小学部英語授業見学4

春学期に英語コミュニケーションを受講している学生達が、6月1日に玉川学園小学部の英語授業を見学させていただきました。小学部の英語授業については、前回の報告(報告1報告2報告3)を参考にしてください。ここでは、今回見学した授業の様子についてだけ報告します。日本の小学校における英語教育の歴史は浅いですが、玉川の英語教育は創立から行われているので75年の歴史があります。小学部では、音声の補助として文字を扱っています。つまり、話せることを定着させるためにvisual supportとして位置づけています。それは、高学年になると音だけよりも、文字がある方が英語の定着がいいからです。現在、小学部には外国人の先生が4人いらっしゃり、「楽しい英語」「しゃべれる英語」「発信できる英語」を目指しているそうです。ただし、英語だけを教えるのではなく、小学校は特に人間教育があっての英語教育として位置付けているので、しつけが必要な時にはきちんとしつけもします。また、英語教育を国際理解の一環として捉えています。

 

1時間目 1年生

1年生から週2回25分の英語授業があります。1時間目は、1年ゆり組で、授業者は、小川先生、メアリ−先生、スカイ先生の3人です。1クラスを半分にし、英語教室とゆり組の教室に分かれて授業をしました。スカイ先生はいつもは幼稚部にいらっしゃるので、今日は小学生にはじめて英語を教える日でもありました。幼稚部では、英語を教えるのではなく英語で遊ぶ活動などをスカイ先生が担当されていて、遊びの一部になっています。

挨拶の歌の後、今日の調子を子供達に聞き、これまでの表現に変化をつけていきました。"How are you?" の後に、"I'm fine. ", "I'm hungry.", "I'm happy."など、すでに使える表現を確認した後、絵を見せながら、"I'm feeling happy (hungry, sleepy, cold, thirsty, hot, etc.)"と新しい表現を教えます。子供達は、元気に動作もまじえて真似をしていきます。必要な時には、メアリ−先生も一緒に参加し、スカイ先生をサポートします。

自分の気分や調子の表現を学んだ後は、数と身近な道具の名前の学習です。こちらは、列ごとにグループをつくり、どこのグループが一番ポイントが高くなるか競争するゲームです。黒板にはった色々な道具の絵を、先生が"What's this?"と質問します。子供は、"It's a pencil case." "it's an eraser (Crayon, paper, stapler, etc.)."と答えていき、あっているとポイントが入ります。子供達がわからない答のものには、先生が "Ah! ping pong, ping pong!"と手をあげる合図をし、チームに自分の名前チームを作ってポイントを入れました。上手に子供達のゲームを中段させずに、道具の名前を身につけさせていきました。

 

2時間目 2年生

2時間目は、2年さつき組で、授業者は、堀尾先生とメアリ−先生です。こちらも1クラスを半分にし、英語クラスと美術室に分かれて授業をしました。

堀江先生のクラスでは、挨拶の歌の後、子供達の好きな色や動物など色々な質問をします。そして、今日の学習単元に入ります。"Do you like 〜?"に対して"Yes, I do./No, I don't."で答えること、スポーツの名前などを使って自分の好きなスポーツについて答えることを中心に進められましいた。次に、子供達が大好きなドラエモン、アンパンマン、ビッグバード、ちび丸子ちゃんなどのキャラクターを使って、子供達が楽しめるアクティビティをします。全員が必ず発言できるように、工夫されています。1列づつ答えさせたり、グループにする時には、子供にわかりやすいように一番端の子供の名前をよび、順に"○○、○○、○○、and ○○"といった具合に誰に答えさせようとしているのかを明確にしていました。授業は、英語の歌で始まり、英語の歌で終ります。

メアリ−先生のクラスの後半では、数を中心に学習していました(前半は堀江先生クラスの見学をしていたので、ここでは報告できません)。シートに数の分だけ、アイスクリームやカップケーキの絵を描いていきます。そして、みんなが描けたら、"Are you sleepy"のマザーグースのリズムに合わせて、

"I like icecream (ここはcup cake, sosagesなどに変化), I like icecream, Yes, I do! Yes, I do! Yum Yum ice cream, Yum Yum ice cream. Have some, too. Have some, too."

と、歌います。時間が来て、美術室から帰ってきた子供達が入り口で待っているのに気がつかれると、"Let's sing it together."と誘い、教室と廊下で大合唱になりました。そして、授業の終りの歌を歌って終りました。

 

質疑応答

小学校の英語と中学校の英語の違いは?

