玉川大学学術研究所
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 談話会詳細

2007年 3月30日(金)第24回談話会

演 者
山本愛実 (玉川大学)
演 題
報酬予測脳活動に対する知覚的曖昧性の影響
詳 細

詳細未定

演 者
松元まどか (理化学研究所)
演 題
行動適応における前頭連合野の役割
詳 細

動物は、環境が変化すると、行動を変化させることによって環境に適応する。 この行動適応に、前頭連合野がどのような役割を果たしているかを明らかにす るため、行動学習課題を行っている最中のサルの前頭連合野の内側部と外側部 から、単一神経細胞活動を記録した。この課題では、正解を示す正のフィード バック刺激をサルに教える視覚ブロックと、正負のフィードバック刺激に基づ いて正しい行動を学習する行動学習ブロックとが交互に繰り返された。行動学 習ブロックにおいては、行動結果を示すフィードバック刺激が呈示された時 に、行動価値の予測誤差を表現する神経細胞が、前頭連合野内側部に多く見ら れた。また、行動結果を確実に予想することができないとき、フィードバック 刺激が呈示されるタイミングに向かって活動を徐々に上昇させる神経細胞が、 前頭連合野内側部と外側部の両方に見られた。この活動は、先に内側部に現 れ、続いて外側部にも現れた。視覚ブロックにおいては、正のフィードバック 刺激を教えるために呈示した刺激が新奇なときに特異的に強い応答を示す神経 細胞が、前頭連合野外側部に多く見られた。これらの結果は、(1)行動結果 に基づいて行動を評価し、次の行動の調整を導くプロセスに、前頭連合野内側 部が主に寄与すること、(2)不確実な行動結果に対する能動的注意によって 行動評価を促進するプロセスに、前頭連合野内側部から外側部への情報の流れ が重要であること、そして(3)起こした行動とは無関係に生じた環境変化の 検出には、前頭連合野外側部が主に寄与すること、を示唆している。

2007年 2月20日(火)第23回談話会

演 者
相原 威 (玉川大学)
演 題
神経細胞樹状突起における情報処理の場所依存性
詳 細

記憶に関する可塑性神経回路において、長期増強(LTP)や長期抑圧(LTD)に関 する研究がなされてきた.近年では、時間タイミング依存性の可塑性(STDP; Spike-timing dependent synaptic plasticity)が報告され (Bi et al. 1998), 理論と実験の橋渡しとして注目を集めている.しかし,神経回路の構造を考慮し た可塑性誘導の検討はいまだ十分にはなされていない.
そこで本発表では、海馬ニューロンの情報処理への抑制性細胞の影響に着目し、 以下の3つの生理実験結果(及びモデルシミュレーション)を紹介する.

(1)デンドライトにおけるSTDPの場所依存性

(2)細胞近位・遠位部の時系列情報処理の違い

(3)細胞遠位部の情報処理への近位部入力の影響

そして神経回路の構造に基づく新たな統合的記憶情報処理様式の考察をおこなう.

演 者
宮地重弘 (京都大学)
演 題
狂犬病ウイルスで神経ネットワークを探る
詳 細
脳内の神経細胞は、シナプスを介して相互に連絡し、複雑な回路を構成してい る。このような多シナプス回路の全体像を明らかにすることは、従来の神経解 剖 学の手法ではきわめて困難であった。狂犬病ウイルスは、神経細胞特異的に 感染し、シナプスを介して逆行性に感染が進行する。これを神経トレーサーと して 用いれば、複数のシナプスを介する神経連絡を可視化することができる。 我々は、サルの大脳皮質一次運動野にこのウイルスを注入し、行動制御に関わ る多シ ナプス回路を解析した。まず、一次運動野上肢領域にウイルスを注入 し、様々な生存期間の後の感染の広がりを解析した。注入の2日後には、注入 部位に直接 投射する1次ニューロンが、3日後、4日後にはシナプスを越えて 2次および3次ニューロンが、大脳皮質および皮質下の様々な領域で標識され た。次に、一 次運動野の様々な体部位領域(上肢、下肢、口腔顔面、上肢近位 部、上肢遠位部)へのウイルス注入の後、4日目に現れた3次ニューロンと考 えられる標識細 胞の分布を、前頭前野、大脳基底核、小脳において解析した。 その結果、前頭前野、線条体、視床下核、小脳皮質において、体部位再現的構 成が確認された。

