玉川大学教育博物館 館蔵資料の紹介(デジタルアーカイブ)

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館蔵資料の紹介 2001年

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高等小学国語読本 巻一 盲人用

高等小学国語読本 巻一 盲人用

文部省『高等小學國語讀読本 巻一 盲人用』
盲人用教科書刊行曾発行
大正11年
25.5×18.3×3.5cm


現代日本において教育を受ける権利は、義務教育学齢期の者が当然に持つもので、これはたとえ心身に何らかの障碍(しょうがい)をもつ児童であっても、基本的に同じである。そこで今回は視覚障碍児教育用の教科書を取り上げてみたい。

本資料は大正11年に刊行されたもので、サイズは一般の教科書より一回り大きく、中表紙に点字で『もんぶしょー/こーとーしょーがくとくほん まきの 1/もーじんよー きょーかしょ かんこーかい』とある。筆者は点字を解すことができないため、点字50音表と見比べながら辛うじて目次部分まで読んでみた。章立ては、国定3期の高等小学校1年前期用国語教科書である『高等小學國語讀読本 巻一』の「第一課 有栖川宮威仁親王(ありすがわみやたけひとしんのう)」から、「第三十課 母の愛」にそっくり対応している。本文の対比まではできなかったが、恐らく一般児童用の教科書を丸ごと点訳したものと思われる。

本書刊行時、義務教育は尋常小学校のみで、盲学校・聾唖(ろうあ)学校は慈善社会事業の一環として運営される傾向が強く(盲・聾学校の義務化は昭和23年から)、唯一官立の東京盲学校の普通科も、10~16歳で入学する5年制の学校であった。また就学率統計によれば、一般児童は99%超であるのに対し、視聴覚障碍児は12%に留まっていたという。特殊教育の整備組織化が急速に進むのは、大正13年の盲学校及聾唖学校令施行以後のことである。

現在、かつての高等小学校1年に相当する中学校1年用国語教科書の定価は1冊736円、盲学校中学部1年用の点字版国語教科書は、33,810円と決められている。今回紹介した点字教科書の価格は不詳だが、当時の普通の国語教科書代が53銭であったのに比べ、相当高額であったと想像される。今のように義務教育教科書を無償給付する制度ができたのは昭和37年であり、本書の刊行当時は教科書代だけでもかなりの負担であったと思われる。

こうした諸事情から考えて、恐らく実際に本書を使用した高等小学校レベルの盲学校教育を受けることができたのは、対象児童のうちのごく一部に限られていたのであろう。

「全人」2001年5月号(No.635)より

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