小学校では、数値では測れない態度、興味・関心を伸ばすことを大切に考えています。玉川は、1人1人を生かす教育を徹底しています。評価として、子供達1人1人とのインタビューもしているので、中学校でするようなテストはしません。中学校は、読み書きが中心になっていますが、小学校は「話す」ことに力を入れてます。もちろん、最近の中高の英語もコミュニケ−ション能力を大切にしようとはしてますが、まだまだ日本人の英語によるコミュニケーション能力は高いとは言えません。「発信できる英語」として、話すことは大切です。

 

自分の文化や言葉に対してもまだあいまいな小学生に英語を教える目的は何ですか?

充実した英語教育は、国語の学習や他の学習の妨げになることはないと思います。また、日本語や日本文化が中心になっている日本の環境で、英語が子供達の日本語獲得などに問題をきたすことはないと思います。逆に、英語を学ぶことによって、日本語の表現にも敏感になり、日本語の理解が深まります。日本語の素晴らしい人、創立者の小原國芳先生や夏目漱石のような人達は、日本語の表現や文化への理解も深いですが、英語もおできになりました。英語もできたから海外の様々な知識を取り入れ、様々な人々との交流が深まり、日本文化への理解が広まったとも言えます。英語は、あくまでも国際理解の中で行っています。

 

子供が苦手意識を持たないようにどんな工夫をしてますか?

子供は、苦手意識は持ってません。話すこと(コミュニケーションすること)は誰にでもできることなので、苦手意識を持つことはありません。教師が、「なんでも受け入れる」という寛いcapacity を持っていれば、子供は苦手意識を持つことはありません。

 

困ったことはありますか?

子供で困ったことはありません。小学校の先生は、PerformerやEntertainerになることも必要ですので、自分がうまくPerformerになれないことで、悩むことはありますが、子供で困ったりすることはありません。ただ、私達が抱いている英語観を他の教科の先生方になかなか理解していただけないことで困ったりすることはありますが...。えてして、みなさん小学校で英語をしていると言うと、「英検○級を目指すんですか?」とか、「単語は何語くらい目指すんですか?」と質問されるんです。

 

外国人の先生方との連携

子供達は外国人の先生の授業の時には「わからないことがあるかもしれない!」という思いもあって少し緊張してます。それは、「わからなくてもやってみよう!」「チャレンジしよう!」という気持ちにもつながるので、大切な緊張感でもあります。外国人の先生も子供が理解していない様子を見せた時には、日本人の先生に「○○ちゃん/くんは、あまり理解してなさそうだったから、今度確認しておいて。」と日本人の先生と外国人の先生がコミュニケーションすることで、お互いの授業の長所を生かしながら、問題を解決しています。

 

楽しい授業をするために心掛けていることは?

与えた教材がつまらなさそうだったら、すぐにやめる。国語や算数は、難しいことにも挑戦させることも大切ですが、英語は子供が楽しめるように手持ちのカード(ゲームやアクティヴィティ)をたくさん持っていることがポイントです。同じ1つのことを教えるのに、1つの方法でしか教えられないのでは困ります。例えば、数をつかったゲームをいくつか用意し、1つの方法がうまく行かない時には別の方法で行います。ただし、「楽しいだけじゃダメ!」と子供達はわかっているので、楽しいだけで終らない中味のある授業を考えなくてはいけません。

日本人の先生の授業では、子供達に日本語で説明した方がいい時には日本語で説明しています。教師は、とかくしゃべりすぎてしまうので、自分で説明する時と、子供達に考えさせる時、待つ時のメリハリをつけるように心掛けてます。  

 

Connection

色々なアクティビティや学習が、後になって「あ、繋がっていたんだ!」と子供が感じられるように工夫します。1年生は、挨拶、色、数、日常的な内容が中心ですが、それらの学習1つ1つが繋がっていることを言葉で教師が説明するのではなく、子供達から「前に○○したけど、同じだね」と繋がりを発見できるようにします。

 

教師の心得

教師の心得として、子供に嫌味を言わないようにしています。子供が忘れ物をして、「先生、忘れてしまいました。」と言ってきた所で、子供はすでに忘れたことを反省しています。「前にも忘れたでしょ!」「前は、こうだった」と過去のことまで持ち出して追い詰めないようにしています。

小学部についての詳しい内容は、小学部のホームページも参考に見て下さい。