宗教画からその時代が見える?

 

高校生からの質問

Aさん:

中学部の礼拝の時間にT先生が宗教画について説明してくださったことがあり、印象に残っているのですが、絵も言葉と同じくらいに正確な意味を持っている場合が多いのですね。美術館の宗教画の部屋に入ると絵の圧迫感と雰囲気だけでもなんとなく不気味な感じがすることが多く、ルーブル美術館に行ったときなど専門の美術ガイドさんの説明なしにはとどまって絵を見ていられなかったくらいですが、原因は色合いや技法だけでなく、それだけ意味がこめられているからですね、きっと。

 

宗教画にはそれ自体が絵だけでなく重要なメッセージがたくさん盛り込まれていたものだと思います。だから、時代を超えて「現在の私達」が見ても厳粛な気持ちになれるのだと思います。 私は、ヨローロッパの歴史では中世からルネッサンスにかけての時代が大好きです。それは、イコンなどに描かれた宗教画からもわかるように神に思いっきり目を向けていた中世は、人間にはわからない領域については魔物や悪魔も存在していると考えられていました。それに対してルネッサンス時代は、「神」から「人間」に目をむけられるようになり、わからないものについては「知りたい」という欲求が出始め、科学的な視点が育っていく時代と理解しています。なぜ、中世からルネッサンスが好きかというと、その同じつながった時間(はっきりいって現在まで時間はつながっているけど)を通して、人間の意識が大きく変化している様子が見え(絵画や書物なからも伺えます)、時代の移り変わり、人間の意識が変化する過程がすごく面白く見えるからです。

もし、興味があったら「阿部謹也」という歴史学者の本をお薦めします。歴史の裏話や中世に生きた人の精神の変化などについても書いてあって、これまでの歴史観が変わるかもしれませんよ。歴史といったって、それを動かしているのは人間ですから、たくさんのドラマがあって面白いですよ。