談話会報告

第96回 談話会
(2014年5月14日/私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 第7回 講演会)

「心の理論」におけるオキシトシン受容体遺伝子多型と心的ストレス状態の交互作用

日道 俊之 氏
(京都大学大学院 教育学研究科教育認知心理学講座博士課程後期/日本学術振興会特別研究員)

京都大学大学院教育学研究科の日道俊之氏に「『心の理論』におけるオキシトシン受容体遺伝子多型と心的ストレス状態の交互作用」というタイトルでご講演をしていただいた。 人の個性は遺伝と環境の両方から影響を受けているが、遺伝子の個人差は脳機能の個人差に影響し、それがのちのちの性格などに影響していく。日道氏は、「遺伝の個人差はどのように人の心理に影響するのか。」を解明するために実験を行われた。オキシトシンに関する研究はこれまでに数多くされてきていて、オキシトシンを投与することによって社会情動行動に影響することがあきらかになっている。オキシトシン受容体に関連する遺伝子多型(rs53576;オキシトシン受容体多型)について人はGG多型、AA多型、AG多型のいずれかを持っている。また、GG多型を持つ人はAA多型を持つ人たちよりも扁桃体の活動が高く、社会的情動能力が高いとされている。脳の部位では、LPFCは自己視点情報を制御することで「心の理論」に関連していて、自己と他者の関係を制御している。
今回行われた実験では、G多型を持つ人は情動的に中性な状態では「心の理論」課題時に左LPFCの活性が上昇するが,ネガティブな心的ストレスを与えると左LPFCの活性が妨害された。このことから,平静状態では情動的な「心の理論」だけではなくより認知的な心の理論もG多型をもつ人の方がAA多型をもつ人よりも優れている可能性があること,そのようなG多型をもつ人は「心の理論」に対する心的ストレスの妨害が顕著であることが示唆された。
今回の実験の結果から短期的な実験室条件において「心の理論」におけるGcarrierのストレスへの感受性の高さが示された。最後に、日道氏は、「従来は長期的な遺伝×環境の交互作用が検討されてきたが、より短期的な遺伝×環境の交互作用を検討することでそのメカニズムの一端を検証することができるかもしれない。」と述べられ、締めくくられた。 今回取り上げられていたオキシトシンについてはまだまだわかっていない部分が多いため、今後の発展が非常に気になるものであった。また、質疑応答においても白熱した議論がなされていた。非常に興味深い研究であり、有意義な講演であった。

日時 2014年5月14日(水)17:00-18:30
場所 玉川大学研究・管理棟5階507室
報告者 仁科 国之(玉川大学大学院 脳科学研究科 修士課程1年)

談話会報告一覧に戻る TOP