玉川大学「特色ある大学教育支援プログラム」
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特性

到達目標と3つのスキル

玉川大学の一年次教育プログラムでは、授業を担当する教員は「学生が自分自身をよく見つめ」「自分の人生をさまざまな観点から考え、決定する」にポイントをおいて、学生を指導します。これは、学問や社会活動に対して自分が「なすべきこと」と「なさなければならないこと」に気づくことによって、大学生として、また、社会人としての自覚をもつことができるとの考えからです。「いまなすべきことに気づくこと」と「大学生、社会人としての自覚をもつこと」は相互に影響しあい、学生が学問や社会活動に取り組むうえで大きな活力になるのです。

近年、大学生になってもアイデンティティ(自己)が確立されていない人たちが多くなっています。そのためにも、大学教育の早い時期に自分の人生を考える契機を与え、同時に、大学での学習や生活が高校までとは大きく異なることを知らせる必要があります。これも一年次教育の重要な目的です。

前述のように、実施にあたって参考にした一年次教育は、米国で発展したプログラムです。そのため、日米の社会や文化の違いから、その内容をそのまま導入することはできません。そこで、玉川大学では日本の現状、さらには本学の状況をふまえ、独自の一年次教育プログラムを作成し、4つの学習到達目標を設定しました。

  1. 大学生として学問の重要性を理解し、規則正しく計画的に学習する習慣を身につける
  2. 大学で学ぶうえでのアカデミック・スキルを身につける
  3. 卒業までの学習見通しと卒業後の将来設計を立てる
  4. 大人としての健全な生活習慣を身につける

さらに、これらの到達目標を達成させるために、プログラムの内容を以下のように分類しています。

アカデミックスキル ・大学への積極的な適応と同化
・学習にたいするモチベーションの向上
・大学生としての基本的な読解力・文章力・コミュニケーション能力の養成
スチューデント・スキル ・大人としての自由と責任についての学習
ソーシャル・スキル ・将来を見すえた大学4年間の学習戦略とキャリア設計の策定

独自の教科書の作成

玉川大学では「一年次セミナー101・102」を始めるにあたり、アカデミック・スキル、スチューデント・スキル、ソーシャル・スキルの内容を網羅した教科書、『大学生活ナビ』を作成しました。執筆者は、学生と接して指導する過程で悩んだり、考えたりした経験をもとに、学生に理解してほしいことをまとめています。ただし、『大学生活ナビ』には本の読み方や文章作成の方法、プレゼンテーションの方法についての記述は含まれていません。それらの内容は学年によらず重要なものであるため、独立した別冊として、2006(平成18)年の秋に出版します。なお、そのほかにも課題の指示や資料の提供にはブラックボード(Bb)を中心とする、玉川大学のeラーニング・システムLinkを活用しています。

また、『大学生活ナビ』を使って授業をすすめるため、執筆者がまとめた各章ごとの「キーワード」「学生へのメッセージ」「授業担当者へのメッセージ」「授業を進める手順」「課題・事例研究についての留意点、回答例」などを『教員用マニュアル』として担当教員に配布し、内容に偏りのないように、充実を図っています。

『大学生活ナビ』目次
序章
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章
 
大学で学ぶ
効果的に学習する
時間を管理する
ノートを取る
テストを受ける
情報を記憶する
意思決定をする
コンピュータを利用する
なぜ働くのか
  第10章
第11章
第12章
第13章
第14章
第15章
第16章
終章
  ライフデザインとキャリアデザイン
キャリアの選択と社会が求める能力の養成
社会生活とメディア
時事問題に取り組む
健康な生活を送る
インターネットと情報
ボランティア活動をする
一年次教育を終えるにあたって

学生が考え、発言する授業

玉川大学の一年次教育プログラムは科目名「一年次セミナー101」「一年次セミナー102」として開講されていますが、もっとも重要なのは授業の進め方です。それは、従来行ってきたような、教員が学生に講義をするという一方向的な授業では、本来の一年次教育の目的が達成されないからです。そこで、教育効果をあげるためには、授業を担当する教員にも、努力と新たな工夫が要求されます。

この授業では、答えが1つでないものがほとんどです。そのためにも、教室は学生たちが自由に考え、発言する場でなくてはなりません。これは、これまで教員がさまざまな授業で一般的に行なってきた手法とは明らかに異なるものです。学生は自発的に予習をし、開かれた討論のなかで自分の考えを発表する。また、友人の意見を聞き、自分の考えと比較する。そうした学習をとおして自分と他者との違いを意識し、自分とは何かがわかるようになり、アイデンティティが確立され、人間的な成長が促されていきます。

したがって、授業は学生に考えさせ、発言させることを念頭においた双方向的なものでなくてはなりません。しかし、この手法に戸惑う教員が少なくないことも事実です。教員間で授業方法に違いが生じないようにする必要があります。その対策として、玉川大学では「授業方法研究会」を定期的に開催しています。

学習記録の徹底

学生には「学習記録」というノートを配布しています。「学習記録」ノートは、学生各々が「事前に学習したこと(予習)」「当日の授業内容」「学習の成果(復習)」をそれぞれ記載できるようになっています。本来、授業を受ける際には予習と復習は必須のものですが、それらが必ずしも徹底されていないのが実情です。このことは日本の大学が現在抱えている重大な課題の1つでもあります。

そこで「一年次セミナー101・102」の授業では、予習と復習の習慣を身につけさせることを目的として、「学習記録」の記述を義務づけています。もちろん、この「学習記録」は学生だけに活用を課するものではありません。「学習記録」も成績評価の要素の1つとしていますので、担当教員は期末試験後に受講生全員の「学習記録」を回収して、内容を確認し、担当者所見を記入します。これは教員にとってもかなりの負担を強いる作業ですが、成果をわかりやすい形で評価することが学生の学習意欲を奨励することになると同時に、授業を担当する教員にとっても「教育したことの記録、学生の成長を知る記録」となります。そのことから、大学教員の教育力の向上にもつながるものと考えています。