2007年 1月25日(木)第22回談話会

演 者
射場美智代 (玉川大学)
演 題
青斑核-ノルアドレナリンシステムとその認知機能への関与
詳 細

青斑核は脳幹第4脳室近傍,橋被蓋の吻側に両側性に位置する核であり, ノルアドレナリンを含有する脳内で最も大きな核として知られている.この核の 大きさはサルでも2-3mmと,非常に小さな神経核であるが,広範な脳領域に投射 することで,生体にさまざまな影響を及ぼすし,さらに認知的要素を含んだ様々 な課題で賦活することが明らかになってきている.我々は眼球運動課題遂行中の サル青斑核から神経細胞活動を記録し,この核が刺激に基づいた目的的な運動出 力に関与することを見つけた.また,この信号が皮質のどの領域から伝達される のかを調べるために,青斑核に逆行性トレーサーを注入したところ,青斑核は前 頭皮質のうち前頭眼窩野および前部帯状皮質から直接投射を受けていることが 判った.本談話会では,青斑核の認知機能に関する役割を生理学的及び解剖学的 に紹介するとともに,青斑核から入力を受けている背外側前頭前皮質におけるノ ルアドレナリンの役割に関しても論じたい.

演 者
平田快洋 (東京都神経科学総合研究所)
演 題
サル前頭前皮質における機能コラムとその解剖学的基盤
詳 細
霊長類の前頭前皮質は高度な認知機能を担う脳部位として盛んに研究が行われてきている。 これまでの解剖学研究によって、 前頭前皮質も第一次視覚野や側頭皮質と同様にコラム構造を持つ事が示されてきた。これら感覚性皮質ではコラム構造が機能単位である事が明らかにされてきたが、前頭前皮質では未だ不明のままであった。そこで、サル前頭前皮質スライス標本と膜電位感受性色素による光学想定法を用いて、この問題を解決する事を試みた。 皮質中間層(Lower layer IIIもしくはlayer IV)を電気刺激すると、皮質表面と白質に向かって垂直に広がる活動クラスター(コラム活動)を誘発できた。この活動は皮質中間層を刺激した時のみ誘発され、その活動は興奮性シナプス伝達によって形成されていた。コラム活動が、解剖学的コラム構造とどのような関係にあるか明らかにする為に、蛍光トレーサー(fast blue)を9野に注入することにより、皮質間結合により形成される46野のコラム構造を染め出し、光学測定法によるコラム活動との対応付けを行った. その結果, コラム構造は遠心性ニューロン群(layer II/IIIとlayer Vに分布)からなり、コラム活動内部に含まれていることが分かった。またコラム活動幅とコラム構造幅には有意差はなく、過去に報告されているマカクザル前頭前皮質のcortico-cortical columnの幅に類似していた.。これらの結果は、前頭前皮質におけるコラム構造が,ワーキングメモリのような認知機能の基礎的な入出力処理をおこなう”module/unit (機能コラム)”である可能性を示唆する。すなわち、前頭前皮質の担う高次認知機能は、複数の機能コラムのコミュニケーションによって支えられているのかもしれない。

2006年12月11日(月)第21回談話会

演 者
樋田栄揮 (玉川大学)
演 題
広視野運動認知の脳内神経機構
詳 細

眼球、首、体の運動などの自己運動によって生ずる広視野運動情報(visual flow)は、姿勢の制御、歩行や乗り物の運転など自己運動の制御および自己と周囲の空間把握のためにきわめて重要な役割を果たす。マカクザル等の霊長類では、広視野運動情報はV1,MTからMST野にいたる経路における視覚運動情報の段階的統合を経て、MST野背側部に存在する特定のvisual flowモードに選択的に反応する細胞群によって検出・分析されていると考えられている。本研究では、

