IP電話(Skype)を使った遠隔学習実験

ー「鹿児島養護学校と玉川学園」との通信学習ー 

玉川学園・玉川大学

平成17年3月3日

10分28秒

これまで私たちはWEBを利用した双方向の学習や、モバイルコンピューティングを利用した学習など、ITを利用した研究と学習実験を積極的に推進してきた。また、近年は第3世代情報携帯端末を活用した実験に取り組み、各方面からも注目を集めている。これらの技術や方法を利用した学習は、玉川学園をはじめとして全国の先進校で積極的な取り組みが行われ、それぞれが大きな成果をあげている。

ところが、学校教育に於けるIT化の推進は国家的命題になっているにもかかわらず、地域や学校によるIT化促進の温度差は益々広がり、ある意味での「教育差別化」が増幅される懸念の声があがっていることもまた事実である。いくつかの報告書にあるようにそれらの原因は技術・予算・組織・個人と多岐な要素にわたっているため、単純にこれが決め手という方策がないのも現状である。

このような状況下で、今回報告する遠隔学習実験は簡便且つ安価であり、技術的あるいは予算的問題を克服する1つの方法として行われた。


Skype(スカイプ)はコンピュータ間(Mac・Windowsを選ばず)、あるいは固定電話や携帯電話との通話が可能なIPフォンである。音質の良さや簡便性、しかもコンピュータ間なら国内・海外を問わず無料ということから急速に普及しつつある通信システムである。(※一般電話との通話は有料)

Skype一番の特徴は音声伝達に特化していることである。Skypeはファイル共有の技術を活かしているため、サーバー管理は最小限にとどまり簡便且つデータ転送もスムーズである。急速なブロードバンド化に伴いテレビ電話やテレビ会議が行われている今日「物足りなさ」を感ずるが、Skypeに備わっているファイル転送機能をその場で利用したり、予め写真やテキストなどの資料を送るなどの工夫をすれば十分に使えるシステムであると考える。

またSkypeは大きな壁である「予算」を克服している。これまでのように限られた学校予算の枠を考えてみれば、通信料の無料化は大きなファクターであろう。また、慣れない教員にとってコンピュータの操作はこれまで至難の業であったが、電話感覚のSkypeはコンピュータの電源をいれることさえできれば、あとは電話とまったく同じであるため、簡単な練習で活用が可能である。

これから交流学習を考えている学校や教員にとって、まずは取り組みやすい音声での相互学習を試みてはいかがであろうか・・・テレビ会議やモバイル学習は次のステップでも十分であるし、なによりも交流することを通して得られるノウハウは必ず今後の学習に役立つからである。

最大のポイントは「機械を使う」ことではなくて、「学習の中身」である。これは全ての遠隔学習について言えることであるが、相手校・パートナーとの学習における相互理解や事前の打ち合わせなど、十分な共通理解が必要であることにかわりはない。

今回紹介した学習は、鹿児島養護学校の中学2年生女子と東京都玉川側学園多賀との学習である。鹿児島養護学校とは平成11年3月にもメールとWEBを利用したリアルタイムの学習を行ったが、今回も機械を使えば距離はもちろんのこと、ハンディのあるなしにかかわらず「同じ土俵の上」で学習が可能であることを証明した貴重な実験であると考えている。

玉川学園マルチメディアリソースセンター