談話会報告

第38回 談話会 (2008年9月24日/グローバルCOE 第6回 若手の会談話会)

人間のモデルにおける動機づけ概念の役割
:心理学の観点から

村山 航 氏(日本学術振興会・特別研究員(PD))

9月の談話会では8月に続きヒトの心理を題材とした講演が続いた。主に動機付けの概念に、脳科学の理論、モデルなどを取り込むことができるだろうか、という観点から、東京工業大学の村山航さんの講演をしていただいた。動機付けというと、私は外界から与えられる報酬やそれを求める行動や運動のパラメータから定義する、いわば環境の要請と行動から逆算的に定義する行動主義的な定義以外は、なかなか科学の対象としてとらえにくいと考えていた。しかし、知的好奇心や内発的動機付けといわれるいわゆる外界と行動からはすぐに生じないような動機付けについても、外界の変動や不確実性の予測に基づく探索行動の加速のような概念をつかえば、このような内発動機付けに対してもある程度説明できるのではないかと希望を感じさせる講演だった。また動機を誘発する「目標」についても、その性質や種類に関してこれまで心理学で行動からあきらかにされてきた研究を一度に概観していただき、非常に有意義であった。村山さんは統計モデルや解析手法についても非常に正確で広い知識をお持ちで、その当たりの話も聞きながら、心理現象を客観的にとらえるための統計モデルの有用性と、脳のメカニズムを知ろうとする計算モデルとの違いを意識しながら、様々に考えさせられる講演であった。

また、玉川のポスドクや大学院生とさほど年もかわらない若手研究者であるにも関わらずその見識の広さに驚くばかりの講演であった。質問すればするほど様々な研究に関する知識があふれ出てくる講演者で、玉川の若手研究者、大学院生には大きな刺激となったことと思う。

日時 2008年9月24日(水)17:00〜18:30
場所 玉川大学研究センター棟1階セミナー室
報告者 鮫島 和行(玉川大学脳科学研究所・准教授)

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