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    更新日 2025年5月19日

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花菖蒲図鑑

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さくらがり

桜狩

Sakuragari

伊勢系 【花容】垂れ咲き 【英数】三英 【花色】薄い桃色 中〜大輪 【開花時期】6月初〜中旬
上段は、2019年6月2日撮影、下段は2022年6月5日撮影

分類 : 「伊勢古花」で、垂れ咲きの三英花です。
外花被 : 形状は円形で、淡い桃色で周縁部にははっきりとはしませんが、白色の覆輪が入ります(よく見てみるとわかります)。花径は20〜25cm。全体的に花被片はおだやかに垂れて、表面の全体に非常に細かい皺が入ります。このような、縮れたような構造を「縮緬状構造」と呼んでいます。特に、伊勢系の花菖蒲にはこのような花の特徴を持つ品種が多く見られます。開花が進むにつれて、花色の桃色は白色へと変化します。
3枚の外花被片で構成されている3英花ですが、それぞれの花被片の垂れ方が異なる場合が多く、良く垂れている部分とそうでない部分が混在します。したがって、花容全体を遠くから見ると左右が対照的に見えないことが多いので、花全体を表現するのには立ち位置を変えて、写真撮影を行います。
なお、花菖蒲の写真撮影は、花の形に加えて、花色を実物に近づけることも非常に難しいです。一般的な写真撮影では、「撮影する被写体には光を当てるようにすることは常識」と言われていますが、伊勢系品種のように、花色が淡い朱鷺色で、花被表面に「縮緬状構造」が見られる場合は、光を当てて撮影すると色がとんでしまって白色に見えます。
やや木陰に置いて、左右が成型となるような立ち位置で撮影する比較的左右が成型となり、花色の朱鷺色と縮緬状構造が見えるようになります。
このように、1つの品種の花容の特徴を1枚で表現するには非常にむずかしい品種の一例です。ところで、この品種の花色を以前は野鳥の名称、トキ(朱鷺、あるいは鴇)の体色に似ているので、朱鷺色(トキ色)と称した時期もあったようですが、現在、わが国ではトキは絶滅したため(佐渡地方には、中国から輸入したトキを増殖して放鳥しています)、このホームページでは敢えて淡い桃色という表現を使っています。
9×8cmでやや大型。皺が非常に多く、肩がやや持ち上がった「いかり肩」状の花容をしています。
内花被 : 楕円形で、やや幅広いさじ状で、中央がへこんでいます。花色は淡い桃色をしています。斜めに立ち上がり(最終的には寝ることもある)、周縁部には波打ったようなフリルがあります。
花柱枝 : 全体的に太く、淡い黄色みを帯びた白色で、周縁部は淡い桃色をしています。先端部のずい弁は淡い桃色で2裂に分かれ、爪状です。やや立ち上がって先端部はやや内側に巻いています。
備考 : 1907年以前(明治〜大正時代の初期)に育成されたといわれており、育成者は不明です。伊勢系の品種群は、今の三重県松坂地方で育成されました(参照→「花の品種改良の日本史」)。この品種はその中でも歴史ある品種(伊勢古花)として知られています。草丈と花の着生位置がほぼ同じ高さです(草丈は60cm程度)。
薄い桃色で、「肩の部分が張る、いかり型」、垂れ咲きの品種です。
文献 :
  1. 冨野耕治.1967.花菖蒲.泰文館,東京.190.
  2. 中村泰基・田淵俊人・平松渚.2008.日本伝統の園芸植物,ハナショウブの特性に 関する研究 2.伊勢系ハナショウブの外花 被片に特徴的な「縮緬状構造」の組 織学的構造に関する研究.園芸学研究.7(2):577.
  3. 中村泰基・田淵俊人・平松渚.2009.日本伝統の園芸植物、ハナショウブの特性  に関する研究(第4報)伊勢系ハナショウブの外花被片の「しわ」(縮緬状構造) は、花被の向軸、背軸面の細胞形態の違いと伸長のギャップによって生じる. 園芸学研究.8(2):579.
  4. Komine,A.,Kobayashi,T. and T.Tabuchi. 2013. Histological structure of the ‘Crepe-like’structure of the outer perianth in the Ise type cultivar in the Japanese irises. International Symposium on Diversity. Abstract.
  5. 田淵俊人.2016.伊勢ハナショウブの成立.柴田道夫監修『花の品種改良の日本史』、悠書館、東京.250−251.

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