海を渡ったサムライの娘 杉本鉞子 |
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多田建次(玉川大学教授)著
四六判並製・200頁
定価 |
:1,995円(税込) |
発行年月 |
:2003年6月 |
ISBN |
:ISBN4-472-30274-8 C0023 |
ジャンル |
:伝記 |
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激動の明治維新期に越後の家老の家に生まれ、厳格な躾を受けて育った杉本鉞子は、文明開化の東京、アメリカで異文化と出会い、英文の自伝『武士の娘』を著し、日米文化交流の懸け橋の役割を果たした。武士の娘としてのモラルに照らして行動した鉞子の人間像を、『福翁自伝』の福沢諭吉と対比しながら浮かび上がらせる。 |
主な目次
序章 自伝と自伝的作品とのあいだ
『福翁自伝』の緻密な記述/榎本武揚の助命哀願書/諭吉の率直な自己表白/フィクションかノンフィクションか/鉞子から武士の娘へ/歴史そのまま・歴史離れ
第一章 鉞子のルーツ-長岡と米百俵-
長岡藩の二つの顔/北越戦争と敗戦後の窮乏/病翁小林虎三郎/復興のリーダー三島億二郎/諭吉と億二郎の交際/学校づくり・人づくり・国づくり/育英団体長岡社と遊学生/長岡書生の“痩我慢”
第二章 鉞子の生涯-越の国-
北越戦争と父の苦悩/稲垣家の人々/盂蘭盆/漢籍の素読と寒稽古/晩学の諭吉と早熟の白石/武士の躾と「きの字」の教え/平塚雷鳥と『青鞜』/女性の地位への疑問/鉞子と津田梅子の結婚観/花嫁修業
第三章 鉞子の生涯-外つ国へ-
文明開化の東京へ/ウィルソン家の人々と結婚式/花野・千代野/矢島楫子の日本キリスト教婦人矯風会/異郷の花/梅の花と桜の花/ニューヨークでの文筆生活/コロンビア大学講師誕生/武士の娘の死/鉞子のモラル・バックボーン
第四章 異文化との出会い
文明開化の窓/ミッション・スクール入学/自由と個人の権威/『菊と刀』/嬉々として新しい世界へ/サンフランシスコでの驚き/シンシナティでの学習の日々/徳川社会のメカニズム/中津の『旧藩情』/中津の蘭学の伝統/諭吉の異文化体験/欧米視察と驚嘆の洗礼/武士道の金銭観/「福沢氏古銭配分之記」/清貧の否定
第五章 異文化への対応
異文化接触とアイデンティティ/鉞子の矜持/大乗的な視座/異文化への戸惑いと驚き/現地体験の意義/異文化の探究/視座の転換/日米両文化の長所・短所/複眼の人諭吉/共通性の発見/人間の交際と交通/無議の習慣と多事争論/よき世界市民/鉞子のプレゼント
終章 “二重国籍者”鉞子の視座
マージナル・マン/鉞子の日米両国への愛情/サラダ鉢の国アメリカ/ジャポニズムと黄禍論/国際人新渡戸稲造/アメリカ社会での鉞子の位置/鉞子の階級意識/異文化への道しるべ/仲介人の役割/外国文化研究者の陥穽/鉞子と諭吉の立場 |
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