鈴木 彩子 教授SUZUKI Ayako

Q & A
- 専門分野は?
- 国際共通語として用いられる英語(English as a Lingua Franca)、英語の多様性、英語とグローバリゼーション/ナショナリズム、語学教育における地球市民育成など。
- 主な著書・論文は?
- 著書
- 文部科学省検定教科書 高等学校外国語科用 『New Rays English Communication』編集委員
- Ishikawa, T., McBride, L. P., & Suzuki, A. (eds.) 2025 forthcoming. Developing English as a lingua franca programmes for language teaching: Innovation, resistance, and applications. De Gruyter.
- Suzuki, A. 2022. University students’ global citizenship development through long-term study abroad. Journal of English as a Lingua Franca 11/1: 77-88.
- Suzuki, A. 2021. Changing views of English through study abroad as teacher training. ELT Journal 75/4: 397-406.
- Suzuki, A. 2011. Introducing diversity of English into ELT: Student teachers' responses. ELT Journal 65/2: 145-153.
- 最近関心のある研究・教育分野は?
- 国際語として英語を活用する際に、どのような知識やコミュニケーションスキル、そして心的態度が必要か、また、それらを伸ばす英語教育とはどのようなものなのか、に焦点を当てて研究しています。また、英語教育と地球市民育成の関係を考察することにも近年は力を入れています。
- 担当授業は?
- Basic Academic English Skills A、Study Abroad Seminar A、Study Abroad Seminar B、社会言語学、グローバル・イングリッシュ論、英語圏の言語と文化、Academic English Skills
研究紹介
リンガフランカとしての英語
国際共通語としての英語とは何か
英語が話題になると、「英語は国際語だ」、「英語が話せれば世界中の人と通じ合える」などといったことをよく耳にするかもしれません。今、これを読んでいる人の中にも、英語に対するこのような見方を見聞きした人は多いのではないでしょうか。しかし、これらのような言葉が実際は何を意味しているのかについてじっくり考えたことがある人は、ほとんどいないかもしれません。「英語が世界中で使われているのは当たり前のことだから、考える必要はないよ」と思う人もいるでしょう。
しかし、これらの言葉をひとつひとつ紐解いていくと、私たちは国際語として使われている英語について、実は多くのことを知らないと気が付きます。例えば、どのような英語が国際語として使われているのでしょうか?アメリカ英語?イギリス英語?それともまた別のものでしょうか?また、どの程度の英語力があれば世界の人と話せると言えるのでしょうか?更には、英語という共通語があれば、私たちは誰とでも通じ合うことが出来るのでしょうか?このように、いくつもの疑問がこれらの短い言葉からでも出てくることが分かります。
ELF研究
このような疑問を出発点として、私は国際共通語としての英語、English as a Lingua Franca(ELF)についてずっと研究をしています。ELF研究は2000年初頭に少数の研究者が本格的始め、この20年をかけて大きく発展してきた比較的新しい言語研究分野です。ELF研究では、異なる母語を使う人々がどのように英語を共通語として用いてコミュニケーションを取っているのかを、様々な角度から検証しています。これまでの研究で分かってきたことは、英語をリンガフランカ(lingua franca, 共通語)として用いたコミュニケーションでは、いわゆる標準と言われるような英語とは異なるものが多く用いられているけれど、人々は言い換えなどの伝達方略を用いたり、ジェスチャーなどの視覚的情報を活用したりと、様々な工夫をして円滑なやり取りを構築している、ということです。そして、このような工夫を積極的に行えるようになるには、多様な英語が国際的な場面で用いられているという事実に対し十分な理解が必要であるということも、同時に分かってきています。
では、今後、社会に出て英語をリンガフランカとして用いてコミュニケーションをとることが予想される若い世代は、英語についてどのような理解を実際には持っているのでしょうか?また、ELF研究で重要とされる理解と、彼らの理解には何かギャップはあるでしょうか?あるとしたらどのような点が異なるのでしょうか?そして、ギャップを埋めるためには、どのような知識が必要となるのでしょうか?これらの事柄も、世界中の研究者により少しずつ明らかにされてきており、私自身も研究を通してこのような疑問について回答しようとしています。日本の学生へのインタビューやアンケートを通じて分かったこととしては、彼らは多くの場合、英語に対し比較的画一的な見方をしているということです。大学入学時には、英語にはアメリカ英語やイギリス英語といわれるもの以外にも様々な英語が存在していることを知っている人は殆どいません。学校でいわゆる「標準英語」のみに触れてきたため、多様な英語について知る機会がなく、そのため、彼らの中で標準英語が「唯一の正しい英語」となってしまっていることがあります。その結果として、自分自身の英語に自信が持てなかったり、耳慣れない英語に対し否定的な感情を持ったりすることも珍しくありません。
リンガフランカとしての英語と英語教育
近年、少しずつですが、英語へのより柔軟な見方を学生にもたらすために、英語教育の中にリンガフランカとして使われる多様な英語を取り入れて行こうという動きが出てきています。例えば、英語の授業中に様々な英語話者が話す英語を聞くリスニング活動を導入したり、いわゆる非母語話者同士の英語での会話で使われている伝達方略を紹介したりと、多様な工夫が行われ始めています。2022年度現在、私が副センター長を務めている玉川大学のELFプログラムはそのような英語教育を提供する先駆的なプログラムのひとつです。
英語授業で教員が様々な工夫を進めるためには、英語教員養成にも変化が求められています。これが私が現在、最も力を入れている研究です。どのような知識や経験があれば、教員が自分たちの授業にリンガフランカとしての英語の要素を組み込むことが出来るのか、自分自身の授業実践も含め日々研究を重ね、英語を通じ他者と上手く関わっていく能力を育てることができる教員養成の構築に貢献したいと考えています。
英語を使って国際コミュニケーションを取る場面は、今後しばらくの間は広がっていくと考えられています。国際共通語としての英語を検証することは、次の時代をより良くするためのひとつの研究領域だと言えるでしょう。
ゼミガイド
国際共通語としての英語(English as a Lingua Franca, ELF)とは何か
- ELF
- 多様性
多様な人々の間で共通語として使われている英語にはどのような特徴があるのかを研究しています。
- 英語は国際語だとよく言われますが、それが本当に意味することは何でしょうか?多様な他者とのコミュニケーションに用いられる英語にはどのような特徴があるのでしょうか?また、共通語として英語を活用するにはどのような知識や姿勢が大切でしょうか?これらの疑問にフィールドワークを通じて回答していきます。
フィールドワークで「生の声」を聞く。

ゼミの最大の特徴は、インタビュー調査やアンケート調査などのフィールドワークを通して「生の声」を聞く活動です。他者の声に耳を傾け、「どうして?」を深く考えていくことで、国際語と言われる英語を新たな視点から見つめることができます。
PICK UP
多様な国際共通語としての英語?英語って1つじゃないの?

英語教育学科では留学は必修。留学先の教室は多国籍。学生は色々な人が話す「違う英語」に触れてきます。これも「国際語共通語としての英語」を考える大事な材料です!