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お知らせ

箱根須雲塾にて職員研修を実施しました
―体験を通じて深まる自然理解と玉川学園への思い―

木を循環する

2025年6月7日(土)、玉川学園が所有する自然教育施設「箱根自然観察林/箱根須雲塾」にて、教学部・総務部・人事部・農学部の職員を対象とした研修を実施しました。

今回の取り組みは、「労作教育」の理念に基づく実践の一つとして捉えられています。労作とは、全人教育の柱であり、自然の中で身体を動かし、他者と協力しながら学ぶことを通じて、自ら考え行動する力や、自然や社会への理解を深めていく教育実践です。

研修の冒頭では、農学部の山﨑旬教授より、箱根須雲塾の歴史的背景や自然環境、施設のこれまでの役割について詳しい説明がありました。箱根須雲塾は、玉川学園が長年大切にしてきた自然教育の拠点であり、人工林と自然林が同じ敷地内に広がる、全国的にも貴重な教育環境です。

説明後には全員でラジオ体操を行い、体をほぐしたのち、安全確保のための事前確認を経て、「剥皮間伐グループ」と「自然散策グループ」に分かれて活動を開始しました。

当日は、農学部の山﨑旬教授、浅田真一教授、小原廣幸教授、南佳典教授、石川晃士教授、飛田有支准教授、髙橋里世助手が指導役を務め、人工林の管理手法の一つである「剥皮間伐(はくひかんばつ)」を実践的に学びました。これは、樹皮を剥いで樹木の葉からの光合成産物の転流を止め、時間をかけて枯らすことで森林内の光環境を改善し、健全な生態系の維持に貢献する技術です。伐倒を伴わず、安全性も高いため、教育的な場面でも活用されています。
人工林は、主にヒノキまたはスギの苗木を1.8m間隔で植え付けることが多く、成長と共に間引き(間伐)が必要です。参加者は実際に間伐作業を体験する中で、森林保全の必要性と手間、そしてそれを支える人の営みの重要性を深く感じ取ることができました。

一方、自然散策グループのガイド役を主に務められたのは南佳典教授で、参加者とともに箱根自然観察林内の椿沢沿いの道から標高550m程の尾根道を経て須雲川沿いを歩きながら、地形と植生の関係について熱を込めて語ってくださいました。
たとえば、植林の位置には意味があり、川に近い低地で土壌水分の多い場所にはスギを、中腹にはヒノキを、さらに乾燥した尾根筋にはマツを植えるといった、造林における基本的な考え方を、実際の地形と照らし合わせながら解説していただきました(※須雲塾の造林地にはマツは植えられていません)。

また、アブラチャン、フサザクラ、山椒など、普段は見過ごしてしまいがちな植物に着目して解説してくださいました。植物それぞれの香りや形、生態的特徴に耳を傾けながら歩く森の中は、まるで新たな物語が広がるような時間となり、参加者からは「自然の見え方がまったく変わった」との声も聞かれました。

午後から、須雲塾(食堂棟・宿泊棟)、水源施設、温泉ポンプ施設などを見学し、各施設の現状を把握しした上で、振り返りなどのディスカッションを行いました。参加者からは、「間伐材を活かしたクラフト製品の制作」、「ハーブや木の香りを活かした商品化」、「学生・地域との連携による教育プログラム」など、今後の施設活用に向けた具体的なアイデアが活発に提案されました。

自然の中で体を動かし、他者と協力しながら学ぶことで、部署の垣根を越えた交流が生まれ、玉川学園全体への理解と愛着が一層深まる、非常に有意義な一日となりました。

今後も、農学部と連携した「労作教育」の実践を職員研修として継続するとともに、生徒・学生に向けた自然環境教育の場としても、箱根須雲塾の可能性を広げてまいります。

本研修の実現にあたり、終日ご指導くださった農学部の先生方に、心より感謝申し上げます。