■神経細胞の膜電位
 膜電位シミュレータ”NEURON”のWeb教材リンク   http://www.tamagawa.ac.jp/teachers/aihara/NEURONSimulator.html(別ページ)
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■脳の情報処理
[1]脳とコンピュータの違い
 現在地球上に存在する最上級の2大情報処理装置である脳とコンピュータには、いくつかの相違点があります。

  • コンピュータはプログラムを作成して入力しないと動かない(ノイマン型コンピュータ)。一方、脳はプログラム、電源、スイッチなどを全く必要とせず、脳は自らが学習し記憶するシステムであり、この自己組織化(可塑性)というがコンピュータと最も異なる点です。

  • コンピュータは正確で素早い計算やデータベースなどの探索、そしてすべてのことに完全な再現性を持っています。それに比べると、脳は再現性の能力においては非常に乏しいものとなります。しかし、人の顔などを識別し区別するパターン認識には非常にすぐれており、様々な事柄を同時に並列に行うこと(並列情報処理)を得意としています。コンピュータは、スピードは速いのですが、実行するときは必ず1つづつの命令しか実行できず、いくつかの作業時間を区切って順々に細切れに行うタイムシェアリングという方法をとっているのです(直列情報処理)。

  • コンピュータの基本素子は半導体素子であり、脳はニューロン(神経細胞)です。半導体素子は信号を電気パルスで送り、ニューロンは後述する活動電位によって信号を伝達します。共通なことはどちらも電気で情報を運んでいるということです。

[2]脳の情報処理の基礎
 脳の情報処理の基本要素はニューロン(神経細胞)です。人間の大脳皮質には約140億個のニューロンがあり、それが網の目のようにネットワークを作って情報を処理したり、記憶したりしています。ニューロンは他のニューロンから入力をもらうと、自分の中で電気を加算し、それがあるレベルになると活動電位と呼ばれる約100mvの大きさの電気の神経スパイクを出力します。そして次のニューロンにそのスパイクを入力として送ります。そのようなニューロンの回路網(ハードウェア)の上で、発火活動の時間的空間的パターン(ソフトウエア)が脳の情報処理に重量な役割を果たしています。

     

 目から入った光は、すぐに100mvの神経スパイクに変換され大脳皮質に送られます。そして情報処理がなされ、記憶と照合されて物体の認知がなされます。また、手や足の神経系も同様で、大脳皮質のニューロンから100mvの神経スパイクが出力され、神経細胞を伝わっって筋まで運ばれ、頭で考えたとおりに手や足を動かすことができるのです。ですから神経系はすべてニューロンによって結ばれていて、その上を伝搬される神経スパイクによって体を制御したり、物を考えたりしているのです。
 ニューロンのネットワークは、1段回、2段回、… と階層的に処理が進んでいきます。たとえば視覚系では、情報が眼の網膜の細胞を経て後頭葉まで運ばれると、第1段階では点に応答するニューロンの処理が行われ、第2段階ではそれらの出力が集まって線に応答するニューロンの処理が行われます。さらに次の段階に進むと形に応答するニューロンの処理が行われます、そして最終的には人間の顔などに特異的に応答するニューロンも存在しています。このように、脳ではニューロンレベルから、それが集まった神経回路網の高次機能と呼ばれる複雑な情報処理までがなされています。