談話会報告

第13回 談話会 (2006年3月7日/21世紀COE 第13回 若手の会談話会)

脳卒中片麻痺の機能回復に伴う
脳活動領域の変化

武田 湖太郎 氏(国際医療福祉病院/科学技術振興機構 CREST)


脳卒中後の片麻痺の回復には損傷側大脳半球の機能回復が重要である

片麻痺は脳卒中後遺症として最も高頻度に生じ、かつ機能予後の重要な決定因子である。急性期から慢性期にかけて機能回復が見られることが多いが、このような機能障害の回復は、脳の基本特性である可塑性や神経回路網の再構築によると考えられている。我々は近赤外分光法(NIRS)を用い、脳卒中片麻痺患者の手運動における感覚運動野の脳血流変化を急性期から慢性期にかけて計測した。結果、急性期において麻痺手運動時に両側の感覚運動野で広く活動が計測され、慢性期では対側の感覚運動野優位の活動が計測された。これらの結果から、脳卒中後の片麻痺の回復には損傷側大脳半球の機能回復が重要であるが、それに加えて急性期において非損傷側の神経回路の動員や再構築が行われることも示唆される。


事象関連電位P3a発生過程に関わる
ラット海馬機能の電気生理学的検討

高浦 加奈 氏(慶應義塾大学)


海馬もまたP3aの発生に極めて重要な機能を果たす

事象関連電位P3aは文脈上予測不可能な新規な感覚刺激によって惹起され、定位反応や不随意的注意の指標であると考えられており、ヒト以外でも多くの哺乳類の脳波でP3a様の電位が報告されています。その神経生理学的背景は明らかになっていませんが、前頭前野などの広範囲の皮質領域に加え、海馬損傷患者でP3aが消失することから、海馬もまたP3aの発生に極めて重要な機能を果たすものと考えられています。私は海馬が事象関連電位P3aの発生過程においてどのように機能しているのか検討することを目的として、ラットを対象に受動条件の聴覚オドボールパラダイム下で脳波と海馬での神経発火応答との同時計測を行いました。今回の発表では研究背景となる先行研究の紹介に加え、私の実験結果についても簡単に報告させて頂く予定です。

日時 2006年3月7日(火)

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