談話会報告

第7回 談話会 (2005年9月29日/21世紀COE 第7回 若手の会談話会)

ヒトの記憶を支える脳システム

奥田 次郎 氏(玉川大学)


ヒトの記憶は様々な側面から成り立っており、記憶障害患者および健常者脳イメージング研究の双方からそれらを支える脳システムが明らかになりつつあります

人間の記憶機能には様々な側面があり、それぞれに応じて固有の脳システムが存在することが近年の研究から分かってきている。今回の発表ではヒトの記憶の成り立ちを概説し、これを支える脳システムについて脳損傷患者の症例研究および正常者の脳イメージング研究の結果から検討する。


チンパンジー乳幼児・ヒト乳幼児における
馴化法を用いた動物カテゴリ形成に関する検討

村井 千寿子 氏(玉川大学)


基本的なカテゴリ化能力は、発達初期のヒトおよびヒト以外の霊長類に共通に見られるが、内容の抽象度には種差がある可能性が示唆されました

近年、認知発達心理学の分野において、ヒトのカテゴリ化能力に関する検討は中心的課題のひとつであり、その能力の発生や初期発達に関する研究が多くおこなわれている。そして、これらの研究から、たとえば、生後数ヶ月の乳児、もしくは生後間もない新生児がカテゴリ的反応を示すことが明らかにされている。これに関連して、ヒトのカテゴリ化能力の起源を探るべく、様々なアプローチが試みられている。その中で、ヒトのカテゴリ化能力の起源を系統発生の歴史に探る比較認知心理学的研究という方法がある。これは、ヒトのカテゴリ化能力の進化的基盤をヒトとヒト以外の種との比較を通じて検討するという立場である。そして、これまでの研究から、チンパンジーやマカクといったヒト以外の霊長類種をはじめとする多くの種がカテゴリ化能力をもつことが示唆されている。このような観点から、報告者は、チンパンジー、ニホンザル、ヒトの3種の霊長類を対象にカテゴリ化能力の比較研究をおこなってきた。特に、これまでの比較認知的研究で指摘されている以下の問題点に注目した;(1)ヒト以外の動物を対象としたカテゴリ化研究では、訓練の結果学習される被験体のカテゴリ形成を問題としているため、当該種の自発的なカテゴリ化能力を示すデータが不足している。(2)先行研究は成体を対象としたものが主であり、ヒト以外の動物の成体とヒトの乳幼児とを比較するなど、発達の要因が考慮されておらず、カテゴリ化能力の発達過程に関する種間比較のデータが十分でない。そして、報告者は、各種の乳幼児を対象に、ヒト乳児の研究で一般的である、被験児の注視時間などを指標とした課題を用いて、自発的な初期カテゴリ化能力の直接的比較を試みた。今回は、一連の研究の中で、特にチンパンジー乳幼児・ヒト乳幼児のデータを紹介する。本研究では、これまでヒト以外の種ではあまり検討されていない抽象度の高い(包括的な)カテゴリ(「動物」カテゴリ)の形成について検討した。このような研究から、発達初期のチンパンジーにおいて見られるカテゴリ形成の様相、種間での初期カテゴリ化における類似性・相違性などについて考察する。

日時 2005年9月29日(木)

談話会報告一覧に戻る TOP