森本 俊 教授MORIMOTO Shun

Q & A
- 主な著書・論文は?
- 著書
- 『多文化共生時代の英語教育』(編著,株式会社いいずな書店)
- 『中学英語サポートBOOKS コア・イメージで英語感覚を磨く!基本語指導ガイド』(単著,明治図書出版)
- 『English in Tune-ストラテジーで学ぶ 4 技能融合型テキストー』(共著,ナショナルジオグラフィック/センゲージラーニング)
- 『English Echo – Advancing Listening Proficiency with Inspiring Topics』(共著,ナショナルジオグラフィック/センゲージラーニング)
- 森本俊・米田佐紀子(2023).「『教職実践演習(中・高)』における小中高を見通したリフレクションの可能性-深い省察を促すための方法論の開発と実践-」『言語教師研究』第10巻第1号, 1-20.
- Morimoto, S. (2016). A lexical network approach to the acquisition of English verbs of memory: The case of Japanese learners. Vocabulary Learning and Instruction, 5(1), 1-17.
- Morimoto, S.(2007). A comparison of the effects of image-schema-based instruction and translation-based instruction on the acquisition of L2 polysemous words. Language Teaching Research, 11(3), 347-372.
- 学外の活動は?
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- 文部科学省検定教科書 高等学校外国語科用 『New Rays English Communication』編集委員
- Challenge English英語スピーチコンテスト審査員
- 夏のチャレンジ全国小学生「未来」をつくるコンクール「英語スピーチ部門」審査員
- 担当授業は?
- 【学部】英語音声学、英語学習論、英語科指導法Ⅰ・Ⅲ、第二言語習得論、教育実習(事前指導)、教職実践演習(中・高)
【大学院】英語授業演習、認知意味論研究、英語教育研究
研究紹介
英語の「学び方」を考える
「先生、英語はどうやって勉強すればいいんですか?」
英語を学んでいると、誰もが一度はこう思うのではないでしょうか。この質問はとても素朴ですが、実は答えるのが簡単ではありません。なぜなら、「英語を勉強する」と言っても、その中にはさまざまな力が含まれているからです。
具体的には、「文法」や「語彙」「発音」「スピーキング」「リスニング」「リーディング」「ライティング」など、英語にはいくつもの側面があります。それぞれの力がどのようなもので、どのような学び方をすれば身につくのかを理解することが、英語の効果的な学習につながります。
たとえば「文法」を取り上げると、「文法力とは何か」「文法力を高めるために必要な学習とは何か」といった問いを考える必要があります。このようにして、「英語力」とはどのように構成されているのかを明らかにし、その力を身につけるためにどのような学習方法や教材、評価、アドバイスが有効なのかを探っています。
この研究では、英語の勉強に悩む多くの学習者にとって、「自分に合った学び方」を見つけるヒントを見つけることを目指しています。英語をもっと上手になりたい人にとって、学び方そのものを考えることは、とても大切なテーマなのです。
「自律した学習者」の育成
小学校3年生から高校3年生まで、日本の多くの生徒は約10年間、学校で英語の授業を受けます。10年というと長く感じるかもしれませんが、それぞれの学年での授業時間を合計すると、実は英語を十分に身につけるには限られた時間しかありません。
そのため、学校の授業だけで高度な英語力を身に付けるのは難しく、授業時間外の学習、つまり自分で学ぶ時間がとても大切になります。ここで注目されるのが、「自律した学習者(autonomous learner)」を育てる、という考え方です。
「自律した学習者」とは、自分の目標を自分で考え、学習計画を立てて実行し、振り返りながら学びを進めることができる人のことを指します。この力があると、先生に言われたことだけでなく、自分で工夫しながら学ぶことができるようになります。
もちろん、すべての生徒に同じ方法が合うわけではありません。「これをやれば英語ができるようになる」といった“正解”があるわけでもありません。だからこそ、英語の先生には、生徒一人ひとりが自分に合った学習法を見つけられるように支援し、必要なタイミングで適切なアドバイスをする力が求められます。
この研究では、「どうすれば生徒が自分の学びに責任を持ち、自ら進んで学習に取り組めるようになるのか」をテーマに、自律的な学びのあり方を探っています。英語を学び続ける力を育てることは、これからの時代にますます重要なテーマとなっています。
「第二言語習得論」から英語の学びを考える
私たちは、ふだん日本語を使って生活していますが、学校では英語のような「第二言語(母語以外の言語)」を学んでいます。では、人はどのようにして第二言語を身につけていくのでしょうか。この問いに答えようとするのが、「第二言語習得論(Second Language Acquisition: SLA)」という研究分野です。
私はこの分野で、「日本人がどのように英語の語彙を覚えていくのか」について研究をしています。特に、「認知意味論」(cognitive semantics)という考え方を使いながら、英語の基本的な単語や表現の意味の捉え方に注目しています。たとえば、takeやgetといった基本動詞、inやonなどの前置詞、さらにgive offやhold onのような句動詞(動詞+前置詞や副詞の組み合わせ)に注目し、それぞれの言葉に共通する“核”となる意味(コア・ミーニング)や、その意味をイメージでとらえる方法(コア・イメージ)が、語彙の理解にとってとても重要であることを明らかにしてきました。
最近では、高校卒業までに学ぶ英単語の数がこれまでより大きく増えました。こうした状況の中で、単に単語を暗記するだけでなく、「意味を深く理解しながら覚える」語彙学習の方法を、どのように授業の中に取り入れていけるかを考えています。英語の単語がなかなか覚えられない、使い方がわからない…そんな悩みにも応えることができる研究です。
最後に
これまで紹介した研究テーマに共通するのは、「英語教育を考えるときには、まず『どう教えるか(how to teach)』よりも、『どう学ぶか(how to learn)』を出発点にすべきだ」という考え方です。
英語の先生は、授業のやり方や教材の工夫など、「教え方」に意識が向きがちです。しかし、その一方で、生徒が「どうやって英語を学べばよいか」について、きちんと伝えられているでしょうか。たとえば、「先生、英語はどうやって勉強すればいいんですか?」という問いに対して、生徒の立場に立って、真剣に考え、答えようとしているでしょうか。
英語を学ぶ生徒たちは、それぞれに得意・不得意や学び方のスタイルが異なります。だからこそ、一人ひとりの学習者に合ったアドバイスやサポートができる先生の存在がとても大切です。
私はこれからも、生徒の「学び」に寄り添い、「自分に合った学び方」を見つける手助けができる英語教員の育成を目指して研究を続けていきたいと考えています。
ゼミガイド
理論と実践を架橋し、これからの英語教育を牽引する教員を目指します
- 英語教育
- 英語の学び方
- 自律的な学習者
- 英語教員養成
- 第二言語習得論
- 認知意味論
「先生、英語ってどうやって勉強すればいいんですか?」という問いに、本気で向き合うゼミです。
この問いに答えるには、「英語力って何だろう?」ということを深く考えたり、それを伸ばす授業をどう作るかを学んだりする必要があります。森本ゼミでは、英語教育学や第二言語習得論の専門文献を読みながら知識を深めたり、ミニ授業(マイクロ・ティーチング)やプロジェクトに挑戦したりして、学び方を探っていきます。
また、「どうすれば生徒が自分から学ぼうとするようになるのか」や「やる気を引き出すにはどうしたらいいか」といったテーマについても一緒に考えていきます。将来、生徒一人ひとりに寄り添える先生を目指したい人にぴったりのゼミです。
熱いディスカッションと、本気の50分模擬授業!

