※2025年度卒業の生態系科学領域の卒業生による研究紹介です(南 佳典 教授指導)
森林生態系において、倒木や立枯れ木、切り株などの枯死木は多様な生物の住み場所や食物資源として種多様性の維持に重要な役割を果たしているが、安全管理や林業経済の観点から立枯れ木は除去されることも少なくない。本研究では、北海道弟子屈農場屈斜路演習林内のトドマツ人工林および天然林における立枯木の自然倒伏や除去後に残った切り株の周辺環境と動物の利用状況を調査した。調査の結果、センサーカメラにはエゾジカが多く確認されたが、コドラート内に切り株を含む枯死木が多いエリアではエゾリスやエゾクロテンも複数回撮影された。また、エゾシカの採食回数に対して切り株上のトドマツ実生が多いプロットも見られた。これらのことから、切り株はトドマツの更新を促進し、様々な形態の枯死木や腐朽度の程度、密度などと複合的して周辺に生息する生物の多様性維持に貢献していると推察される。
天然林の切り株(左)と人工林の切り株(右)
PCA解析による座標付けおよび第一軸、第二軸、第三軸、環境要因と各対象株の要素との相関関係と春におけるエゾシカの採食行動回数(A-3、A-5はカメラ不具合によりデータなし)
研究に取組んだきっかけ、感想など
国外実習先のカナダで立枯木の重要性を学んだ一方、日本では安全面から伐採せざるを得ない現状を知り、「残された切り株が果たす役割」に疑問を抱いたことが本研究の出発点です。
北海道での調査は体力的にも過酷でしたが、仲間と手法の試行錯誤や討論を重ねた日々は。自身の大きな成長に繋がりました。また、一つの研究を責任持って遂行する過程で、内省を繰り返し自分自身と向き合った経験は何物にも代えがたい糧となりました。
