玉川大学教育博物館 館蔵資料の紹介(デジタルアーカイブ)

教育博物館では、近世・近代の日本教育史関係資料を主体とし、広く芸術資料、民俗資料、考古資料、シュヴァイツァー関係資料、玉川学園史及び創立者小原國芳関係資料などを収蔵しております。3万点以上におよぶ資料の中から、月刊誌「全人」にてご紹介した記事を掲載しています。
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館蔵資料の紹介 1997年

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吉川静子 m360「二つのエネルギー」 ダイアゴナル14B

吉川静子 m360「二つのエネルギー」 ダイアゴナル14B

アクリル
カンバス
木枠
平成2-3(1990-91)年制作
96×96cm


この絵の特徴を指摘すれば、まず十字形によって構成されていることは一目瞭然であろう。ただいずれの十字形も交差点は白い空白となっている。それのみか画面の中央が空白の大きな正方形となっていて、何も描かれていない。またこのモノクロームの図版からは窺えないが、十字形はそれぞれ青-緑-橙-桃色の違った色からなり、その配色の具合が上下の十字形では左右が、左右の十字形では上下が反転している。薄く見える十字形は濃くみえる十字形と同じ配色で薄い色で描かれている。そのため斜め後ろにその十字形があるように見え、空間的な広がりが表現されている。かくして単純な抽象絵画のようでありながら、見れば見るほど繊細な神経の行きとどいた構成と、浮遊するかのような十字形によって表現される静謐な空間が見えてきて、見飽きることがない。またいわゆる額縁にあたる木枠がカンバスと一体となって作られている点も特徴に上げてよいだろう。

吉川静子は日本ではあまり知られていないが、スイスでは著名な女流作家である。1934年に福岡県大牟田市に生まれ、津田塾大学で英文学を、東京教育大学(現筑波大学)で建築・工業デザインを学んだ後、1961-63年ドイツのウルム造形大学でビジュアルコミュニケーションを学んで、最初はデザインの仕事をしていたが、1970年から作家活動を開始し、今もチューリッヒ近郊のウンターエングシュトリンゲンに住んで制作を続けている。

主としてドイツ語圏で個展やグループ展を開き作品を発表してきているが、また頼まれてパブリック・スペースのための作品も制作している。そのなかでは市立療養所、リマタール病院、チューリッヒ大学付属病院、シェルテス病院など病院関係の仕事が多いのは、その作品が静かで温かみがあるからだろう。

「全人」1997年4月号(No.586)より

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