玉川大学教育博物館 館蔵資料の紹介(デジタルアーカイブ)

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館蔵資料の紹介 1994年

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『百萬塔』と世界最古の印刷物『陀羅尼』

『百萬塔』と世界最古の印刷物『陀羅尼』

百萬塔(左)と相輪陀羅尼(下)

百萬塔(ひゃくまんとう)は恵美押勝(えみのおしかつ)の乱が764(天平宝字8年)年平定したとき、称徳(しょうとく)天皇の勅願により三宝加護の謝恩のため約6ケ年を費やして770(宝亀元年)年百万個製作されました。

小塔内部には除災のため陀羅尼(だらに)と呼ばれる文四種のうち一種が納められ、畿内の法隆寺など十大寺に十万基ずつ奉納されました。

その後、火災天災などにより焼亡散逸し、現在では法隆寺に現存するだけですが、明治40年には法隆寺の維持基金捻出のため、三千基の頒布を行っており、これらが戦後間もなく骨董品屋の店先に並べられ、蒐集の対象して売買が行われました。

本館の所蔵している百寓塔は相輪部(そうりんぶ)と塔身部(とうしんぶ)に分かれ、大きさは総高20.5cm、相輪部の高さ7.3cm、塔身部の高さ13.2cm、基底部径10.2cm、塔身部の中心に径2.1cm、深さ8.8cmの丸い穴があり、陀羅尼は『無垢浄光経相輪陀羅尼(むくじょうこうそうりんだらに)』(縦5.1cm×横42.3cm)の経文一種が納入され、上から相輪部を等身部にはめ込んであります。

製作工法は、塔身部基底に爪跡が四ケ所あり、1木を用いて轆轤挽(ろくろびき)で彫り出してあります。使用されている木の種類は不明ですが、相輪部は緻密な彫り出し作業が要求されるためか堅い木で作られ、塔身部は相輪部より軟らかい木で作られております。

顔料は相輪部、塔身部ともに甚だしく剥落が進んでおりますが、全面に下地の白土と思われる白色が陀羅尼を納入した穴の中まで塗布されたことが確認できます。

納入されていた陀羅尼は本来経文であるため書写すべきものですが、短期間に百万という数を要するため、印刷によって書写にかえられたものと思われます。用いられた版は、木版・銅版のどちらの方法で印刷されたか判断することは不可能ですが、印刷物であることには間違いありません。しかし多数刷られたにしては、原版の磨耗は少なかったように見受けられ、木版でなく銅版印刷ではないかとも思われます。

ヨーロッパで活字印刷の技術が発明されたのは1450年代、現在刊記のある世界最古の書籍と言われている中国の敦煌(とんこう)で発見された木版刷りの『金剛般若波羅密経(こんごうはんにゃはらみっきょう)』は868(咸通9)年であり、刊行年が明らかなこの陀羅尼はそれより約百年も古く、現存する世界最古の印刷物として多大の関心がもたれ、我が国最高の文化遺産といえます。

〔無垢浄光経相輪陀羅尼和訳〕
掩(おん)。 一切如来の広大なる相輪業よ、摩尼・金・銀にて荘厳されたる相輪棠よ。摩尼(まに)・金・銀にて荘厳されたる相輪よ、任持せよ、任持せよ、普ねく観られたるとき。(風が吹き)流れよ、流れよ、有の清浄なるものよ。覚尊者よ、妙覚尊者よ、最勝なる相輪棠よ。最もすぐれた摩尼の破壊者よ。(それを)除去したまえ、永く存する汚穢(おわい)が清浄にせられたときに。フーム、フーム、スヴァーハー。

「全人」1994年6月号(No.552)より

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