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ELFプログラムELF program

玉川大学共通英語教育プログラム

英語学修とELF(共通語としての英語)

玉川大学の全学共通英語教育プログラムは、ELF(English as a Lingua Franca)プログラムと名づけられ、その名称が示す通り、多言語をつなぐリンガフランカ、すなわち「あらゆる母語話者の間でコミュニケーションに使われる共通の言語」として英語を学修するプログラムです。これまで多くの大学の英語プログラムが、主として米国や英国などの英語母語話者(ネイティブスピーカー)の英語、中でも特に単一言語話者の英語の習得を目指すカリキュラムを組んできました。しかし現在のグローバル化が進んでいる国際社会では、20億人を超える英語使用者のうち8割超は、他の母語を持ちながらも英語を学び、英語を第二、第三の言語として使用していると言われています(Crystal, 2019)。母語話者の数では中国語よりもはるかに少ない英語ですが、今や過去に類例を見ないほど様々な地域と分野に浸透し、多言語多文化をつなぐ架け橋として使用されています。こうした時代の変化に対応すべく、大学の英語カリキュラムも、従来の「土着語」や「外国語」と言った枠組みを打破していかなくてはなりません。

ELFの可能性

共通語として、英語は多言語環境の中で用いられています。英語話者のうち、英語のみを話す人は1割程度だと考えられます。例えば皆さんが、台湾人の学生とオンラインで会話をしている時、英語だけを使用するのではなく、日本語や中国語の要素を取り入れながらコミュニケーションがなされても全く不思議ではありません。あるいは、日本のアニメについて、チャット機能で漢字の助けを借りながら、英語で自分の考えを口にしても良いのです。現実のグローバルコミュニケーションにおいて、言語(language)の境界線をはっきりとさせることは必ずしも容易でなく、文化(culture)がどのように関係してくるかも状況次第です。また、実社会(society)のコミュニケーションでは、ビデオ・音声・チャットなど、媒介手段にもよりますが、言語だけでなく、表情、身振り・手振り、発話のタイミング、文書のデザインの仕方など、様々な伝達方法(mode)が多用されます。グローバルコミュニケーションは実際にはとても複雑で、様々な言語的文化的背景を持つ人々が共生する社会空間の中で、様々な手段や様式が一体となって実現されているのです。

自分の言葉にするための英語学修

皆さんは、いわゆる英語標準テストに向けて英語をたくさん勉強したにもかかわらず、英語を自分の言葉として操れないもどかしさを感じたことはありませんか。先ほど、コミュニケーションは、言語、文化、伝達方法が社会空間の中で一体となって実現されるという話をしましたが、そのためには、知識や技能だけではなく、いかに相手や目的に沿って意思疎通ができるか、すなわちコミュニケーション対応力を身につけていることこそが重要なのです。

玉川大学では2014年度より、世界中の英語話者と多様な場面や状況で行われるコミュニケーションへの対応力を養成する取り組みとして、世界に先駆けて「ELFプログラム」をスタートさせました。このプログラムでは、英語を国際語、ないしは共通語として使いこなすことを学修目標に掲げており、2019年度以降、本学すべての学部・学科で導入されています。教室内外での英語の活用と省察を通じながら、ひとりひとりがコミュニケーションのプロセスへの理解を深め、卒業後も各自の分野で自律して英語学修を続けられる礎を築きます。

本プログラムの教員陣は、さまざまな言語・文化・社会的背景を持ち、英語教育における豊かな学識と経験はもちろん、学際的専門性を兼ね備えています。各教員の創意工夫によって準備されたオリジナル教材で進められる授業は、まさに生きた英語コミュニケーションを実践する場所です。玉川大学ELFセンターは、真のグローバル人材を育成するための教育・研究センターとして、国内外から広く注目を集めています。

ELFプログラムの5つの特徴

1. レベル別少人数教育

ELFプログラムには、100番台科目から400番台科目まで大きく4レベルあります。個々の能力、意欲、目標に応じて学修が進められるように、履修レベルはプレイスメント期間に決定されます。多くの学生は100番台科目からスタートしますが、学修成果に応じて次のレベルにステップアップできるように、教員間で連携して段階的なサポートを継続します。学生ひとりひとりにきめ細かな指導をするため、いずれのクラスも学生数は18名~25名です。また、異なる関心や専門分野を持つ学生同士の協働の場として、いずれのクラスも学部・学科の垣根を超えて編成されます。8学部からなる総合大学としての学際性を活かしつつも、少人数教育を徹底しています。

