館シリーズ
綾辻行人
十角館の殺人
水車館の殺人
迷路館の殺人
人形館の殺人
時計館の殺人
黒猫館の殺人
|
『十角館の殺人』
K**大学推理小説研究会のメンバー7人が、合宿のために大分県・角島を訪れた。この島は、建築家・中村青司が殺害され、その死体とともに燃やされた「青屋敷」があった場所である。
さらに角島には、青司が建てた奇妙な館「十角館」があった。7人はそこで寝泊まりをし、推理小説を書く予定だった。ところが、外部からは隔絶されているはずのその島で、クリスティの『そして誰もいなくなった』さながら、
メンバーが一人一人殺されていくのだった。
見事に意表を突かれ、
妙にすがすがしい読後感なのだ。これぞ新本格、という一品でした。
『水車館の殺人』
幻視者と呼ばれた天才画家・藤沼一成が、中村青司に建てさせた館「水車館」。一成の息子であり、その館の主人でもある藤沼紀一は、
不慮の事故により、車椅子の生活を強いられ、同時に顔に大けがを負ったため、絶えずマスクを付けて生活を送っていた。人嫌いになってしまった彼だが、1年に1度、
一成の絵を見せるために、4人の人物を呼んでいた。ところがそこには、惨劇が待ちかまえていた。
『迷路館の殺人』
推理作家・宮垣葉太郎の住む「迷路館」に、4人の推理作家が招待された。ところが、彼らが訪れたてみると、葉太郎は奇妙な遺言を残し、すでに自殺していた。
その遺言とは、「迷路館」を舞台にして、もっとも優秀な推理小説を書いたものに、自分の遺産の半分を譲る、というものだった。やがて、推理小説家の1人が、
創作途中の推理小説と同じ手口で、殺害されてしまう。
作中作の形式を取っている本作品だが、その作中作が、かなり凝った作りになっている。一瞬、乱丁かと思ってしまうほどだ。僕としては、『十角館の殺人』よりも
こちらの方が好みだ。中村青司の趣味が十分すぎるほど発揮されてるし、一度ならず、二度三度とダマされるし。それにしても、こういう「館もの」は、方向音痴の人には、
絶対書けないだろう。
『人形館の殺人』
私こと飛龍想一は、画家で彫刻家だった父が住んでいた京都の「人形館」に引っ越してきた。引っ越して間もなく、近所で、子供を狙った殺人事件が相次ぐ。
さらに、彼自身の身にも、差出人不明の脅迫状が届いたり、危険が迫ってきていた。
「館」シリーズの中でも異色の存在の第4作目である。『十角館の殺人』から続くシリーズを読んでから、本作を読むのをお薦めする。お薦めというより
強制といった方がよいかも。そうしないと、この『人形館の殺人』のよさは、絶対わからないだろうから。賛否両論わかれそうなミステリーだが、僕は、
かなり型破りだけれど、こういうのもシリーズのスパイスとしては、良いのではないかと思う。
『時計館の殺人』
鎌倉の山奥に建つ「時計館」。そこには、若くして死んだ少女の霊が出没するという噂があった。その噂を検証すべく、某雑誌の編集者・霊能力者・W**大学超常現象研究会の学生などが、
「時計館・旧館」に立てこもり、降霊会を行った。ところがその夜、霊能力者が、血痕だけを残し、跡形もなく消えていた。その後、立てこもっているメンバーが、何者かによって次々と殺害されていく。
「迷路館」のカラクリも凄かったが、この「時計館」のそれは、さらに上をいく凄さだ。よくぞこんな破天荒な建物が思いついたものだ、と感心する。
『黒猫館の殺人』
推理作家・鹿谷門実のもとに、ある老人から依頼が舞い込んだ。その老人は、火災にあって、記憶をなくしてしまった。そこで、
鹿谷に、自分が何ものなのか調べて欲しいというのである。手がかりは、火災に遭い、大怪我しながらも、大事に抱えていた
「手記」だけだった。その「手記」には、あの中村青司が建てたといわれている「黒猫館」で起こったある事件の顛末が書かれていた。終盤に衝撃のドンデン返しがある類のミステリである。
|