談話会報告

第10回 談話会 (2005年12月6日/21世紀COE 第10回 若手の会談話会)

大脳皮質錐体細胞の層依存的同期特性

坪 泰宏 氏(理化学研究所)


集団の挙動を決める単一細胞の性質が層によって違う

大脳皮質には特徴的な層構造がみられ、各層を構成する神経細胞の投射先、形態、電気的性質などが層により異なることが様々な研究からわかってきた。さらに層構造をもつ局所回路がどのように機能しているのかを知るためには、構成要素である神経細胞の相互作用特性を調べることが必要である。そこで我々は、相互作用の基本的性質を表現する 「位相応答」と呼ばれる性質を、大脳皮質の構成要素の大半である錐体細胞に対して調べた。結果として、ラット運動野ではⅡ/Ⅲ層の錐体細胞の多くは同期傾向が強いが、Ⅴ層の錐体細胞の多くは同期傾向が弱いことがわかった。従来の知見とあわせると、「入力層」は「出力層」に比べて同期傾向が強いという普遍的性質があることを示唆している。


大脳基底核・線条体の投射細胞は
行動ごとの価値を表現する

鮫島 和行 氏(玉川大学)


選択行動直前の線条体投射細胞の活動が行動選択に対する報酬予測を表現しています

これからすることを決定するとき、その結果の良さを評価することは重要になる。大脳基底核は運動や報酬に関わることがこれまで示唆されてきたが、報酬の 情報が意志決定にどのように関わるのかは、まだわかっていない。我々は意志決定時の大脳基底核の機能を調べるために、サルに各行動に割り付けられた報酬の確率に基づいて二つの選択肢から一つを選ぶ課題を訓練し、線条体から細胞外電気記録を行った。選択行動直前の線条体投射細胞の活動のうち2/3 がある1つの行動選択に対する報酬予測(行動価値)を表現し、より少ない細胞で相対的な価値、もしくは行動選択そのものを表現していた。この結果は、大脳皮質から大脳基底核の入力部である線条体ではこれから選択する行動の価値を表現し、それに基づいた行動選択が大脳基底核の出力核群において行われ、行動の結果得られる報酬によって行動価値が更新される、という強化学習モデルを示唆する。
日時 2005年12月6日(金)

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