(1)visual flow 認知特性およびvisual flowの長時間呈示によって引き起こされる運動残効の認知特性が、MST野細胞の神経活動とどのように対応するのか

(2)MT野からMST野へ運動情報はどのように統合されるのか

(3)広視野コヒーレント運動認知特性が順応刺激の種類にどのように依存するのか

以上の3つの問題について、ニホンザルのMST野およびMT野における神経細胞のvisual flowに対する反応特性とvisual flowに対するヒトの知覚特性を比較しながら検討した。

演 者
吉田和子 (奈良先端技術大学)
演 題
不確実環境における意思決定の神経基盤
詳 細
 実環境から得られる情報は不完全で不正確であるため、不観測状態(隠れ状態)を推定によって補うことが有効になる。 機械学習の分野では、このような環境における意思決定は部分観測マルコフ決定過程(POMDP)として定式化される。 POMDPでは、観測と行動履歴から隠れた真の状態を「信念状態」として推定し、信念状態を用いて環境のダイナミクスを同定し、予測に基づく行動選択を行う。
 推定と予測に基づく情報処理過程は、ヒトの意思決定過程としても妥当である。 我々は、POMDPを解くための主要な要素が脳前頭前野で実現されると提案し、隠れ状態の推定、すなわち信念形成に関わる脳部位を明らかにするために、 部分観測迷路課題を用いたfMRI実験を行った。
 本課題において、被験者にとって現在位置は隠れ状態であり、観測履歴から 推定する必要がある。被験者の行動・観測履歴から、脳内の推定位置とそれ に対する確信度を逐次的ベイズ法により推定したところ、確信度の強さと前部 前頭前野の活動度が相関することを明らかになった。

2006年11月 6日(月)第20回談話会

演 者
天野薫 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所) 
演 題
Temporal integratorモデルに基づく,MEG信号を用いた単純反応時間の予測
詳 細

 人間の視知覚がいつ,どのようなメカニズムによって成立するのかについては,近年数多くの研究が行われているものの,その詳細は明らかになっていない.そこで本研究では,視覚刺激に対する反応時間(Reaction time: RT)と脳磁図(magnetoencephalography: MEG)を同時計測し,Integratorモデルを用いて,脳活動の変化からRTの変動を説明することを試みた.本モデルではMEG反応を時間積分し,その値がある閾値を越えると刺激の検出がなされるものと仮定した.ランダムドットのコヒーレンス変化刺激と赤/緑グレーティング刺激を使用し,それぞれのコヒーレンシー,色コントラストを変化させた.その結果,運動刺激に誘発されるMT野の反応にIntegratorモデルを適用するとコヒーレンス変化に伴うRTの変化を非常によく説明できることが明らかになった.さらに,試行間変動,すなわち同一の運動刺激に対する検出の可否や,RTの長短をMEG反応の変化によって説明することに成功した.一方,色刺激に誘発されるMEG反応は,V1/V2の反応をIntegratorへの入力に用いるとRTの変化を完全に説明できないのに対し,V4の反応を入力に用いるとRTの変化をよく説明できた.これらの結果から,高次視覚野における応答の時間積分が一定の値を超えた時に,視覚刺激に対する検出がなされることが示唆された.
 講演の後半では,Motion induced spatial conflict(色差のみによって定義された境界の運動と輝度差によって定義された境界の運動を空間的に近い位置に配置すると,前者の境界がjitterして知覚される現象,Arnold and Johnston, 2003)によるillusory jitterの知覚とMEGの関係を調べた研究を紹介し,知覚速度の違いによって生じた空間的な位置ずれを,視覚系が脳内の振動周波数(アルファ波)に基づいて補正している可能性について考察する.

