玉川大学出版部の本


遊戯から芸道へ -日本中世における芸能の変容-

村戸弥生(霊山大学専任講師)著

A5判上製・340頁
定価 品切・オンデマンド対応
発行年月 :2002年2月
ISBN :ISBN4-472-40265-3 C3076
ジャンル :演劇・芸能

芸能の語義は、9世紀から12世紀の間に、「技術・才能」という広義のものから、現代的意味でもある「歌舞音曲」という狭義のものへ変容した。蹴鞠・鷹狩・打毬楽・能など日本中世で盛んに行われていた古典芸能の歴史と発展を詳らかにすることから文化の生成と変容の類型を示し、なぜこの時期に変化が起こったかを考察する。

主な目次

序章 芸能史研究の現況

一章 舞楽にみる変容-放鷹楽・打毬楽
  一節 放鷹楽の変容
    1 嵯峨朝における放鷹楽
    2 放鷹舞の中断
    3 醍醐朝における放鷹楽
    4 放鷹楽のその後
    5 白河朝における放鷹楽
    6 放鷹楽の廃絶
  二節 打毬楽の変容
    1 現行打毬楽
    2 楽書における打毬楽
    3 打毬楽の初見記事から
    4 正月行事から五月行事へ
    5 勝負楽としての転換
    6 騎馬から徒歩へ
    7 番曲としての転換-定式四人舞の成立
    8 打毬のその後

二章 蹴鞠の変容
  一節 院政期における蹴鞠概略-蹴鞠口伝書中の諺を起点として
    1 「鷹を据えて鞭を打つ」
    2 諺の由来
    3 院政期における蹴鞠流行
    4 散楽的技術の否定
    5 新たなる蹴鞠
    6 諺の用いられ方の揺れについて
    7 芸道たる姿態
  二節 足踏の変容
    1 蜻蛉返りによる身体間交通-舞楽と田楽
    2 舞楽と蹴鞠-藤原成通の舞楽口伝から
    3 院政期蹴鞠における足踏の様態-躍足と延足
    4 院政期蹴鞠における履物装束

三章 蹴鞠口伝の生成-『蹴鞠口伝集』を中心に
  一節 蹴鞠口伝生成の諸段階
    1 蹴鞠史レベルにおける二段階-躍足時代と延足時代
    2 政治史と蹴鞠史の連動-源有仁を中心として
    3 個人史レベルにおける二段階-若年時代と「功に入る」時代
  二節 「鞠にまことといふ事」の生成
    1 「功に入る」ということ
    2 老足口伝から
    3 「まこと」口伝
    4 「まこと」の由来
  三節 「鞠の魔事の事」の生成
    1 「魔事」口伝
    2 蹴鞠の場の変容-懸から切立へ
    3 フォーメーションの形成
    4 「魔事」の典拠
  四節 「心」と「身」の変容
    1 「心を掛ける」対象-跳ね返る鞠から枝に伝わる鞠へ
    2 「心」と「身」の変容
    3 「心」と「身」の発想的典拠
    4 「心」と「身」の口伝の展開-蹴鞠道即仏道観の成立
    5 狂言綺語観との結びつき

四章 蹴鞠説話の生成
  一節 鞠の三徳説話をめぐって
    1 鞠の三徳
    2 『成通卿口伝日記』冒頭鞠精説話
    3 『成通卿口伝日記』冒頭鞠精説話の祭祀化
    4 鞠の三徳の背景
    5 鞠の三徳の成立
    6 鞠の三徳説話のゆくえ
  二節 藤原成通の清水寺高欄蹴鞠説話をめぐって
    1 蜻蛉返りによる身体技術と説話の交渉
    2 「身を投げる」こと
    3 『成通卿口伝日記』説話的口伝部分
    4 藤原成通の清水寺高欄蹴鞠説話
    5 演劇的再生へ

五章 能にみる生成-『小鍛冶』・『鞠』
  一節 『小鍛冶』の生成
    1 小 狐
    2 三条小鍛冶宗近
    3 狐との相槌
  二節 『鞠』の生成
    1 前場の詞章から
    2 後場後半部の詞章から
    3 身体の側面から
    4 『鞠』の成立・享受圏

終章 広義の芸能から狭義の芸能へ
    1 広義の芸能の分化
    2 遊戯から芸道へ
    3 広義の芸能の再編
    4 芸能研究の課題と展望

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