ミツバチの生産物
*ミツバチは植物から,花蜜(主に糖質)と花粉(糖質以外の栄養素)を餌として,
プロポリスを巣材として集めています(生産物の由来を示しました)
生産物名

特徴や効能
ハチミツ
ミツバチが花から花蜜を集めて巣に貯えたもの.酵素によって花蜜の主要糖分のショ糖が果糖とブドウ糖に分解され,また濃縮によって,水分が約20%になります.花の種類によって,ミネラルの含有量が異なり,一般にミネラル含有量の多いものほど色が濃くなり,味も濃厚になります.太古から甘味料として珍重されてきました.栄養食品や製菓原料,化粧品原料などに利用されます.
蜂ろう
ミツバチが体内で合成,分泌する,巣の主要な建築材料になるろう(ワックス)です.古くから,ろうけつ染めやろうづけ,ろう型など,工芸分野で用いられてきました.ろうそくを作ったり,化粧品のほか,離型剤として各種の製品製造に用いられます.
花粉
ミツバチが幼虫の餌として,あるいはローヤルゼリーの原料として花からだんご状にして集めてくる花粉を巣門で採集して,主に乾燥させたもので,健康食品として利用しています.
ローヤルゼリー
ミツバチが体内で合成,分泌する,女王蜂用の餌(ミルク)です.水分66%,糖質15%,タンパク質11%,脂質7%,ミネラル1%とバランスのよい,栄養価の高いものです.滋養強壮剤として用いられたり,健康食品として食用にされるほか,保湿効果成分として化粧品類に添加されています.
蜂の子
ここでいう蜂の子は,ミツバチにとって不要となる雄蜂の蛹です.いわゆる「蜂の子(本来はクロスズメバチの蛹)」の缶詰として加工されるほか,健康食品として粉末加工したものが市販されています.また乾燥して粉末化したもの(雄蜂児粉末)で,害虫を捕食する天敵昆虫(テントウムシやクサカゲロウ)を飼育することができます.
花粉媒介
ミツバチが花を訪れることによって作物の花粉の媒介が行われます.各国で果実や種子の生産のために,ミツバチを耕作地に導入しています.日本ではハウス栽培のイチゴやメロンなど,施設園芸でのミツバチの利用率が高い状況です.またミツバチがだんご状にして集めてきた花粉を洗浄して人の手で受粉させる技術も開発されています.
蜂毒
ミツバチの唯一の武器で,毒には,ヒスタミンなどのアミン類,メリチン,ホスホリパーゼなどの酵素,神経毒としてアパミンなどが含まれています.毒や毒の成分を薬品として利用します.また蜂の針や毒だけを集めたものを使った治療も行われます(蜂針療法または蜂毒療法といいます).
フェロモン
ミツバチの女王蜂フェロモンや働き蜂の集合フェロモンは,ミツバチの日々の生活には欠かせないコミュニケーションの道具です.合成したフェロモンを花粉交配の必要な果樹などに散布してミツバチを集中的に訪花させ,受粉効果増大させることができます.また,輸送中のミツバチを落ち着かせるために女王蜂のフェロモンが製品化されています.
プロポリス
植物が主に芽を保護するために分泌する滲出物をミツバチが集め,巣の補強材として巣枠や巣箱の隙間に充填するものを採集したものです.フラボノイドをはじめとする植物起源の天然物を多く含んでおり,抗菌性や抗酸化性などが注目されています.健康食品として利用します.
参考文献:松香.1996. ミツバチ生産物の特性と利用.研究ジャーナル19(5):20-25.