演 者
小泉昌司 (玉川大学)
演 題
サル前頭前野の不活化が選択的注意課題遂行に与える影響
詳 細
 われわれは、判断のもとになる情報を環境の中から取り出し、それ以外の情報を無視する選択的注意の能力を有している。例えば、信号機は色で判断され、ランプの位置や明るさなどそのほかの属性が意識されることは少ない。ところが、時に無視すべき情報が判断に使われる情報に干渉することもある。このような干渉を示す課題として、Stroopテスト(Stroop,1935)がよく知られている。テストでもとめられる反応はインクの色を答えることであるが、もしインクパッチの代わりに、色インクで印刷された色彩語(あか、あお等)を用いた場合、誤りは増加し、課題遂行に余分な時間を必要とすることが知られている。読字という日常的に頻度が高く自動化された行動が、色を答えることに干渉的に働き、その抑制のためのコストがStroop効果として現れると考えられている。前頭の損傷では、この効果が顕著になることから、干渉の低減に前頭が何らかの役割を果たしていることも考えられている。
 われわれは、多次元の視覚的go-nogo判断課題を訓練したニホンザルを用い、前頭前野が選択的注意による判断にかかわっていることを明らかにしてきた。刺激は色(赤、緑)のついたランダムドットで構成され、左右いずれか動くようになっている。凝視点の色によって指示された選択すべき次元(色か動き)の次元の情報にしたがってサルはgo反応またはnogo反応をする。刺激は、その試行で無視すべき次元が示している反応のタイプとの組み合わせによって、一致型と不一致型に分けることができる。色次元でも動き次元でも同じ反応(goかnogoのいずれか)を示す刺激は一致型であり、注意すべき次元によってgo-nogoが入れ変わるような刺激が不一致型である。そして、十分に訓練されたサルであっても、後者にStroop効果様の干渉コストがみられることを報告してきた。
 今回の実験では、GABAaアゴニストのmuscimolよる前頭前野の一時的な不活化がStroop様効果に与える影響を検討した。これまでの研究で色判断に関連したneuronが多く見つかっている前頭前野外腹側部へのmuscimol注入では、色注意条件においてgo不一致型でエラーの増加が見られた。動き注意条件では増加はなく、nogo刺激では、一致型・不一致型、いずれも注意条件に関わらず効果は生じなかった。
 注入効果は、特定の注意条件、刺激のタイプに限定的に生じていることから、覚醒や般的な注意、反応生起の遅延によって生じたものでなく、選択的注意過程の関与がある。効果は色注意条件においてのみ生じていることから、不活化により生じた不十分な色判断処理は属性間で処理の不均衡を増し、その結果、相対的に有意となった動き判断によって誤反応が生じたと考えることができる。これは、Stroop testで読字処理の優勢が色判断に干渉を与えていることと相同の現象であると考えることができ、Stroop効果と選択的注意の関係、前頭の関与を検討していく材料になると思われる。

