自然の中で「働く」体験
1年生がヒノキの剥皮間伐に挑戦
玉川学園 Primary Divisionが取り組む、学びと自然をつなぐ教育
2025年5月19日と23日、Primary Division(小学部)1年生による「ヒノキの剥皮間伐体験」が行われました。この取り組みは、玉川学園の広大なキャンパスに広がる自然を舞台に、木を育て・活かし・伝える循環型の環境教育プロジェクト「Tamagawa Mokurin Project(タマガワモクリンプロジェクト)」の一環として行われています。
Tamagawa Mokurin Projectは、学内で発生する間伐材などを資源として活用し、教材や備品への再生、学生・生徒たちによるものづくり、そして地域との連携にまで広がる取組みです。「自然のめぐみを学びの現場へ」を合言葉に、自然環境と教育活動の循環を実現しています。
動きやすい服装に着替え、経塚校舎のエントランスに集合する1年生たち。この段階で元気いっぱいです。最初に、この日のプログラムを担当する農学部の学生の皆さん、総務部管財課の皆さんの紹介があり、農学部環境農学科の山﨑旬教授から子供たちにむけてお話がありました。
みんなの目の前にある大きなヒマラヤスギの木が3本、じつは年をとって弱ってきてしまいました。木が枯れてくると、大きな枝が落ちたり、木が倒れたりしてとても危ないので、安全のために伐る(伐採する)ことにしました。


でも、ただ伐って終わりではありません。
この3本のヒマラヤスギからタネをとって、実は、新しい木(苗木)を育てています。今度は、同じ場所には植えられないかもしれませんが、別の場所で大切に育てていく予定です。こうして、玉川学園の自然のつながりを守っていきます。
そして、切ったヒマラヤスギの木も、ぜんぶムダにはしません。
乾かして、材木にして、いろいろな場面で使っていく予定です。みなさんもどんなものがつくれるのか考えてみましょう。
そして、剥皮間伐の作業に入る前には、山﨑先生から「なぜ木の皮を剥ぐのか」「どのように行うのか」「どんなことに気をつけるべきか」といった説明が、子どもたちに丁寧に伝えられました。
この「剥皮間伐(はくひかんばつ)」は、森林を守り育てるために、木を間引く際に行う方法のひとつで、生きたまま伐り倒すのではなく、木の皮を剥いで時間をかけてゆっくりと枯らすことで、周囲の自然への影響を抑えながら、森に太陽の光を届けることができます。木を伐らずに枯らすこの方法は、少ない労力で効果のある間伐方法として注目されています。
山﨑先生の話を聞くうちに、子どもたちの表情は真剣さを帯び、目の輝きが変わっていく様子が見られました。自然を守るために自分たちができる「仕事」であることを理解した瞬間でした。


森をめぐり、木に触れる──五感で感じる自然
体験の始まりは、剥皮間伐をする東山へ向かう「丘めぐり」から。途中、山﨑先生と共に子どもたちは目にした木や葉を見ながら楽しげに歩いていきました。
「これは虫除けの木!」「この葉っぱ、シールみたい!」
こうした自由な発想と言葉遊びの中にも、自然への関心と観察力が育まれていることが伝わってきます。森の中に到着すると、子どもたちは真剣な表情でヒノキの皮を剥ぎ始めました。表面のザラザラとした感触、漂う香り、手に伝わる木のぬくもり、教室では得られない、本物の自然との対話です。




「働く」ことの楽しさを実感
この活動を支えるのは、農学部の学生や総務部管財課スタッフ、タマガワイーサポート、濃沼植木、ランドフローラ、そして日々の授業で子どもたちを見守る先生たち。多くの協力のもと、安全に配慮された環境で、1年生たちは力いっぱい“働く”体験を楽しみました。
Primary Division1年生の廻谷先生からは、次のような感想が寄せられました。
「まさに玉川の労作教育だと感じました。元気いっぱいの子どもたちが、自然の中で体を動かして働くことで、生き生きとした表情を見せてくれました。現地までの丘めぐりも楽しそうで、これは「虫除けの木」、これは「シールの葉っぱ」などと、あだ名をつけていたのが印象的でした。
このような本格的な体験を“学内で”できることに、毎回感動しています。山﨑先生をはじめ、下見や打ち合わせ、準備など、多くの皆さまにご協力いただき、感謝の気持ちでいっぱいです。」




「生きる力」を育む、玉川の環境教育
玉川学園では、自然と共に生きるための知恵と感性を、体験を通して育むことを大切にしています。この剥皮間伐体験は、自然の恵みに触れながら、子どもたちが「働くことの喜び」「自然の尊さ」「仲間と協力することの意味」を学ぶ時間でした。
机の上だけでは得られない“生きた学び”が、ここにはあります。玉川の広大なキャンパスと豊かな教育環境は、子どもたちの未来を育てる大きな土壌となっています。
子どもたちは、自分たちで剥いだヒノキの皮を使ったものづくりを考えています。
