談話会報告

第106回 談話会
(2015年10月30日)

A computational model of human consensus decision-making and its neural implementation

鈴木 真介 氏
(California Institute of Technology,日本学術振興会海外特別研究員)

今回の若手の会では、カルフォルニア工科大学の鈴木真介先生に「A computational model of human consensus decision-making and its neural implementation」という題目でご講演をいただいた。

私たちが普段の生活を送るうえで、周りの人々と意見をすり合わせる(コンセンサスを形成する)必要に迫られる機会はなにかと多い。たとえば、何人かで一緒に食事に行くときに自分が寿司を食べたいと思っていても、他のみんながフレンチに行きたいと言うなら周りに合わせてフレンチに行くだろう。ただし、一部のとても頑固な人だったりすると、意地でも自分の意見を通そうとする。今回の若手の会はこのように何人かでコンセンサスを形成する際の行動の計算論モデルの構築とfMRI実験を行った非常に先駆的な研究をご紹介いただいた。

実験は自分を含めた六人の人々が二つの商品の内でどちらが欲しいかを選んで、全員の意見が一致した場合のみその商品をもらえると言う条件で行われた。被験者がどのような情報に基づいて選ぶ商品を決めているのかを記述する計算論モデルを行動データにフィッティングした所、(A)自分がその商品をどれくらい欲しいか、(B)何人の人がそれを欲しいと考えているか、(C)他の人のその商品への執着度、の三つの情報を組み合わせて選択をするときに使っている事が分かったという結果をご説明いただいた。

例えばある邦画のDVDとそれとは別の洋画のDVDのうちどちらが欲しいかを聞いた場合を考えてみよう。六人全員が初めから同じDVDを欲しいと言うことはあまりないが(Aの情報の影響)、全員の意見が一致しないと何の商品ももらえないので何度も同じ質問を繰り返すと、何ももらえないよりはあまり好きでないDVDをもらう方がましだと考えて少数派が多数派の意見に合わせた回答をするようになる(Bの情報の影響)。そうして、最終的には六人全員が同じDVDが欲しいと答えてコンセンサスが形成されることになる。しかし六人の中にどうしても邦画のDVDが欲しいという人がいる場合、例え邦画が少数派だったとしても、邦画のDVDに執着し続けることになる。少数派が自分の選んだ商品に執着している場合、ついには多数派がこのままでは何ももらえなくなると考えて、少数派に合わせて選択するようになる(Cの情報の影響)。

またfMRI実験の結果、自分がその商品をどれくらい欲しいかはventromedial prefrontal cortex、何人の人がそれを欲しいと考えているかはposterior superior temporal sulcusないしtemporoparietal junction、他の人のその商品への執着度はintraparietal sulcusでコードされており、dorsal anterior cingulate cortexでこれらの情報が統合されているという非常に興味深い結果をご説明いただいた。

質疑応答では白熱した議論がなされ、鈴木先生の先進的な研究領野への関心の高さがうかがわれた。

日  時 2015年10月30日(金)16:30-18:30
場  所 玉川大学 大学8号館 第2会議室
報告者 阿部 嘉織好(玉川大学脳科学研究所 嘱託研究員)

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