重ねる度に脳の記憶システムの“凄さ”を実感します。