2006年10月13日(金)第19回談話会

演 者
豊巻敦人(北海道大学) 
演 題
セルフ・モニタリングの神経基盤:事象関連電位研究
詳 細

私たちは日常生活において,意識的にせよ無意識的にせよ,行動の際に適切な運動が実行されたか,そして適切に環境が変化したかどうかを予測,評価している.この過程はセルフ・モニタリングの一部をなしており,これらに寄与する神経活動を反映する事象関連電位成分が近年,注目されてきている.事象関連電位は脳波の一種であり,言語,知覚,高次認知処理や運動処理に寄与する皮質活動をミリ秒レベルの高い時間分解能で捕捉することができる.
 この行動の予測と評価を反映する事象関連電位成分のうち,反応選択課題において刺激を見て正反応を計画したにも関わらず,誤反応してしまった場合,反応直後に生じる成分をError related negativity(ERN)と言う.これは実際の運動遂行によって抹消神経から戻ってくる感覚フィードバック情報と,行動遂行によって遠心性コピーという運動内容についての情報とのミスマッチを反映すると考えられている.また、行動遂行によって働きかけた環境が変化する際,期待に反する結果が生じた場合にはError feedback negativityという成分が生じる.例えば,ギャンブルゲームなどで行動遂行した後,金銭の損失などの結果が呈示された際に出現する.いずれの成分も,前部帯状皮質という情動と認知に寄与する脳部位から出現していることが知られており,期待情報と反応情報・環境からのフィードバック情報の比較照合と情動的評価処理がほぼ同時刻にこの部位で行われていると考えられている.
 私はこれまで,後者のError feedback negativityについて,被験者に呈示する結果の情動的価値や,結果の予測に対する確信を操作したり,他者の行動の結果が自分に帰属する場合での振舞いなどといった,この成分の基礎的な側面を明らかにする検討を行ってきており,今回はそうした研究を紹介したい.
 また,Error feedback negativityは多様な領域で応用できる可能性を持っている.例えば,私が行っている精神疾患患者を対象とした研究では,統合失調症患者ではこの成分の振幅が低下しており,自己の行動によってもたらされた環境の変化に対する自己関与性の低さを反映していると思われた.他方うつ病患者では振幅が増大しており,期待不一致の評価に対する情動的反応が過剰という病的な悲観的認知を反映していると思われた.このように,精神疾患の精神病理を神経科学的に裏付けられる可能性がある.また、Error feedback negativityが強化学習の報酬予測誤差信号の神経活動を示しているという報告や,乳児(6〜9ヶ月児)において文脈に反する環境変化が起こった場合に出現するという報告があり,計算論的神経科学や発達研究に応用できる可能性があり,それらについても論じたい.

演 者
加藤裕貴(玉川大学)
演 題
学習実験におけるミツバチの利用とその応用
詳 細
ミツバチは,古くから人間に利用されてきた.現在ミツバチは,養蜂における蜂蜜などの生産物利用だけでなく,記憶・学習実験のモデル生物になるなど,農業以外の面でも広く利用されている.さらに近年,セイヨウミツバチのゲノム解読が終了し,遺伝子の機能を解析する面でも,ミツバチの利用が期待されている.
ミツバチは昆虫であるため,その脳の構造は脊椎動物に比べ小型で比較的単純である.それにも関らず,複雑な行動や学習行動を示すため,ミツバチに対する興味は尽きない.今回は,ミツバチの学習実験方法である,条件刺激と無条件刺激を組み合わせた古典的条件付けによる連合学習を中心に,ミツバチがモデル生物として利用されるようになった概略について紹介したい.さらに,ミツバチの分子生物学における応用についても紹介したい.

2006年 9月 8日(金)第18回談話会

演 者
千住 淳(九州大学) 
演 題
ヒト乳児における参照的視線の認知
詳 細
他者の視線方向の知覚は、対人コミュニケーションの発達におい て重要な役割を果たしている。これまでの実験心理学的、認知神経科学 的検討により、生後まもない新生児において既に、アイコンタクトに対 する選好や他者の視線方向の追従が見られることが明らかになってい る。演者は、乳児が視線の「意味」あるいは「機能」をどのように認知 しているかについて検討し、生後9ヶ月の乳児が視線の参照的な意味、 あるいは他者が「何かを見ている」状態を弁別し、参照的な視線に対す る選好を見せることを明らかにした。このような参照的視線に対する選 好は、共同注意の成立や社会的学習などに重要な機能を果たしていると 考えられる。また、本セミナーでは事象関連電位法によって記録された 参照的視線の認知に関連する脳活動についても報告し、その神経科学的 な基盤についても議論する。

演 者
大森隆司(玉川大学)
演 題
他者理解という認知過程の計算論的な理解の試み
詳 細
情報処理の立場からは他者理解とは,自分以外の行動決定主体の 行動決定に関わるが,直接には観測できない内部状態を,その対象に 関する知識をもとに推定する,という計算過程と表現できよう. ヒトはそのような推定を日常的に,動物,他者といった事象に対して 行なっており,それが我々の他者理解や円滑な協調行動の基盤と なっているであろうことは想像に難くない.
この講演では,簡単な協調ゲームのシミュレーションを題材に,そのような 他者の状態推定とそれに応じた行動決定過程の計算モデルを紹介し, さらにはその上位にあって円滑なインタラクションを実現するべく自己の 行動決定方略を制御するメタ行動決定システムについて考察する.