2. 協働学修とフィードバック

ELFプログラムでは、どの科目においても教員との対話の場や、学部・学科を超えた学生同士による協働の場がたくさんあります。また、授業での学修効果を高めるために、授業時間の2倍以上の授業外学修をすることが求められますが、この授業外学修には、プロジェクト型学修などのグループワークが含まれます。ELFセンターには主体的な学修を目指すグループワークのための設備があり(Active Learning Zone)、またオンライン協働学修のための環境も整備されています。授業内での発表や提出課題に関しては、教員から学修成果のフィードバックが個別になされます。ひとりひとりが成果を実感しながら、仲間と無理なく楽しく学修できる環境を提供しています。

3. コミュニケーションのプロセスを重視

現在の多くの英語教育プログラムでは、現実のグローバルコミュニケーションの複雑さとは裏腹に、また「グローバルコミュニケーション」の名のもとに、言語の中から英語だけをコミュニケーションのための言語として位置づけ、さらには特定の時代、特定の地域での理想化された英語の規範のみを教えることに傾倒するカリキュラムが多いように思われます。そうした知識はいわゆる英語標準テストには役立ちますが、それだけでは英語を自分の言葉として活用することはできません。ELFプログラムでは、英語に関して学んだ知識を、いかに場面や状況に即して適切に活用できるかを重視しています。つまり、学生が授業内外で行われる多様なアクティビティー(言語実践)を通じて、徐々に効果的な表現方法を理解し、言語の知識を増やしながら、その知識と自らのコミュニケーション行為とを結びつけることができるようになることを目指します。そして、自らのコミュニケーション経験を省察し続けながら、将来にわたって英語(や他の言語)を通じたグローバルコミュニケーション対応力を磨き続けることを目指します。

4. 英語を学び、英語を通じて学ぶ

大学において英語教育は、「一般教養」として、専門分野の教育と切り離して考えられる傾向があるように思えます。しかし、学部卒業後、ビジネス界であれ、学問の世界であれ、グローバル社会に貢献していく上では、自らの専門性を生かして英語で議論できるようになることも大切です。ELFプログラムでは、主に1-2年生を対象とする英語「を」学ぶ100番台・200番台科目から、主に3-4年生を対象とする英語「を」学びつつ、英語「を通じて」より専門的な内容も学ぶ300番台・400番台科目へと、徐々にシフトしていくカリキュラム構成をしています。学年が上がるほど、学生各々が自らの専門性を持ち寄りながら、また教員が自らの学際的専門分野を取り入れながら、英語で様々な社会的事象や問題について議論したり、英語でレポートを書く訓練をする機会が増えていきます。

5. 「地球市民」としての英語話者がモデル

従来の英語教育では、特定地域の英語母語話者、とりわけ単一言語話者をモデルとしてきました。しかし、英語を母語としないにもかかわらず、英語母語話者のようになることを目指すのは現実的ではなく、グローバルな多言語多文化社会において、特定地域に固執することも得策ではありません。ELFプログラムでは、母語とは無関係に、「地球市民」たる英語話者をモデルとしています。具体的には、他の英語学修者・使用者と積極的に関わり合いながら、新たな知見や、コミュニケーション対応力や、自他共存の精神を継続的に高めていくことができる英語話者であり、同時に、グローバルな問題に対して、自らの専門性を生かしながら他者と積極的に協働できる英語話者です。ディスカッションとグループワーク、そして教員からのフィードバックと学生自身の省察の機会に富むELFプログラムでの学びは、将来にわたって生かされることでしょう。

成績評価

一般に英語のテストや成績評価は、便宜上、「読む」・「聞く」・「書く」・「話す」で区切られています。しかし、実際のコミュニケーションは、これら4技能をバランスよく習得すれば良いというほど単純なものではありません。そこで、ELFプログラムでは、これら4技能を垣根なく統合的に学びます。また、レポート、学術会議、ビジネス会合、メール、日常会話等の言語使用領域を総合的に学びます。さらに、グローバルコミュニケーションにおける言葉以外の伝達手段・様式や文化的要素についても考察します。

クラス内のすべての課題に目標が設定されていますが、特定の規範を押し付けたり、それからの「逸脱」や「違反」に対して減点がなされる評価方法ではなく、教員は「修得できたこと」を重視して評価します。教員の建設的なフィードバックをもとに、学生各自が学修成果をコンスタントに振り返りながら、次の課題を見つけ、教員と一丸となって克服していくのです。

こうした評価方法により、学生は着実に自信をつけ、学ぶ意欲を高めていくことができます。