談話会報告

第28回 談話会 (2007年11月29日/第5回 若手の会談話会)

心の理論における再帰のレベルや
コミュニケーション基盤の進化に関する
構成論的アプローチ

高野 雅典 氏(名古屋大学)

他者の心の状態を推測できる個体は「心の理論」を持つと言われる。心の理論は社会的知能の基盤を形成すると考えられており、社会環境への適応進化の結果、生じたと考えられる。その進化ダイナミクスは個体の置かれる社会環境によって影響を受けるであろう。我々は心の理論の重要な側面として次の2点に焦点を当て、それの進化に環境が与える影響に関して構成論的手法を用いて検討を行った。本発表ではその結果について紹介する。

  • 他者に関する再帰的推測のレベル
    心の理論により「他者も心の理論を持つ」と推測するとき、他者も他個体に対して心の推測を行っていると推測でき、推測の再帰構造ができる。ヒトの可能な再帰のレベルは他種に比べて特に深いと考えられる。このような再帰レベルの進化におけるヒトと他種のギャップについて検討するために、社会集団での競合関係を表す衝突回避タスクを用いてモデル化し、再帰レベルの進化シミュレーションを行った。結果、再帰レベルは奇数と偶数の間で非対称な適応度を持つこと、再帰レベルの進化におけるギャップがその非対称性に起因することが示された。
  • 意図表出の進化に基づくコミュニケーションの基盤の成立
    社会的環境において互いの意図を理解することが両者にとって有益な場合、意図の理解の手がかり(例えば表情など)を媒体としたコミュニケーションの進化が考えられる。ただし、このときの利得に偏りがあり公平でない場合、コミュニケーションは進化しづらいであろう。意図を示すシグナルの進化における利得の偏り度の影響について検討するために、「交渉をしてゲームをプレイ」という枠組みでモデル化し、進化シミュレーションを行った。結果、利得の偏り度が低い場合にはコミュニケーションは進化すること、進化する場合としない場合には偏り度による明確な境界が存在することが示された。

他者意図の能動的理解に基づく
認知的コミュニケーション

横山 絢美 氏(玉川大学)

社会的なインタラクションの多くは、他者の意図の推定に基づいた自己行動の決定という過程を含んでいる。それは直感的には明らかであるが、実際どういう処理が頭の中でなされているかについては不明である。本講演では、そのような他者の意図の推定に基づくインタラクションを計算モデルとして表現し、計算機シミュレーションによりその効果を 検証した結果と、そこから示唆される人間の意思決定に含まれる上位過程の特性について議論する。

日時 2007年11月29日(木)17:15〜19:15
場所 研究管理棟5F 502室

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