玉川大学教育博物館 館蔵資料の紹介(デジタルアーカイブ)

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館蔵資料の紹介 1999年

玉川大学教育博物館 > 館蔵資料の紹介 > 1999年 > 筆蹟「騰騰」

筆蹟「騰騰」-

手鞠つく良寛さま -悠々歓々の日々を歌う-

良寛(1758-1831)筆
紙本墨書
131.5×36.0cm


ここに掲示した書幅は、当館所蔵の良寛の「騰騰(とうとう)」という題の作品である。

裙子(くんす)は短く褊衫(へんさん)は長し 謄謄(とうとう) 兀兀(ごつごつ)只麼(しも)に過ぐ
佰上(はくじょう)の児童 たちまち我を見  手を拍(う)ち
斉(ひと)しく唱(うた)う放毬(ほうきゅう)の歌

(自分は衣と短い袴を着て、それでまあ悠々歓々としてあせらず、ゆるやかに兀兀としてあるがままにすごしている。外に出ると路端の子供たちはすぐに自分を見付けて、手をたたき声をそろえて毯つき歌をうたいだす。)

この漢詩には、子どもたちが路上で手鞠をついているのに、たまたま出遇って、誘われるままに一緒に手鞠歌を歌って遊んだという、情景や気持ちの起伏、それに自分の服装からはじまり、自分の歩いている姿が彷彿とするような姿を見事に表現している。この手鞠つきの主題を和歌で表現したのが教科書でお馴染みの「霞たつながき春日を子供らと手鞠つきつつこの日くらしつ」という歌である。良寛はこれをさらに長歌にしている。

良寛の師匠国仙の「印可状」に「良也、愚の如く、道転(うた)た寛(ひろ)し、謄謄任運(にんうん)」と言う一句がある。良寛の呼称の出所はここからきている。良寛は生まれながら、騰謄任運であって「騰謄」は天馬空をゆくように、軽快で無邪気なこと、小さいことにくよくよしない、大らかなこころの持ち主といってよいであろう。

「全人」1999年10月号(No.616)より

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