牧(まき)と厩(うまや)
玉川学園・玉川大学
厩は屋敷内にあり,馬はいつも大切に扱われていました.よく見ると男の人の後ろの杭に猿がつながれていますが,これは馬の魔よけとして必ず飼われていたものです.この絵では見えませんが,厩にたまったわら屑や糞は大切な肥料として厩の後ろに掘られた穴に溜められていました.鎌倉時代の馬は,今日,皆さんが競馬のシーンなどで見ている,あのスマートなサラブレッドとは違います.写真でみてのとおり体高125Cmの胴長・短足の「ずんぐり馬」でした.しかし,この馬は走るのはそれほど速くありませんでしたが,力がとても強かったのです.特に坂道の上り下りに強く,山の多い日本には最適の馬でした.
現在,この種の馬はわずかに宮崎県と長野県,北海道にしか残っていないそうです.写真の馬は長野県開田村の木曽馬で,木曽義仲の軍勢はこの馬の祖先に乗って京都の平氏と戦ったのです.

馬屋は二棟ありました.1区画に1頭入れていたとすると1棟で8頭入ります.2棟ですからその倍の16頭の馬がいたことになります.しかし,当時の馬は今よりずっと小さいから1区画に2頭入れていたとすると32頭ということになります.もしかしたらこの館の主は「牧」の管理をしていたかもしれません.いずれにせよ面積では主屋より広いですから,馬を大切にしていたことが分かります.