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    更新日 2026年6月19日

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花菖蒲図鑑

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用語解説

「園芸学」では植物分類学でいう分類とは異なり、利用する側から見た分類が用いられ、これを「園芸的分類」と学問上呼ばれています。例えば、一・二年草、宿根草、球根類、花木、観葉植物と言った例があります。新たな植物が発見された場合にのみ、既知の記載されている種と異なることを論文として発表(記載)し、標本を作成します。
栽培植物では、人が育成し選抜した個体には品種名が付けられますが、「1995年の国際栽培植物命名規約」によることに決まっています。
その際に、花き類では、種間雑種や種内交雑によって成立してきた一連の品種群や、特定の共有できる特性を持つ品種群については系統とし、英名ではGroupと表記する決まりになっています(『園芸学』金浜耕基編、2009,文永堂出版,p36)。
花菖蒲もこの定義に沿ったものとして、1995年の国際栽培植物規約を遵守して表記することになり、系統(英名はGroup)として分類します。花菖蒲には以下の系統(Group)があります。

系統について

江戸系(古花)
(Edo group)
江戸時代に江戸(現在の東京)で育成、栽培されてきた品種群。主に花菖蒲園で観賞するために育成されてきたので群集美を観賞できるように個々の花は上から見やすいように、平咲きの品種が多いのが特徴です。
伊勢系(古花)
(Ise group)
江戸時代に伊勢松坂地方(現在の三重県)で育成され発達した品種群。大きな外花被片が垂れる特徴があります。
肥後系(古花)
(Higo group)
江戸時代に肥後地方(現在の熊本県)で育成され発達した品種群。花が大きく豪華な形状を示すのが特徴です。
新花(花容) 戦後に育成された品種群で、各地に離散した系・品種を一か所に集めて、それぞれを交雑して育成した品種です。この品種が、何系で、何という品種が由来で育成されたのか不明なので、外観上、花の形状で見て、上記のような特徴を示す花容で示しました。よって、分類上の色分けは、見た目の「花容」で示しましたので、由来の明確な「古花」と区別するために、「新花」とし、次に「花容」で示しました。
長井(例外)
(Nagai group)
山形県長井市の長井あやめ公園で発見された品種群。野生のノハナショウブに似た、シンプルな形状を持つ品種が多いのが特徴です。
大船(例外)
(Ohuna group)
大正時代に、現在の神奈川県立フラワーセンター大船植物園で育成された品種群。江戸系を主体にして海外への輸出を目的に宮澤博士によって育成されたといわれています。江戸系に類似した形状ですが、形状や花色に本系統に特有の形質を持つ品種があること、歴史的な背景から本サイトでは大船(例外)として扱うこととしました。
大船(例外)品種一覧
アメリカ(例外)
(American group)
昭和初期に江戸系品種を元にして、育成された品種群。アメリカ人によって育成されたので、大きく色も艶やかで非常に目立つ品種が多いのが特徴です。日本伝統のハナショウブを海外の人たちはどのような視点で見ているのかを考える上で重要である、という認識の元、特に本サイトで扱うことにしました。
野生(例外) 野生のノハナショウブの中から発見され、観賞価値がある、あるいは研究用のモデル植物とみなされて利用価値が生じる系統を扱います。

