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特色GPシンポジウム
「一年次教育の展開-高等教育における新たな伝統の確立をめざして」 開催報告

テーマ 一年次教育の展開−高等教育における新たな伝統の確立をめざして
開催日 2008(平成20)年1月25日(金)
出席者数

113名(内、大学関係者111名、企業2名)

場所 東京ステーションコンファレンス503
主催 玉川大学コア・FYE教育センター

内容

【基調講演】
「初年次教育の新たな展開−学士課程教育改革の視点から」
国立教育政策研究所高等教育研究部 総括研究官 川島啓二

【報告】
「玉川大学における一年次教育の展開−一年次教育とFDの連動」
玉川大学コア・FYE教育センター センター長 菊池重雄

【事例報告】
1) 全身を使って考える−慶應義塾大学教養研究センターの導入教育と『身体知』
慶應義塾大学教養研究センター 所長 横山千晶

2) 初年次教育の教育目標と授業方法−法政大学文学部心理学科モデル授業公開について
法政大学FD推進センター 学習・教育支援プロジェクト・リーダー
 文学部心理学科 准教授 藤田哲也

3) キャリア教育と一年次教育
武蔵野大学 キャリア開発部長 河津優司

【総括】
国立教育政策研究所高等研究部 総括研究官 川島啓二

開催報告

昨年度は「一年次教育の展望」というテーマにてシンポジウムを行いましたが、今年度は「展望」に続き、「一年次教育の展開」というテーマを設定いたしました。

まず、基調講演として、国立教育政策研究所の総括研究官の川島先生に「初年次教育の新たな展開−学士課程教育改革の視点から」というテーマでお話いただきました。平成19年9月に出された中央教育審議会大学分科会制度・教育部会 学士課程教育の在り方に関する小委員会の審議経過報告「学士課程教育の再構築に向けて」を受け、学士課程教育における初年次教育の位置づけについて、また、研究所が行った各大学のアンケート調査の結果から、一(初)年次教育についてのお話をいただきました。

続いて、玉川大学コア・FYE教育センター長 菊池より、本学の一年次教育の展開について報告いたしました。本学で一年次教育科目「一年次セミナー101/102」を開設してから今年度で3年目となりますが、毎学期末に授業評価アンケートを行っています。その結果の分析から、予習・復習の実施率と授業の理解度とは密接な関係があることがわかりました。つまり、予習・復習をしている学生は授業の理解度が高くなるということです。これは単位の実質化にも繋がることです。さらに、学生が予習・復習をするかどうかは、担当教員の基本姿勢にもよっています。このことから、一年次教育の成功はFDと連動するとみることができ、一年次教育における体系的なカリキュラムの実現、単位の実質化、厳格な成績評価から、広く教員のFD意識を喚起できるものと考えています。

休憩を挟んで、後半は慶應義塾大学、法政大学、武蔵野大学の事例報告を行いました。慶應義塾大学では教養研究センターが中心となり、導入教育として「アカデミック・スキルズI・II・III・IV」だけでなく、「生命の教養学」を開講しています。さらに、教養研究センター長の横山先生によれば、どうやって異なった価値観と折り合いをつけるか、他者や他の意見とつながることでどのように解決に向かうか、といった学生の抱える問題を特定し、その解決法として「全身を使って考える」ことが必要だとしています。そのことから、「心体知」を使った実験授業を行い、成果を挙げています。

法政大学の報告は、文学部心理学科科目「基礎ゼミ」のなかで藤田先生が行っている授業の報告でした。ここでの取り組みは学科科目の中での展開ではありますが単なる専門導入ではなく、専門科目の中で初年次教育を行っているという点が注目できます。藤田先生によれば、ここでの目標は「教える」のではなく「学ばせる」こと、大学生として学ぶための学習スキルだけでなく動機付けであること、また、気づきの顕在化にあると述べられました。そこで、藤田先生が実際に行っている授業の一例を紹介され、その中で学生が、いかに自分が分かっているはずのことがわかっていないかを気づかせるかを示されました。

武蔵野大学ではキャリア教育を授業の中に組み入れた取り組みをされています。平成15年度には「キャリア開発プロジェクト」で特色GPに選定され、さらに今年度は「専任教員によるキャリア教育の実践」で現代GPをとられたように、武蔵野大学ではキャリア教育を大変に重視され、きめ細かい指導をしています。1年次からキャリア教育科目を履修させ(一部、必修)、また、資格取得に対しても対策講座や奨励金制度を設けるなど、積極的に奨励されています。キャリア教育と一(初)年次教育はそれぞれ独立した取り組みであるように思われますが、それぞれの目標は重なるところが多く、キャリア教育と一(初)年次教育は密接な関係があることがわかりました。

シンポジウムの成果
平成19年9月の中教審審議報告「学士課程教育の再構築に向けて」において、新しい学士課程教育に向けた改革の具体的な方策の一つとして、一(初)年次教育が取り上げられました。国立大学法人大学の取り組みは別として、これまで公の機関で一(初)年次教育が論じられたことはあまりなかったので、今回の審議報告で一(初)年次教育についての記述がなされたことは、大変に意味のあることだと思います。そういった流れの中で今回、学士課程教育の中の一(初)年次教育を基調講演の中でお話いただきましたことは、参加者の皆様に一つの考え方を投げかけられたのではないかと考えています。
また、本学を含め4つの大学での一(初)年次教育活動の報告がなされました。一(初)年次教育に限らず、大学の教育諸活動は大学によってその内容やスタイルは異なります。それは、すべての教育活動はそれぞれの大学の建学の理念や背景、現在の大学の状況によってなされるものであり、目標が同じであっても目標に達するための道が異なるためです。慶應義塾大学、法政大学、武蔵野大学、玉川大学の取り組みは一様ではありませんが、高校生を大学生にする、大学で学ぶに足る力を養成するという目標は同じです。それぞれの大学の取り組みの中から参加者の皆さんの大学にあっていると思われる取り組みに注目されることも、また、それぞれの取り組みを参考に新たな取り組みを構築されることも可能です。参加者の皆さんの大学に相応しい取り組みに行き着くための一助となればと思います。

今後への反映
今回のシンポジウムで、学士課程教育における一(初)年次教育の位置づけについての考え方の一つが示されました。このことをふまえ、本学では、体系的なカリキュラムの実現、単位の実質化、厳格な成績評価など、玉川大学の学位授与の方針をふまえた一年次教育のカリキュラム編成と実施の方針を遂行していきたいと思っています。そのためにはFDとの連動は不可欠です。一年次教育へのかかわりをベースにした教員のFD意識の喚起になればと考えます。
また、一つの大学でできる取り組みには限りがあります。しかし、他大学で行われている取り組みにも自大学にとってのヒントはたくさんあります。そのことから、一(初)年次教育の情報をより多くの大学が共有し、活用できる場があることが望ましいと考えます。こういった場を本学が提供する、または場の構築の手助けができれば、大変に嬉しいことです。

なお、詳細につきましては、近日中にビデオを公開する予定です。