親子で学ぶ「森の循環」とバイオ炭づくり体験｜What’s new

親子で学ぶ「森の循環」とバイオ炭づくり体験

2025/12/09 学外イベント

2025年12月6日（土）、町田市芹ヶ谷公園で開催された、「Future Park Lab 2025 Winter」に、玉川大学農学部友常満利准教授と研究室の学生が、緑の物語をつくるワークショップ「未来の地球をまもるバイオ炭づくり体験〜焼き芋も楽しもう！〜」を実施しました。
会場には子どもから大人まで、親子で参加する多くの来場者が集まり、火と木、そして、自然に触れる体験を通じて、「森を守る循環のしくみ」について楽しみながら学びました。

火を扱い、炭をつくる。失われつつある「生活技術」を体験する時間

ワークショップでは、参加者が自分の手で木を切り、のこぎりの重さや刃の力加減を確かめながら素材と向き合いました。

普段使うことのない道具に触れることや、火で木が炭へと変化していく過程に立ち会うことは、子どもたちにとって大きな驚きと発見になったようです。

参加者からは、

「普段使えない道具が使えて楽しかった」
「炭になる前の木を初めて見た」
「花の形の炭を見てびっくりした」

などの声が寄せられました。

友常准教授は作業中、参加者にこう語りかけました。

「危ないから触らない、ではなく、“どうすれば安全に使えるか”を体験してほしい。
危険を知ってこそ、道具は自然と一体になる。
その学びは、環境教育とも密接につながっています。」

木の重さ、刃物の切れ味、火の熱さ、煙の匂い。
それらすべてが、「手を動かす経験」だからこそ得られる学びです。

バイオ炭が生む３つの環境効果

友常研究室では、都市域に存在する未利用木材を活用し、バイオ炭による環境改善とカーボンコントロールについて研究しています。

木を炭化すると、長期間炭素を留めさせ、大気中に戻らずに地中に残るという特性があります。これにより、森や都市緑地を「マイナスカーボン」へと変えることを目指しています。

研究では次の効果が確認されています。

1. 炭化による炭素隔離
木が吸収したCO₂をそのまま炭の形で未来へ残す。

2. 散布による生育促進
土壌の保水性・通気性・微生物活性が改善。

3. 管理による生態系サービスの回復
森が健康を取り戻し、樹木の光合成量が増加する。

大学院生の和田日向子さんは、研究の意義を次のように語ります。
「緑地には未利用資源が多くあります。それを炭化して自然に戻すことは、都市における新しい森林循環モデルです。私たちはその社会実装に向け、玉川大学キャンパスで研究を続けています。」

さらに、「伝えることの意味」にも言及します。
「普段は研究として地味に取り組んでいますが、今日のように子どもたちと触れ合いながら伝えることで、“環境は自分ごとだ”と気づくきっかけになればうれしい。学びを社会に還元することが、今の時代に求められていると思います。」

永遠のアート” ― 花炭づくりの文化と教育価値

ワークショップ後半では、日本の伝統文化のひとつである「花炭（はなずみ）」について説明をしました。花炭とは、炭焼き職人が技術や遊び心を発展させて生まれた文化で、花・葉・木の実など、自然の形をそのまま残しながら焼き上げた美しい炭を指します。

友常准教授は実物の花炭を見せながら解説しました。

「花炭は“自然の時間”を残すアート作品です。炭は腐らず、長く残り続ける。つまり、花炭は自然の姿を永く留める“自然の標本”でもあります。バイオ炭の科学的側面とは別に、文化として、教育として、人の心に触れる価値があります。」参加者の中には、初めて見る黒く光るどんぐりや小枝に驚き、「かわいい！」「飾りたい」「贈り物にしたい」と声を上げる学生や児童もいました。花炭は、研究素材でありながら、アートにもなる――まさに学び・文化・デザインが交差した表現方法と言えます。