On-line授業---英語と異文化理解(国際理解)の接点

明治図書出版「総合的な学習を創る」12月号

 

玉川学園全人教育研究所
大谷千恵

私が実践する英語授業におけるOn-line授業は、「人、人との関わり」に重点を置き、生徒の興味・関心を喚起することを目的としている。その目指す方向は、「異なる文化や価値観を持った人々との共生」である。それは、異文化理解(国際理解)を目標の1つとする英語だけでなく、「総合的学習」にも通じる。

このOn-line授業は、ホームページ上に用意した9つのメニューで構成されている。@On-line授業の基本的な考え方、A授業シラバス、B授業スケジュール、C実際に行ったOn-line授業例、D学習に役立つ資料、E相互にコミュニケーションできる掲示板、F海外とのメッセージ交換、G私が担当する帰国生クラスへのリンク、H生徒からのQ&Aと私へのE-mailリンク、である。

生徒は定期的にこのホームページを利用し、その授業の焦点となっている内容を学習する。上記のメニューは、授業以外の時間にも生徒がいつでも楽しく学習できるように作成している。授業で利用する場合は、授業のテーマにあった情報を精選し、生徒の学習が散漫にならないようにする。そして、単なるE-mail交換や海外のホームページへのアクセスにとどまらず、一過性になりがちな発表やスピーチにも焦点をあて、生徒同士が互いに学びあうことも大切にしている。

利点は、@コンピュータを通した異文化体験、Aコミュニケーションの具体的な体験、B英語が「世界につながる」という実感が得られることである。それは、異文化に対して無関心な生徒の興味・関心を喚起したり、異文化に対する認識をより深めていく機会を継続的に提供する。海外からのコメントは、生徒が教師以外の評価や関わりを得る機会をつくり、生徒の興味・関心は「英語」という枠を超えていく。素朴な疑問が思考を促し、生徒は「自分対他者」 を

意識し、「学習は教室の中だけではない!」と気づき始める。その結果、生徒の「英語」や「異文化」に対するイメージは友好的・肯定的なものに変化し、学習動機も高まっていく。

更に、On-line授業の実践に伴い、"web portfolio" という新しい形の学習記録が可能となる。生徒がどのような題材で、どのような学習に取り組み、どのような作品をつくったのかをホームページ上に残すことは、生徒の学習過程そのものの記録となる。同時に、それは教師の指導の過程やカリキュラムの記録と公開につながる。

必要なのは、教師のアイディアとエネルギー、そして教材研究をする時間である。