はじめに
相模原市緑区は、東側はJR横浜線橋本駅周辺地域(商業施設、高層住宅、内陸工業地域)から西側のJR中央線相模湖、藤野駅を起点とした地域(山林、農地、湖、河川、里山などの豊かな自然環境と住環境、地域資源を活かした環境交流地域)から構成され、相模原市の約77%を占めています。特に、西側の旧・相模湖町と藤野町は神奈川県北部に位置し、山梨県桂川を源流として流れる相模川をせき止めて造られた相模湖や津久井湖より流れる相模川や、 丹沢山地を源とする道志川は旧・相模湖町内郷地区で合流しています。
河川や湖の北側は小仏峠〜高尾山に接し、南側は石老山などの丹沢山地に挟まれ、南高尾連山から続く温帯林と暖帯林に囲まれた、農耕地、クヌギやコナラの二次林、スギやヒノキの人工林が混生しています。
これらの広大な地域は、水と緑のとりなす環境が複雑で生物相をより豊かなものにしています。したがって、同地域に生息する野鳥はいわゆる山野の野鳥から、水辺の野鳥までを幅広く網羅し、山間部でありながら鳥類の生息は非常に「多様性」に富んでいます(インタビュー「生物多様性は心を潤し、文化を育む。」 玉川大学教授 田淵俊人さん|相模原市)。
これらの地域と町田市玉川学園とは野鳥の行き来が認められ、自然環境面での共通性も認められることから、本ホームページではこの地域の野鳥に関する情報も網羅することとしました。
相模原市緑区の野鳥の調査記録は、ほとんどないのが実情です。1999年1月から2025年5月までに93種の鳥類を定期的なラインセンサス、定点センサスにより記録していますので、詳細な結果は「日本野鳥の会 神奈川県支部の雑誌、BINOSに記載しましたので参照ください。
同地域に出現する野鳥の変遷は激しく、かつ流動的であり、特にカワウ、オシドリ、カラス類、イソヒヨドリの動向が明らかにされるなど、今後とも継続的な調査が必要ですので適宜、記載することとしました。
なお、本地域における野鳥の生息調査は、河川や急峻な斜面などの地理的な条件や、クマ、イノシシ、二ホンザルなどによる被害があり非常に困難です。加えて、地元の方々の私有地の山林や農耕地などに無断で立ち入ることはできません。居住地付近での調査はプライバシー保護の観点から固く禁止されていますので、特定の種の生息場所については記載しないこととしておりますことをご理解ください。
引用文献
田淵俊人,2000.神奈川県相模湖町内郷地区の野鳥.BINOS 7:51-63.
田淵俊人,2001.津久井町又野地区のカラスの集団ねぐらについて.BINOS 8:77- 81.
田淵俊人,2007.相模原市相模湖町内郷地区に生息するオシドリとカワウの関係について.BINOS 14:74-88.
田淵俊人,2012.山間地の相模湖駅(相模原市緑区)で営巣したイソヒヨドリ.BINOS 19: 25-29.
田淵俊人,2015.イソヒヨドリの内陸部での繁殖―相模湖駅(相模原市緑区)で営巣したイソヒヨドリ― BINOS 22:37−43.