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私が農学部の学生だったころ

今も玉川のキャンパスは緑豊かで、クワガタやカブトムシをはじめ多くの動植物がいますが、私が学生だった40年前にはまだ、春にはコツバメが、夏にはミドリシジミやオオムラサキがよくみられました。3年生から昆虫学研究室に入れてもらったのですが、植物も好きだった私は「ハギの花とハナバチの訪花・受粉行動を卒論にしたい」と、教授に申し出ました。ところが、今では動物行動学は立派な専門分野となっていますが、当時の教授は「行動はサイエンスの対象ではない」として、反対されました。代わりに頂いたテーマが、ローヤルゼリーを食べたミツバチがどうして女王蜂になるのか?でした。その後大学院次代には蛾の寄主植物選択や体内時計の研究をしていましたが、玉川に戻ってからはまた、ずっとミツバチを中心とした研究をしています。
この30年間に、多くの学生さんたちといろいろな不思議の解明にチャレンジしてきましたが、私はいつも、研究室の中だけの分析ではなく、実際の自然の中での虫たちの生態や行動を忘れないように心がけています。最近の研究でいえば、マルハナバチを一日中明るい所に置いておくと、何日間でも眠らずに動き続けるのが、極地の白夜への適応と関係があるのではないかと考え、実際に学生さんと一緒にノルウェーの北極圏に行き、それを確かめてきた仕事がありあす。また日本の高山帯にしか棲息しない蛾が、蛾のくせに昼間、お花畑の花に来ているのが不思議で、これも5年間、蔵王のハイマツ帯をフィールドに野外と室内の調査・解析を経て、ほぼ全貌を解明することができました。
最近の学生さんたちは、言われたことはよくやるのですが、自分で面白い現象を見つけたり、その解明のために自身で実験や観察のやり方を考えるといったことが苦手です。すぐに教科書やインターネットで調べるのではなく、自分の感や経験から、きっとこうではないのか?といった発想ができるようになって欲しいと願っています。
佐々木正己

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