ゼミの醍醐味は、先生や仲間と一緒にアカデミックなテーマについてじっくり語り合う時間です。森本ゼミでは、授業で発表担当の学生がプレゼンを行い、司会の進行でみんなが意見を出し合うディスカッションを行います。ときには、教員が口を出すタイミングがないほど盛り上がることもあり、まさに「自分たちで学びを深める」貴重な時間です。
そして、森本ゼミの大きな特徴が「50分模擬授業」。これは、実際の学校と同じように50分間の授業を自分で考えて行うというものです。ゼミの仲間が生徒役になってくれて、授業後にはたくさんのフィードバックをもらえます。この経験を通して、自分の授業の良いところや改善点が見えてきて、「教える力」がぐんとレベルアップします。
将来、生徒の前に立って授業をする自分をイメージしながら、一歩ずつ成長していけるのが、このゼミの自慢です!
PICK UP
コスモス祭で英語学習相談室を開催!

毎年秋に行われる玉川大学の学園祭「コスモス祭」では、森本ゼミの活動紹介や、ゼミ生の研究成果を展示しています。でも、それだけではありません!
ゼミの学生たちは「英語学習相談室」も開いていて、英語の勉強に関する悩みや疑問に、やさしく・ていねいに相談に乗ってくれます。たとえば、「単語がなかなか覚えられない」「リスニングが苦手」といった悩みに、これまで学んだことを活かしてアドバイスをしてくれます。
これは、ゼミ生にとっても自分の学びを実際に使ってみる絶好のチャンス。多くの人からも、「すごく参考になった!」と好評です。英語を学ぶ楽しさや工夫を、来場者と一緒に分かち合える特別なイベントになっています!