2006年 7月25日(火)第17回談話会

演 者
原 健二(東京学芸大学) 
演 題
社会適応力を支える脳基盤の理解にむけて 
〜クロオオアリを用いた発生発達神経科学的アプローチ〜
詳 細

動物が社会生活を営むには、仲間の認識能力は不可欠である。社会性昆虫のアリで は、巣ごとに異なり且つ巣仲間に共通する体表の炭化水素分子群の混合パターン(コ ロニーラベル)を巣仲間の識別に利用するため、羽化したばかりのアリが社会に適応 するためには、さまざまな刺激の中からコロニーラベルを認知し、自らの体表炭化水 素成分をそれに合わせることが絶対要件となる。我々は、クロオオアリで顕著に観察 できる、羽化後まもない時期に遭遇した体表ラベルを「巣仲間」として刷り込むプロ グラム学習に注目し、その能力の脳基盤を明らかにしたいと考えている。今回のセミ ナーでは、これまでの我々の研究から明らかになりつつあるクロオオアリの脳の特徴 についてお話ししたい。

演 者
高橋英之(北海道大学)
演 題
他者の存在が自己の行動決定をメタに調整する
詳 細
近年、人間や動物が自己や他者の心をどのように理解しているのかを調べる研究(心の理論研究)が盛んである。その結果、心を理解する為に重要な認知過程や、それらを支える脳部位についての理解が進んできた。しかしこれらの研究の多くは、独立したモジュールとして心を理解する機能を捉える傾向が強く、エラー認知や行動決定など、心の理解だけに特化しない他の認知過程の研究との関係が不明瞭であった。そこで本研究では、じゃんけんのような単純な対戦ゲームを題材として用い、自分の対戦相手を「心を持った人間」だと思っている場合と「心を持たないコンピュータ」だと思っている場合で、被験者のゲームにおける行動決定がどのように変化するのか、共通の指標にもとづいて分析した。その結果、実際には同じコンピュータの対戦相手とゲームを行っているのにも関わらず、対戦相手が「人間」か「コンピュータ」かの主観によって、一貫した行動決定の違いが被験者に生じることを示した。この結果は、心を持った他者が存在するかしないかで、行動決定にかかわるパラメータのようなものを調整するメカニズムが我々の脳内に存在することを示唆する。また他者の心を理解するのが苦手であると考えられている高機能自閉症の方でも同様な課題を用いた調査を現在行っており、それらの予備的な結果から示唆されることについても述べる。

2006年 6月15日(木)第16回談話会

演 者
山極 隆(玉川大学)
演 題
科学技術発展のためのすそ野の拡大
詳 細
未定

2006年 5月25日(木)第15回談話会

演 者
Andreas Galka(統計数理研究所)
演 題
State space modelling of time series in the neurosciences
詳 細

In contemporary research in the neurosciences extensive spatiotemporal data sets are recorded, reflecting the electromagnetical, metabolical or chemical processes in neural assemblies, from the level of single cells to the entire brain. Such data sets pose new challenges for quantitative analysis. We will discuss how state-space modelling can be applied to this situation, with particular emphasis on two aspects, namely dynamical source estimation and independent component analysis.

