第69回
論理の迷路

ことばのマジックである。

例えば、事故現場のそばにいる者が何も物音に気づかなかったと言えば、それは何も無かったことを物語っている。そのように論理ができあがっている。そこに落とし穴がある。

余念を交えないで、何も求めずに、ただひたすら「現地・現物・現場」で確かめることである。

人は、現場を目にしても、そこに見えている以上のことは想像できない。

現場で働く人は、ヘルメット越しに見えるものの先は見通せず、後方にいる管理職には、紙上の情報しかないとあっては、現場で働く人が繰り広げる現場の実情は見当がつかない。どちらも、自分が直接的に責任を負っている範囲を超える部分に関しては、まったくなにも見えていない。

2014年10月16日 小野道照教授