電解機能水を用いた菌類の分離

奥田 徹石井(植木 )清子・渡辺京子*・栗原正幸* *玉川大学農学部

    植物より菌類を分離するには,1)エタノールと次亜塩素酸ナトリウム水溶液による表面殺菌,2)界面活性剤による表面洗浄,3)粉砕した材料の粒子選別,4)湿室法と直接分離,5)バンドーニ法とマニピュレーションなどがある.我々は通常の殺菌剤の代わりに電解機能水(強酸性電解水,以下電解水と略記,有効塩素濃度40 mg/liter)を用いて表面殺菌を行い,良好な結果を得たので報告する.電解水は手指の殺菌洗浄用 途で薬事法上認可されており,医療現場で広く活用されている.上記濃度の電解水は,0.1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液とほぼ同等か,それ以上の抗菌作用を示すが,有機物が混在すると効力が激減することが知られている.そこで葉面上の菌類には短時間で致死的に作用し,内部に生息する菌類には影響が少ないことが期待された.これに基づき,アセビ(Pieris japonica (Thunb.) D. Don.)の健全葉を電解水に数秒,1分,10分,20分,30分,1315時間浸し,洗浄後,細かく裁断し,各葉片から生育する菌株をすべて分離した結果,1)電解水に浸す時間経過にともない,分離される菌類属総数は減少するが,2)優占的に分離される属が変化した.3)電解水に10分以下浸したときの優占属は,AureobasidiumCladosporiumPestalotiopsisTripospermumであり,4)1時間以上浸したときの優占属はColletotrichumPhomopsisPhyllostictaであった.5)主脈を含む葉片からは比較的長時間電解水処理しても菌類が分離された.6)また,電解水に対する分離菌の感受性には,大きな差はなかった.以上から,1)電解水は,浸す時間を変えることで,より容易に多様な葉内外の生息菌を分離でき,2)その時間により,葉面菌と内生菌が分けられる可能性が示された.3)また,これは菌類の電解水に対する感受性の差ではなく,葉の組織による保護の結果であることが示唆された.

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Last update on 2001/07/19
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