菌類を医薬・農薬スクリーニング資源とする科学的意義

1. 地球上に生息していると推定される150万種の菌類の約5%、わずか71,000種しか明らかにされておらず、95% は未開拓資源である。しかも、そのうち培養可能な菌類は5%であり、新規菌類の分離同定ならびに培養技術の開発が行なわれれば、戦略的に優位に立てる。

2. 菌類は植物内生菌としての共生、動植物に対する寄生、様々な基質上での腐生的な栄養分と領域の奪い合いによる菌類の遷移など、相互作用の中で情報伝達、生理活性物質の産生など重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、それらの相互関係の研究から、新規な二次代謝産物や酵素などが発見され、産業上、有用な物質が開発できる期待は大きい。菌類の二次代謝産物は多くの重要な医薬品、農薬として開発がなされており、その潜在能力の開拓は将来性のある重要な課題である。

3. ヒトゲノムの解析が進むに伴ない、同じ真核生物である菌類の遺伝子との相同性が明らかとなり、菌類の遺伝子研究が新規生理活性物質、疾患の分子標的探索のツールとして応用できる可能性がある。多くの類似の遺伝子が異なった生物に存在し、一つの種から得られる情報がただちに他の種への応用につながる。菌類資源を集め、情報を蓄積することが将来の応用を実り多いモノとするであろう。

4. そのほか、菌類の代謝産物が種によって異なり,新規生理活性物質の発見につながりやすいこと、菌類の特異遺伝子―酵素系が combinatorial biosynthesis に活路を開く等の可能性がある。異なった環境下に生息する菌類を集め、カタログ化することにより、程度の同じ、あるいは異なった様々な代謝系発現が得られることが期待される。

以上のことから、菌類を中心にした未資源開拓研究、技術開発研究を強力に推し進める時期は今を置いてないと考える


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Last update on 2001/07/19
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