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みょうげつ
明月
Myougetsu
肥後系 | 【英数】六英 【花色】純白色 【開花時期】6月中〜下旬2025年は6月15日開花(花蕾が見えてから約14日目で開花) |
分類 | : | 肥後系の「古花」です。花被片が大きく垂れる、垂れ咲きの六英花です。 |
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花被片 | : | 花被片数が6枚の六英花で、花被片の基部が花茎部に向かって大きく曲がるので、お椀のように「深い」構造になり、上から見ると花柱枝の基部まで見えます。このような形質を、花菖蒲を観賞する場合には、「深咲き」と呼んでいますが、「明月」はこのような「深いお椀状構造」になるのが、顕著な品種でこれを敢えて「大深咲き」とも呼んでいます。 花被片は先端部と肩の部分には、大きな皺が発達します。花色は純白色で、アイは花茎部(基部)は緑色、先端部にいくにつれて緑色がかった黄色となります。 |
花柱枝 | : | 大きく発達して軸方向に直立します。幅広く、先端部で裂開して軸方向に直立するようにしてずい弁が発達します。ずい弁はさじ状で、やや内巻きになり平滑ですが、稀に細かい鋸歯状構造が見られることもあります。色は花被片と同様に純白色です。 |
備考 | : | 戦前に世戸東次郎氏によって育成された肥後系の古花で、草丈は50cm程度です。 本品種のように六英花の場合、開花は外花被片に相当する部分から垂れ下がり始め、次第に内花被片に相当する部分まで伸長して垂れ下がります。したがって、開花は始まった際には、潅水を怠らないことが重要です。 本品種の特徴は、花被片が純白で、大きな「深咲き」、アイの基部が緑色であること、花柱枝の大きく直立して、三方向に「人」の文字を連想できることなどから判別できます。「芯」と呼んで鑑賞価値が高い、気高いとされています。 花被片は円形で、肩の部分に皺が発達するのは、内巻きであることと関係しています。また、花容が深いお椀状になるのは、花茎部から花被片が伸長する部分の長さと、肩の部分の物理的な硬さによると考えられます。 アイの部分の緑色は、クロロフィル(花茎や葉に含まれる光合成色素)がそのまま残って花器官を形成した証拠です。本学の研究により、花被片の形成・発達は向軸面側の表皮細胞が黄緑色の茎的 伸長細胞から、赤紫色素を含む花被片的な円錐状細胞へと移行することで生じることが示されています。栽培種に見られる「爪咲き」や 「玉咲き」の品種の花器官は、一連の花被片発達の「途中段階の個体を選抜」して育成されたものと考えらます。 なお、明月と記載して「みょうげつ」と読みます。他にも名月と書いて(めいげつ)と読む肥後系品種は4品種がありいずれも育成者や花容が異なりますので、混同しないように十分な注意が必要です。 |
参考文献 | : |
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