玉川大学教育博物館 館蔵資料の紹介(デジタルアーカイブ)

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館蔵資料の紹介 1992年

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『師範学校小学教授法』明治6年刊

『師範学校小学教授法』明治6年刊

『師範学校小学教授法』
田中義廉・諸葛信澄閲
明治6(1873)年刊
21.0×14.3cm
(左)表紙 (右)教授の図と教授の法を示した頁

写真は明治6年に官許発刊の『師範学校小学教授法』(田中義廉(よしかど)・諸葛信澄(もろくずのぶすみ閲)です。

本書の序文に、発刊の主旨として、学校の設置が盛んになるに至っては、教官は教え方を正し、生徒は受業の手順を身につける法が必要である。政府は師範学校を起こし、小学の教法を磨き、年月をかけて始めて、教育の正しい緒(いとぐち)を得てきた。その実践にみる法則を集めてこの書を公刊した。……と述べています。

凡例では、初めて学校に入った6歳の童子を教えるのであるから、先ず五十音の呼び方、次に日用器具の名を教え、なるべく分り易い言い方に務めるように。その問答の仕方を例示したが、教師の意によって取捨増減すること。……と指導の幅と工夫を求めています。

次に、授業の仕方として、教える掛図を正面に掛け、教師は鞭で図の中の一品(品名) を指し、生徒一人ずつに読ませ、終れば席の一列ずつ一斉に読ませる。もし音の正しくない者がいれば、その一人に更に読ませる。……と、説明し、これを授業の法としています。

次いで、第8級(小学1年前期)で「五十音図」「五十音草体図」「濁音図・半濁」「数学図」(0~億)「算用数字図」(0~10)、第7級(同後期)で「羅馬(ローマ)数字図」(I~M)「乗算九九図」「加算九九図」を掲げ、各呼び方を教え、「第一~第八単語図」で動植物、日用器具を図示し、各単語の解説文を掲げ、その教授法を述べています。単語「糸」の例では、教師はその解説文「糸は蝅又は綿麻にて製し人の着物を織る物なり」を念頭に、生徒に「糸は何を製して成るもの」と発問し、答えさせる方法です。「第一~第八連語図」では、単語を文章化した範例を示し、単語習得の工夫をしています。例えば、単語「本。手習」は「私は、本を読みて、しまひました、これから、手習を、致しましゃう。あなたは本と、手習を誰に習ひなさるか 私は、本を父に習い手習を母に習ひます」の範例文で学習します。第6級(2年前期)で「形線度図」「形及体図」の各名称を教えています。

最後に、数学と算用数字を石盤に書かせ、教師が盤上に書いた字とを照合させ、正しかった者は右手をあげ、誤った者は手をあげない、という法を示しています。

このような単純な教法も、当時は近代化実現に向けて授業の向上を目ざした、革命的教法として大きな意味があったと思われます。

「全人」1992年2月号(No.524)より

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