玉川学園小学部の鎌倉現地学習

ー新世代情報携帯端末を利用した学習実験の様子(H16.6.2)ー

玉川学園CHaT Netセンター  

-Deployment of Educational using the newest type Mobile Phones.-

   Computer networks have become commonplace in education today. Students from elementary school to college use computer networks in many ways. Mobile computing is especially useful to send and receive information at any time or place. At Tamagawa Gakuen, sixth grade students use a computer network and mobile computing system when they are studying the Kamakura Period in Social Studies class. Our sixth grade students take a day trip to Kamakura to visit places, which are related to Kamakura Shogunate. They take digital pictures and post them onto the bulletin board of our web page. Teachers from other grade levels, parents, and students from other schools are involved in discussing about students questions on the network. Students answer questions from other students on the network. Using a computer network for this project has proven to be very successful.
However, the laptop computers and system of mobile computing we use are quite difficult for students to operate. In addition, this has not been effective in regards to communicating at any time.
Thus we have introduced Mobile phones this year as tools of communication for the Kamakura project. We have provided the most modern Mobile phones, which can be used for video conferencing, and observed students using them. In this paper, we will explain how we have been conducting this project. We will also discuss the possibilities, advantages, and disadvantages of using Mobile phones for this project.


 コンピュータのネットワーク機能を利用した学習は大いに進化を遂げ、小学生から大学生までがその恩恵に浴しています。なかでもモバイルコンピューティングは「その場」「その時」の情報伝達に大きな力を発揮し、学習場面でも頻繁に利用されてきました。私たちは、玉川学園小学部の6年生が毎年行っている「鎌倉の現地学習」で、さらに携帯性、同時性、即時性に優れた情報携帯端末(FOMA)を利用した学習の方法を目指し、実験を行いました。


学習実験の概要

 児童・生徒は学習を進める課程で様々な情報を得ていきますが、当然のことながらその過程に疑問が生じます。疑問は学習を進める上で不可欠なものであり、疑問なしに「問題解決学習」は成立しません。言い換えるならば児童・生徒に学習上の疑問を持たせることは、教師の最も重要な役割と言えます。ところで「疑問」の様態は様々であり、思考を重ねていく課程の中で生じるものもあれば、今見たもの、聞いたこと、知ったことに対する即物的なものもあります。これを一次的疑問としましょう。それに対して前者はより深みを持った疑問として二次的疑問といえます。問題解決学習を進める上でより大切なのは二次的疑問であり、それによって児童・生徒のモチベーションを高めていくことに教師はエネルギーを注ぎます。しかし、現実に児童の多くは一次的疑問の段階で時間を費やすことが多く、時間的制約の中で本来の学習目標まで到達することが困難な場合もよく見られます。 

 そこで、私たちは現場で知りたいことはなるべく現場で、遅くとも数時間後には児童に届くような態勢を作ることができないかを考えました。
 児童・生徒の一次的疑問に応えるために、私たちはこれまで述べてきたように、もっとも先進的であるモバイルコンピュータを利用してきました。しかし、今日の通信テクノロジーはそのコンピュータをも不要とする進化を遂げようとしているです。


 新世代携帯電話として登場したFOMAにはホームページを閲覧する機能はもちろんのこと、一対一のテレビ電話システムや複数(最大8箇所)を同時に結びつけるテレビ会議システムの機能が組み込まれた、今日もっとも先進的な情報携帯端末といえます。FOMAは機種によって操作の手順が多少異なりますが、NTT DoCoMo社の統一規格によって以下のことが可能であり、私たちはまずこの機能がこれまで小学部生が行ってきた鎌倉での現地学習に活用できないかと考えました。

実験の結果 (利点について)

1.相手の顔をみながら会話ができるというメリットは大きい。周囲の状況もある程度分かるし、電話と言うよりその場での会話に近い感覚でやりとりができるからである。

2.相手側の状況を映しださせて、説明や指示・誘導ができるのもテレビ電話の大きなメリットである。

3.複数のグループ間で情報を交換する、話し合うことができるのもテレビ会議システムならではの便利な機能である。

4.地点ごとに見どころや、学習のヒントについての情報がホームページ機能を使って得られるのは効果的であった。

機器類ハード面での改良点について

1.スピーカの音量が小さく、屋外での使用に際して複数の人間に聞かせるのが困難であること。釈迦堂切り通しの場合は周囲が静寂であったためにかろうじて聞かせることができたが、他の地点ではイヤフォンマイクを使ってやり取りしなければならなかった。携帯電話という限られた制約があることは否めないが、複数で行う場合には必須の機能と考える。

2.陽光のさす屋外では液晶画面が暗く、複数の児童に見せることが困難であった。このような条件下であっても、画面の明るさやコントラストが対応できる機能が求められよう。

3.テレビ会議を行うための操作が煩雑である。メンバーの設定をのぞき、接続はワンボタン、ワンアクションで行えるような改良を望みたい。これは簡便な(機種によってはやや複雑な)テレビ電話がかなり頻繁に使われたことに比して、テレビ会議が一度しかできなかったことからも容易に想像できよう。

学習運用面での留意点について

児童たちに「なぜ?」という疑問をどのようにもたせるか。通り過ぎれば見過ごしてしまうようなものにも、学習を進める上で大切なものがあります。少し足を止めて着目させたり、疑問を持たせることは児童の学習に対するモチベーションを高めることに大変有効といえますですが、これを行うには社会科以外の教師にはやや困難ところもあります。今回のように学習の補助として携帯端末を使用するためには、以下の点に留意しました。

・各ポイント関する見どころや注目すべき点を引率教師に把握してもらう。方法としてはプリント、勉強会、その他の媒体による自己学習。学習当日に児童がその場で見ることができる、ストリーミング、および内蔵されている「ミニSDカード」によるポイントごとのコンテンツ充実を推進した。

・コース設定にあたっては余裕を持って観察をしたり情報を集める時間を増やす必要がある。児童・生徒の理解が深まればそれに比例して疑問の数も増える。当然その場で知りたい事柄も出てくるわけで、今回使用した情報携帯端末の利用価値も高まると予測される。

最後に

 学習場面で情報機器を上手に活用し効果を上げるためには、機器類の操作性や性能が大きく影響するのは言うまでもありませんが、使用者のスキルによっても大きく左右することは否めない事実です。すなわちそれは、情報の中身であり、質です。学習者(機器の使用者)が学習に対してのモチベーションをどこまで高めることができるか、意識付けや動機付けがどこまでできたか。教師の力量が問われる場面でもあります。
 我々はより簡便で効果の大きいシステムの構築を目指していきたいが、常にこのことを念頭に置きながら、人と機械のベストマッチングを追求していきたいと思っています。

多賀譲治(玉川学園CHaT Netセンター)・清水英典(玉川大学学術研究所) 渡瀬恵一/葛西宏志(玉川学園小学部) 

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