
未来へ、挑戦する
木を循環する Case 2
農学部の友常満利准教授が提唱する、CO₂排出量ゼロの先を行く、「マイナスカーボン」に関する世界初の実証実験に取り組んでいます。1000年単位でCO₂を留められる炭の性質に着目し、木材を炭化させることで炭素隔離を行い、炭素吸収量の増加を目指しています。
マイナスカーボンを目指す、
世界初の実証実験
キャンパスには約250種の樹木が生い茂っています。この広大な敷地内で発生する倒木や落枝、間伐材などの廃材を捨てずに活用し、バイオチャー(バイオ炭)にしています。これらの廃材はまずチップ状に細かく砕き、その後炭化器で蒸し焼きにすることでバイオチャーになります。現在、コナラやスギを使ったバイオチャーをキャンパス内の森林や農場に散布する実験を行っています。
植物は光合成を通じて大気中のCO₂を吸収しますが、一方で、落葉や落枝などの有機物が地面に蓄積すると、微生物による分解過程で大量のCO₂を放出します。これらの有機物を熱分解し、分解しにくい炭に変えることで、炭素をCO₂として大気中に放出させず、炭の状態で1000年近く閉じ込めておくことが可能です。

さらに、炭は土壌改良材としての効果もあります。バイオチャーを散布することで樹木の成長が促進され、結果としてより多くのCO₂を吸収することが期待されます。未利用だった有機物をバイオチャーに変え、土に戻すことで、森林生態系が活性化し、CO₂吸収量が増加するという二重の効果が得られます。
これまでもバイオチャーは農地での作物収量の増加を目的に土壌改良材として利用されてきましたが、炭素隔離を目的としたCO₂削減のための大規模な森林への散布実験は、世界でも非常に珍しい試みです。
