ありがとう、3本のヒマラヤスギ
子どもたちと過ごした85年が、新たな学びとくらしの中に生きつづけます
校舎前の大きな3本の木
玉川学園K-12経塚校舎(小学部校舎)の前庭に立っていた3本のヒマラヤスギが、2025年5月31日・6月14日・7月19日に伐採されました。
この木は、学園創立期に植えられたもので、樹齢は約85年。長い間、子どもたちの登下校を見守り、学園の風景の一部として多くの人に親しまれてきました。
近年は老齢化により枯れてきており、枝の落下や内部の空洞化など、安全面での課題が顕在化していました。

木とふれあい、別れを感じる時間
6月14日に伐採された木は、その後、半分に割られ、小学部前にベンチのように設置されました。
子どもたちは幹を触ったり、年輪を数えたり、香りをかいだりしながら、長年親しんできた木との最後の時間を静かに過ごしました。
この材は7月19日までその場に置かれ、日常の中で自然にふれる場所となっていました。
7月19日、最後の1本の伐採にあわせて回収され、今後は製材・乾燥を経て、子どもたちの学びや創作活動の素材として再利用される予定です。

子どもたちの気づきと表現
1年ゆり組では、ヒマラヤスギの樹皮を使った工作にも取り組みました。
木がなくなってしまうことへの寂しさを感じながらも、子どもたちは「どうしたら思い出に残せるか」「伐ったあとの木をどう活かせるか」と考え、形にしていきました。
先生たちからは、「ヒマラヤスギがなくなることは悲しいけれど、子どもたちの心の風景として残すことができたら」という声が聞かれました。

次の世代につながる苗木
伐採に先立ち、農学部の山﨑 旬 教授がヒマラヤスギの種子を採取し、後継となる苗木の育成を進めています。
この取り組みは小学部1年生の「丘めぐり」の授業でも紹介され、実際に育ち始めた苗木を見ながら、子どもたちは自然の循環について学びました。


学びの素材として新たな場へ
伐採された木材は、玉川学園内のさまざまな活動で再利用されています。
5年生のサマープログラムや3年生の林間学校では、コースターづくりや木工体験に使われ、木に触れる体験の中で素材のあたたかさやにおいを感じる時間となりました。
また、教育学部 市川ゼミでは、幼稚部年長組と小学部1年生ES受講生に飼育指導をしたカブトムシの「止まり木」として、本年度はヒマラヤスギが活用されました。


新しい施設にも木の記憶を
現在建設中のスポーツセンター「Sports Center SANITAS」では、このヒマラヤスギの木材が内装天井ルーバーの一部として再利用される予定です。
かつて子どもたちの成長を見守っていた木が、これからは身体を動かす場所の中で、学びと交流を支える素材として息づいていきます。

Tamagawa Mokurin Project の一環として
ヒマラヤスギに関わるこれらの取り組みは、「Tamagawa Mokurin Project(タマガワ モクリン プロジェクト)」の一環です。
このプロジェクトでは、木を育てるところから、伐採、乾燥、加工、再利用にいたるまで、自然資源と教育の循環をつなぐ学びを推進しています。
木との関わりを通じて、命あるものの成長と役割を考える。そうした姿勢は、玉川学園の教育に脈々と流れる大切な価値観のひとつです。
ドローン映像が伝える木の存在感
伐採の様子は、ミュージシャンであり、ドローン映像作家でもある琢磨仁さんによって撮影・編集されました。
空からとらえた、その存在の大きさをあらためて感じさせてくれます。
これからも、自然とともに
85年間、子どもたちとともに過ごしてきたヒマラヤスギ。
その役目を終えたあとも、木は姿を変え、子どもたちの生活や学びの中に新たなかたちで生きつづけます。
玉川学園では、これからも自然とのつながりを大切にした教育を続けていきます。