演 者
Xiaochuan Pan(玉川大学)
演 題
Prefrontal neurons predict reward based on learned associations
詳 細
To adapt the changeable environment, it is important for animal not only to behave based on previously acquired experiences but also to accommodate novel situations by generating appropriate prediction from learned knowledge. Some psychological experiments suggest that animal has such kind of ability. The purpose of this study is to examine the neuronal mechanism involved in predicting reward based on the integration of learned associations. Two monkeys (Macaca fuscata) were trained to perform a sequential association task with asymmetric reward. In this task, the first cue A1 (or A2) was presented briefly. After delay the second cues, B1 and B2, were shown and the monkey had to make a saccadic eye movement to B1 (or B2). Then the third cues, C1 and C2, were displayed and the monkey had to select C1 (or C2). The two correct association chains were: A1->B1->C1 and A2->B2->C2. The asymmetric reward rule was introduced block by block randomly: in one block, A1-chain was rewarded, while A2-chain was not; in the other block, vice versa. At the beginning of each block, reward instruction trials were inserted to instruct which group would be rewarded in the following sequence task by pairing C (C1 or C2) with the reward. Monkeys were also trained with two different orders of stimuli (B->C->A and C->A->B). Behavioral results indicate that monkeys could predict reward by first cues in the sequence task. Out of 337 neurons from the lateral PFC, 30% showed reward-related activity in the first cue period. There are two types of reward-related cells: reward type (R type) and stimulus-reward type (SR type). R type cells predicted reward independent on the visual stimuli, while SR type cells predicted reward only when a preferred stimulus was presented as a first cue. Interestingly, the preference was not based on visual properties of stimulus, but on stimulus-group (e.g., if a neuron prefers A1, it also prefers B1 and C1 rather than B2 and C2). In the third experiment, some new stimuli were learned to be associated with B1 and B2. The monkeys and R type cells also could predict reward based on new stimuli in the first presentation. These results suggest the prefrontal neurons involves in predicting reward by the integration of learned associations.

2006年 4月28日(木)第14回談話会

演 者
山崎 良彦(山形大学)
演 題
ニューロン付随性グリアの神経活動に対する修飾効果
詳 細
グリア細胞は,活動電位を発生しないという事実により,電気的に静かな細胞で あるとみなされてきた.しかし,近年では,多くのイオンチャネルや神経伝達物 質受容体を発現していることが知られており,ニューロンの活動に対し積極的に 関与していると考えられてきている.そこで,ニューロン回路網という枠を超え た「ニューロン−グリア回路網」という視点で脳機能を理解することが必要と なってきている.我々は,グリア細胞によるニューロン活動への直接的な修飾効 果を実験的に調べるために,ニューロンの細胞体に付随しているグリア細胞 perineuronal glial cell: PG)に着目した.両者の相互作用を検討する第一ス テップとして,PGの電気生理学的・形態学的特徴について調べた.近赤外微分干 渉顕微鏡による画像を観察しながら,PGの細胞体よりホールセル記録を行い,PG の静止膜電位と入力抵抗を記録した.さらに生理学的実験終了後,注入したバイ オサイチンに対する染色を行った.また,PGとニューロンとから同時にホールセル 記録を行うことにより,ニューロンで記録される興奮性シナプス後電流と発火パタ ーンに対するPGの修飾効果について検討した.

演 者
倉重宏樹(玉川大学)
演 題
カルシウム濃度の線形和を閾値としたBCM型シナプス可塑性モデル
詳 細

これまで,シナプス強度変化はカルシウム濃度の絶対量にもとづいて決定される ものとしてモデル化されてきたが,しかしそのようなモデル化では,スパイクタ イミング依存性可塑性(STDP)のもつ特性を再現できないことが指摘されてきてい る.そこで,我々はまずSTDPの時間的特性を分析することで,これらの欠点が生 じないようなモデルを提案した.このモデルをNEURONシミュレータを用いて検討 した結果,シナプス強度変化のタイミング依存性や初期値依存性をうまく再現で きていることがわかった.また初期値依存性が生じる原因についての検討も行っ た.今回の発表ではこれらの結果についての報告とともに,現在進めている,よ り生理条件に近いプロトコルを用いてのモデルの検討についての報告も行いたい.


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