花の各器官について

花全体の形態

花菖蒲では、「花容−かよう−」と呼んでいます。
   
受け咲き   平咲き   垂れ咲き
   
玉咲き   爪咲き   台咲き

各器官の名称の解説

花被/花被片
(perianth / tepals)
ハナショウブでは、花弁に相当する部分を花被(かひ)と呼びます(がく片と花弁の区別がないため)。外側に位置する3枚の大きな花被を外花被(outer perianth)、内側に位置する3枚の小さい花被を内花被(inner perianth)といいます。これら6枚の花被は、それぞれ1枚ずつを花被片(tepal)と呼びます。
ハナショウブのようにがく片と花弁の区別が明瞭でない花は、植物形態学では同花被花とされ、花被片(tepal)として扱います。
内花被は、一般的には「鉾(ほこ)」「耳弁」「立弁」と呼ばれますが、本図鑑では植物形態学に基づき内花被と表記します。なお、六英花の場合は、外花被と内花被の区別なく花被と総称します。ここでいう「英(えい)」は、花被片(tepal)をまとめて呼ぶ際に用いられる名称です。
英
(ei)
ハナショウブでは、花被(かひ)は外花被と内花被の6枚から構成されます。これら6枚の1枚ずつは花被片(tepal)と呼ばれます。「英(えい)」は、この花被片を総称して呼ぶ際に用いられる名称です。外花被が大きく内花被が小さい花型を三英、内花被が発達して外花被とほぼ同じ大きさになる花型を六英といいます。
花柱枝
(かちゅうし)
(style arm)
雌しべの花柱が大きく発達し、3つに分岐して形成される器官です。ハナショウブでは花被片と並んでよく目立ち、色や形は品種固有の特徴として品種判別にも用いられます。
一般には「芯(しん)」と呼ばれますが、本図鑑では植物形態学に基づき花柱枝と表記します。

花柱枝は基本的に3枚ですが、品種によっては先端が分岐して複雑な形態を示し、4枚以上に見える場合があります。これは花柱枝そのものの裂開・分岐による形態変異であり、器官数が増えているわけではありません。
ずい弁
(crest)
花柱枝の先端が二裂し、その裂片の縁に形成される薄い裂片状の構造を指します。大きさ・形・反り・鋸歯(きょし)の有無・色などは品種固有の特徴で、花柱枝とともに品種判別に重要です。なお、シャガの “crest(クレスト)” は外花被片の隆起であり、ハナショウブのずい弁とは起源が異なります。
樋弁(といべん)
(toi ben)
ずい弁の側縁が軸方向に起き上がり、浅い溝状の形を示すものを指します。
くも手
(kumode)
ずい弁の縁部に細かい切れ込みが生じ、鋸歯状の裂片として見える形態を指します。
アイ
(eye, pollen guide)
外花被片の基部にある黄色い部分は、花粉位置を示す花粉ガイド(pollen guide)です。ハナショウブは蜜を分泌しないため蜜標(nectar guide)ではありません。
訪花するマルハナバチは蜜を探すような動作を示しながら外花被片の基部まで潜り込み、後ずさりする際に背部へ花粉が付着します。実際には蜜ではなく花粉を採集しています。
(図を参照:外花被片の基部に位置し、黄色い楕円形の部分)。
ハロー
(halo)
外花被片の基部にある黄色いアイの周囲に生じる、花被色が濃く見える縁取り部分を指します。色彩の濃淡によるもので、特別な器官名ではありません。
縮緬状構造
(ちりめんじょう)
(crape structure)
花被の表面に生じる細かいしわ状の形態を指します。伊勢系品種で多く見られます。
脈(筋)
(floral vein,rib)
外花被片の基部のアイから放射状に広がる線状の構造を指します。葉における葉脈に相当する維管束です。花被片にも葉と同様に維管束(いかんそく)があり、その走行が脈として見えます。

花被の花色


単色
主に1つの色で花被片が構成されている場合を言います。
 
二色花
外花被片と内花被片の色が異なる場合を言います。


絞り
基調となる花色に、他の色が刷毛ではいたようにまだら状に入るものを言います。
 

砂子
砂のような、ごく細かい斑点模様で花色が形成される場合を言います。


覆輪

外花被、内花被、および花柱枝の縁部に、基調色とは異なる色が入って縁取りのように見えるものを言います。
 

糸覆輪
覆輪の幅が非常に細かく、糸状のものを「糸覆輪」と言います。


脈入り
花被片(白色の地など薄い色)に濃いすじが入るものを言います。
 

白すじ
濃い地の色(紫など)に白色のすじが入るものを言います。


刷毛目ぼかし(はけめ)

刷毛で履いたようにすじが入りますが、砂子のように淡く散りばめたように見えるものを言います。
   

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